『光のとこにいてね』(一穂ミチ)_書評という名の読書感想文
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『光のとこにいてね』(一穂ミチ), 一穂ミチ, 作家別(あ行), 書評(は行)
『光のとこにいてね』一穂 ミチ 文春文庫 2025年9月10日 第1刷
第30回島清恋愛文学賞受賞 キノベス第2位 (2023年) 本屋大賞第3位 (2023年)

切ないほど美しく、激しい愛の物語
うらぶれた団地の片隅で出会った小学2年生の結珠 (ゆず) と果遠 (かのん)。正反対の境遇に育ちながら、同じ孤独を抱える二人は強く惹かれ合うも、幸せな時間は唐突に終わりを迎える。8年後、名門女子校で思わぬ再会を果たした二人は - 。人がひとを想う気持ちを最高純度で描く、本屋大賞3位、島清恋愛文学賞受賞の傑作長編。解説・村山由佳 (文春文庫)
二人の主人公共に思ったことは、こんな女性が近くにいたら、世の男性はどんな言葉をかけるのか、かけられるのか、ということでした。この物語はほぼ100% 「女性」 のためのもので、悲しいかな、男性は端から出る幕がありません。だからといって見守るだけではなおさら形無しで、そこのところ男性は心して読むように。どう寄り添うかが肝要です。
物語は、まだ幼い二人の少女たちの出会いから始まる。年は同じだが、何しろ対照的な二人だ。
思いこむと一直線でたびたび無茶をする、野生児のような果遠。
大人びた冷静さゆえに本心を行動に移せない、優等生の結珠。
正反対に見えるけれども、それぞれが母親との関係に苦しみ、本音を押し殺して生きているという一点では共通している。生まれ育った環境の違いからして、本来ならば出会うはずのなかった二人が、ある日運命的に出会ってしまった - そのとたん、物語そのものが光を帯び始める。週に一度だけ会える短い時間が、子ども時代に特有のまばゆい光に彩られてゆく。(解説より)
出会った瞬間二人はそれぞれに、相手が自分にとってこの先離れ難い存在になるであろうことを予感します。「予感」 は時を置かず 「確信」 に変わり、その後別れと再会を繰り返す中で、なお一層強いものになります。何が二人をそうさせたのか? 二人はそれを言葉で上手く説明することができません。
神は細部に宿る、というのはほんとうだ。ディテールへの目の配り方こそ、作家の個性や実力が如実に表れてしまう。もう少し言うならば、細部をどれくらい書き込むか以上に、どれくらい書かずにおくかは重要で、我慢と勇気の要ることだ。読者にこの部分をぜひわかってほしい、登場人物のことを作者と同じくらい深く理解して感情移入してほしい、そう願えば願うほど、つい 〈説明〉 で行間を埋めすぎ、結果、物語の翼が地上に縛りつけられてしまうといったことが起こりうる。
そのあたりの匙加減が、この著者は何とも絶妙なのだ。
思えば文芸第一作 『スモールワールズ』 の頃から、否、それより前に別ジャンルで精力的に作品発表していた頃からずっと、一穂ミチという作家は描写の人だった。(同上解説より/村山由佳)
※女性同士の友情というには二人のあまりに切迫した生き方に、ある種 「鬼気迫る」 ものがあります。どうにかこうにか生きながらえて、二人は 「今ここに」 いるのですが、それは思うほどには不幸なことではありません。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆一穂 ミチ
1978年大阪府生まれ。
関西大学卒業。
作品 「雪よ林檎の香のごとく」「イエスかノーか半分か」「光のとこにいてね」「パラソルでパラシュート」「うたかたモザイク」「砂嵐に星屑」「スモールワールズ」「ツミデミック」他多数
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