『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)_書評という名の読書感想文
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『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬), 作家別(あ行), 書評(た行), 逢坂冬馬
『同志少女よ、敵を撃て』逢坂 冬馬 ハヤカワ文庫 2025年8月15日 10刷
第9回 高校生直木賞 & 2022年 本屋大賞受賞

「イリーナ・・・・・・・」
彼女は師の名前を呼んでいた。
すべての思いを込めて。再び敵に意識を集中させる。
あの日撃てなかった母の、殺された村人の、ソ連人民と女性の怒りを弾丸に込めろ。
窓の上下を防弾鋼板で覆った二階の銃眼から、見知らぬ女性狙撃兵を仕留めたイェーガーは、そこに先ほどまで拷問されていたセラフィマが駆け込んだのを見て驚愕した。
今だ! 待ちに待った、今がその時だ。 同志少女よ、敵を撃て
モスクワ郊外の農村に住んでいた、主人公の若き女性セラフィマは、野生動物の食害に悩む村を救う若き射撃手でもあった。そんな小さな村にドイツ軍が押し寄せ、村人は皆、そして母も殺される。謎めいた凄腕の狙撃兵によって。セラフィマもまた殺されようとした瞬間、急襲したソ連軍によって生命を救われ、その中の一人、女性兵士で元射撃兵でもあるイリーナに目をかけられ、設立されたばかりの狙撃訓練学校に入る。もちろん復讐のために。当時、ソ連は女性を積極的に兵士として登用していた。セラフィマは自ら望んでその 「駒」 になることを選んだのだ。
訓練学校でセラフィマは得難い友と出会う。射撃大会優勝者のシャルロッタ、カザフ人猟師だったアヤ、ウクライナ出身のコサック・オリガ。ほぼ同い年の彼女たちの他に年長のヤーナ。彼女たちはみんな、一言でいえない秘密と経歴を持っていた。過酷な訓練を経て、彼女たちがついに実戦に配備される日が来た。それは、死者が双方で二〇〇万を超えた史上最大の市街戦、第二次世界大戦最大の激戦がドイツ軍とソ連軍の間で行われていたスターリングラードだった。そこで、セラフィマたちが見たものは何だったのか。そして、若い女性狙撃兵たちはどうなったのか。
以上が 『同志少女』 の 「あらすじ」 だ。これならおもしろいに決まっている。血湧き肉躍るエンタテインメントとしても、複雑精妙な群像劇としても、衝撃を感じざるを得ないリアルな戦争小説としても、どんなふうに、どんな読者が読んでも、この小説は裏切ることはないだろう。歴史上実在した人間と事実として残されている詳細な記録の上に、魅力的な想像上のキャラクターを散りばめたこの作品を読んでいる間、読者は、時が経つのを忘れるはずだ。ばらばらだった物語の糸が繋がってゆく有り様に目を見張るはずだ。物語の終わり近く、この小説のタイトルの秘密が明かされた時、あるいは、物語のいちばん最後、すべてが終わった後に、作品そのものが、想像を超えたやり方で、現実の世界に、見事に、完全に、接続された時、息をすることを忘れるかもしれない。ぼくがそうだったように。(高橋源一郎/解説より)
※評判なのは知っていました。書店へ行く度 「買おうか買うまいか」 迷いに迷い、ようやく読んでみようと。
こんな時いつも思うのですが、先入観で本を選んではいけません。今は、読んでよかったと心から思っています。そして今も世界のあちらこちらに、セラフィマに似た少女がきっといるのだろうと。祖国の名のもとに、理不尽を生きるしかない多くの女性たちが。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆逢坂 冬馬
1985年埼玉県生まれ。
明治学院大学国際学部国際学科卒業。本書で第11回アガサ・クリスティー賞受賞。他に 「歌われなかった海賊へ」「ブレイクショットの軌跡」など
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