『べっぴんぢごく』(岩井志麻子)_書評という名の読書感想文
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『べっぴんぢごく』(岩井志麻子), 作家別(あ行), 岩井志麻子, 書評(は行)
『べっぴんぢごく』岩井 志麻子 角川ホラー文庫 2025年7月25日 初版発行
岩井志麻子版 『百年の孤独』 とも言うべき傑作。『ぼっけえ、きょうてえ』 の著者が描く暗黒無惨年代記

岡山の北の果て、呪われた家系に生まれる七代の女。美醜、貧困、怨念 - 途切れぬ因果が地獄を映し出す。
時は明治、岡山の北の果て。飢えと寒さの許に生き育った少女シヲは村一番の分限者である竹井家に流れ着く。養女となり過去を捨て絶世の美女に育ったシヲは、自らの子孫の凄絶な人生を見守り続けることになるが・・・・・・・。美女と醜女が交互に生まれる、呪われた家系の七代の女たち。途絶えぬ因果は、竹井家の女を地獄の運命へと絡めとっていく。彼女たちの目に映し出される、怨念と惨劇の数々とは。「第十三章 シヲ百三十六歳」 限定収録。(角川ホラー文庫)
解説に、「本書が描いているのは、美醜が人びとにもたらす幸福と不幸、悦楽と絶望である」 とあります。乞食の娘だったシヲが、村一番の分限者の跡取り (養女) となったのは、飛び抜けてシヲが美形だったからです。
但し、自分がそれほど美形であることに、シヲ自身はさほど自覚がありません。周りが騒ぐのでそうなんだろう思う程度で、それを武器に何かを企んだり誰かにおもねるようなことはありません。怖いのは、シヲにはある特殊な能力があり、後に生まれる娘たちにもその能力が受け継がれていくことでした。
物語の幕開けは明治三十年代。岡山県北部の村に、乞食の親子が流れ着く。物心ついた頃から母親と放浪生活を続けていた娘のシヲには、人には見えないものが見える不思議な力があった。シヲは母の周囲に現れる人影が、死んだ父親の霊であることに気づいていた - 。
出世作 『ぼっけえ、きょうてえ』 同様、作者は貧しい者の暮らしを、目をそらすことなく描き出す。子供たちに石を投げつけられながらの放浪生活、「乞食柱」 「乞食隠れ」 と呼ばれる場所での物乞い、母親はシヲのすぐそばで男と交わり、やがてある男に片足を切り落とされて殺される。事件が起こった頃、シヲは腹を壊して神社の床下で、糞尿を垂れ流して倒れていた。
こうした悲惨な現実を描く時、作者の筆にはいつも浮ついたところがない。やや扇情的ではあるのだろうが、批判的でも露悪的でもない。現実とはそういうものだ、という突き放したスタンスで、持たざる者の暮らしを描写する。(略)
母親の死後、シヲは村一番の分限者・竹井家に下働きとして引き取られる。ところが家の娘が不慮の死を遂げ、代わりにシヲが養女として育てられることになる。垢を落として着飾ったシヲは、人びとが目をみはるほど美しかった。そこから竹井シヲとしての新たな人生が始まる。
本書は七歳から百四歳までのシヲの人生を、連作形式で描いていく壮大なクロニクルである (今回の新装版では令和の竹井家を描いた書き下ろし 「第十三章 シヲ百三十六歳」 が追加された)。竹井家の養女となったシヲは、岡山の女学校を卒業した後、岡山の旅館の三男坊と結婚、やがて娘のふみ枝を生む。以来、竹井家では女ばかりが生まれ、しかも美女と醜女が交互に生まれるようになる。
父親似で牛蛙とあだ名されたふみ枝、東京で歌手や女優をしていた小夜子、不憫な姿で生まれてきた冬子、美貌が仇で身を持ち崩した未央子、竹井家の歴史を自分の代で終わらせようと考える亜矢。ある者は驕慢に、またある者は人目を避けるように生きた女たちと、その因果に絡め取られ、さまざまな役割を演じることになる男たち。それぞれが描く深い業が重なり、甘美な 「ぢごく」 の景色を紡いでいく。(解説より)
※生まれてくる子供の中で、特に 「冬子」 は衝撃でした。冬子は、ほとんど人の体を成していません。形容しがたいそのあり様はあまりに怖ろしく、あまりにも不憫でした。ところが、そんな冬子にも子が出来ます。そしてその子は、(予想の通り) 稀に見る美貌の娘に育つのでした。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆岩井 志麻子
1964年岡山県和気郡和気町生まれ。
岡山県立和気閑谷高等学校商業科卒業。
作品 「ぼっけえ、きょうてい」「「チャイ・コイ」「夜啼きの森」「でえれぇ、やっちもねえ」「自由戀愛」「現代百物語」シリーズ 「岡山女」 他多数
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