『たゆたえども沈まず』(原田マハ)_書評という名の読書感想文

『たゆたえども沈まず』原田 マハ 幻冬舎文庫 2024年2月10日 16版発行

天才画家ゴッホと、日本人画商・林忠正。二人の出会いが 世界を変える一枚を生んだ。哀切溢れるゴッホの友情を描き切るアート小説。

19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが世界を変える一枚を生んだ。読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。(幻冬舎文庫)

世間は今、夏休み。「夏休み」 で思い出すのは、盛りだくさんの 「宿題」。中で最も手こずったのが、「読書感想文」 でした。そもそも、何を読めばいいかがわかりません。教科書以外、家には一冊の本もなく、周りに教えてくれる人もいませんでした。どうしてやったのか、今はすっかり忘れてしまいましたが、どうせ “やっつけ仕事“ だったのだと思います。怒られはしなかったものの、もちろん、褒められもしませんでした。

読書感想文の “ノルマ“ は、今もあるのでしょうか。あれば、ぜひともこんな本を読んでほしいと思います。フィクションですが、フィクションだからこそ感動し、胸が熱くなります。とりわけ、もがくゴッホを支え続けた人たちの献身を思うと、ゴッホが遺した作品がより輝いて見えることでしょう。

フィンセント・ファン・ゴッホは、世界的に有名な 「ひまわり」 や 「アルルの女」 を描いた、ポスト印象派を代表する画家。彼はオランダ生まれですが、作品の多くをフランスで描きました。大胆な色使いのカンバスからは、ほとばしる感情が痛いほど伝わってくるようです。37歳の若さで亡くなりますが、その人生は本当に壮絶でした。

今回、ご紹介する一冊は、そんな彼が駆け抜けた人生を、彼を支えた人たちの息づかいと共に描いた 『たゆたえども沈まず』 (幻冬舎)。著者は、原田マハさんです。(以下略)

ж

今作の舞台は1886年、「ジャポニスム」 旋風の吹き荒れるパリ。栄華を極めるこの街で、フランス語を流暢に操り、浮世絵を売る一人の日本人美術商がいました。その名は、林忠正。彼のもとを、東京の開成学校時代の後輩・加納重吉が訪ね、林の助手として働き始めます。

ちょうどその頃、売れない画家のゴッホは、パリにいる画商の弟・テオのもとに身を寄せます。兄ゴッホの画才を信じ、支え続けるテオ。ある日、兄弟の前に忠正たちが現れるところから、ゴッホの人生の歯車が大きく動き出します。(webサイト 「好書好日」 より)

※正直に言います。この本を読みたいと思ったきっかけは、7月13日(土) 放送のTV朝日 「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」 をたまたま観たことでした。その回は 「葛飾北斎」 の特集だったのですが、海外で (特にフランスで)浮世絵を売りまくり、一時は 「国賊」 とまで言われた画商」 として、林忠正が紹介されました。

サンドウィッチマンの二人は、林忠正という人物について何も知りません。私も、そうでした。すかさず伊達さんが愛菜ちゃんに (あなたはどうですかというふうに) 振ったところ、愛菜ちゃんは 「たまたま以前読んだ本の中に出てきて」 知っていると、答えたのでした。その本というのがこの 『たゆたえども沈まず』 だったのです。

おそらく彼女が読んだのは、中学生の頃ではないかと。その博識ぶりに、サンドウィッチマンの二人は言うに及ばず、観ていた多くの人が驚いたことでしょう。遅ればせではありますが、これは是非にも読まねばと思いました。おかげで、胸に迫る傑作を一つ知ることができました。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆原田 マハ

1962年東京都小平市生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。

作品 「カフーを待ちわびて」「楽園のカンヴァス」「ジヴェルニーの食卓」「あなたは、誰かの大切な人」「さいはての彼女」「まぐだら屋のマリア」「サロメ」他多数

関連記事

『つまらない住宅地のすべての家』(津村記久子)_書評という名の読書感想文

『つまらない住宅地のすべての家』津村 記久子 双葉文庫 2024年4月13日 第1刷発行 朝

記事を読む

『フォルトゥナの瞳』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文

『フォルトゥナの瞳』百田 尚樹 新潮文庫 2015年12月1日発行 幼い頃に家族を火事で失い天涯孤

記事を読む

『翼』(白石一文)_書評という名の読書感想文

『翼』白石 一文 鉄筆文庫 2014年7月31日初版 親友の恋人である、ほとんど初対面の男から結婚

記事を読む

『東京放浪』(小野寺史宜)_書評という名の読書感想文

『東京放浪』小野寺 史宜 ポプラ文庫 2016年8月5日第一刷 「一週間限定」 の "放浪の旅"

記事を読む

『ドラママチ』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『ドラママチ』角田 光代 文春文庫 2009年6月10日第一刷 〈高円寺〉、〈荻窪〉、〈吉祥

記事を読む

『奴隷商人サラサ/生き人形が見た夢』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『奴隷商人サラサ/生き人形が見た夢』大石 圭 光文社文庫 2019年2月20日初版

記事を読む

『三千円の使いかた』(原田ひ香)_書評という名の読書感想文

『三千円の使いかた』原田 ひ香 中公文庫 2021年8月25日初版 知識が深まり、

記事を読む

『旅する練習』(乗代雄介)_書評という名の読書感想文

『旅する練習』乗代 雄介 講談社文庫 2024年1月16日 第1刷発行 歩く、書く、蹴る -

記事を読む

『逃亡刑事』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『逃亡刑事』中山 七里 PHP文芸文庫 2020年7月2日第1刷 単独で麻薬密売ル

記事を読む

『月と蟹』(道尾秀介)_書評という名の読書感想文

『月と蟹』道尾 秀介 文春文庫 2013年7月10日第一刷 海辺の町、小学生の慎一と春也はヤド

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『羆嵐』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『羆嵐』吉村 昭 新潮文庫 2026年12月20日 62刷発行

『妊娠カレンダー』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『妊娠カレンダー』小川 洋子 文春文庫 2020年12月20日 第2

『カフェーの帰り道』(嶋津輝)_書評という名の読書感想文

『カフェーの帰り道』嶋津 輝 東京創元社 2026年1月23日 4版

『きっと君は泣く』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『きっと君は泣く』山本 文緒 角川文庫 2026年1月25日 改版初

『彼女たちが隠したかったこと』(一木けい)_書評という名の読書感想文

『彼女たちが隠したかったこと』一木 けい 角川文庫 2026年1月2

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑