『地面師たち』(新庄耕)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/06
『地面師たち』(新庄耕), 作家別(さ行), 新庄耕, 書評(さ行)
『地面師たち』新庄 耕 集英社文庫 2022年2月14日第2刷

そこに土地があるかぎり、奴らは必ず現れる - 。
ある事件で妻子を亡くした拓海は、大物地面師・ハリソン山中のもとで不動産詐欺を行っていた。次に狙うのは市場価格100億円という前代未聞の物件。一方、定年間近の刑事・辰は、彼らを追ううちにハリソンが拓海の過去に関わっていたことを知る。一か八かの詐欺取引、難航する捜査。双方の思惑が交錯した時、衝撃的な結末が明らかに - 。圧倒的なリアリティーで描く、新時代のクライムノベル。(集英社文庫)
あっという間に読み終えました。題材の面白さ。スリリングな展開に、圧倒的リアリティー。ページを繰る手が止まりません。手に汗握る場面の連続に、息もできない切迫感に。(奴の) 得体の知れない不気味さに。
(以下はTVドラマ演出家であり映画監督でもある大根仁氏の解説からの抜粋です)
小説を一気に読み終えたのは久しぶりのことだった。無論、最初は自分が知っている “積水ハウス地面師詐欺事件” と照らし合わせながら読み進めたが、すぐに新庄氏が紡ぐ “実際の事件を元にしたフィクション” の世界に飲み込まれていった。
導入は 「地面師詐欺とはなんぞや? 」 を読者にわかりやすく具体的に説明するパートから始まり、拓海という実際の地面師グループには存在しなかったであろうキャラクターを主人公として浮き上がらせ、徐々に主犯格・ハリソン山中を中心に地面師グループメンバーのキャラクターを紹介してゆく集団犯罪モノのお手本のような序盤構成。
クライムノベルには欠かせぬ “チェイサー(追う者)” として老刑事・辰の存在を匂わせながらも、拓海の過去を描くことでヒューマンドラマのボトム部分を構築し、更には拓海が地面師として一人前になってゆく過程を歪んだ成長物語として見せる。
*
特筆すべきは主犯格・ハリソン山中のキャラクター造形だ。元暴力団員という最低限のプロフィールだけは漂わせているが、インテリジェンスとマゾヒズムを共存させ、この世のどこにも所属せず、リーガルとイリーガルの概念すら感じさせない、それでいて犯罪集団のリーダーたりえるカリスマ性を持つハリソンは、これまでフィクションの世界で登場することのなかった、全く新しいヒール像と言っても過言ではないだろう。
個人的には、この物語を転がす両輪は拓海だが、エンジンそのものはハリソン山中と捉えた。これはまったくの邪推だが、新庄氏にとって主人公・拓海という存在は、ハリソン同様に “使い捨て“ であり、既にハリソンを中心とした新たな物語を構想しているのではないだろうか? 無論、それはエピローグを読めば誰もが想像できることだが、私も含めて本書を読み終えた読者諸氏も、ハリソンの更なる、魔力溢れる悪行を望んでいるのではないだろうか?
※初めて読んだのが 『狭小邸宅』 で、次に読んだのが 『ニューカルマ』 でした。そこから随分時間が空きましたが、新庄耕という作家を忘れていたわけではありません。今回は文庫の新刊ですが、久しぶりに名前を見たような。そんな気がして手に取りました。
[積水ハウス地面師詐欺事件] 2017年、東京・五反田の廃旅館 「海喜館」 の土地を積水ハウスが購入した後に詐欺と判明し、55億5千万円という巨額の被害に遭ったとされる事件。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆新庄 耕
1983年京都府京都市生まれ。
慶応義塾大学環境情報学部卒業。
作品 「狭小邸宅」「カトク 過重労働撲滅特別対策班」「サーラレーオ」「ニューカルマ」等
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