『舎人の部屋』(花村萬月)_書評という名の読書感想文

『舎人の部屋』花村 萬月 双葉文庫 2018年1月14日第一刷


舎人の部屋 (双葉文庫)

過食嘔吐を繰り返す小説家志望の自称モデル・宮島弥生を描いた前作『浄夜』の登場人物だった舎人憲人。果たして彼は弥生の想念のなかから生みだされた妄想なのか、それとも・・・・・・・。虚構と現実を行き来する舎人の”M”を描いた哲学的小説。(双葉文庫)

物語は、筋金入りのマゾヒストである舎人憲人(とねり・のりと)が、一人称で語る小説という形で進行する。インテリかつ有能でありながら、あえて倉庫番として働く傍ら、妻の冴子とセックスをし、さらには他の女も抱いている舎人。彼の言動は、すべて虐められ、蔑まれることに収斂していく。自分を車で撥ねた女と寝るのも、会社の女を盗ったと逆恨みする社員にリンチされるのも、自分のマゾヒズムを満足させるためなのだ。しかし、中盤になって、いきなり『浄夜』の主人公の女性作家・宮島弥生が現れると、物語のトーンが微妙に変化。そして終盤に至り、読者は予想外の着地点へと、引きずり込まれてしまうのであった。(ブックレビュー:小説推理2015年1月号より抜粋)

簾頭の四十男で何の取り柄も無さそうにみえる舎人憲人は、実は生粋のマゾヒストである。無類のセックス好きで、妻の冴子とは週に3、4回。それだけに止まっているのは他に相手があるからだ、というのだから凄い。

変態で絶倫、には違いないのですが、舎人の言い分はこうです。

私の性交は、射精が目的ではありません。

- もちろんささやかな御褒美として射精を許してもらえると、それはそれで嬉しいのですが。でも、それよりもなによりも爆ぜそうで爆ぜそうで、爆ぜるぎりぎりまで追い込まれたあげく、射精に対する認可を与えられず、そのまま放置されたりしたら、私、悲しくて、切なくて、股間に痼(しこ)った苛立ちを抱きしめて - 嬉しがるでしょう。しかもその嬉しさに対してなんらかのかたちで強烈な抑圧を押しつけられたりしたら、もういけません。私、その抑圧を与えてくれた方の奴隷になります。

私、あなたに虐めてほしい。私、あなたに虐められたい。  私は、虐められたいのです。

もうこれ、変態濃度100%の小説です。

これ以上は書きません。なぜなら、書けば書くほど舎人憲人の思う壺なのですから。読むと理由がわかるのですが、できれば読まずにおくことをおすすめします。読めば読むほど舎人憲人を、なお助長させることになります。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


舎人の部屋 (双葉文庫)

◆花村 萬月
1955年東京都生まれ。
サレジオ中学卒業後、寝袋ひとつで全国を放浪、さまざまな職業を経験する。

作品 「ゴッド・ブレイス物語」「笑う山崎」「ゲルマニウムの夜」「ブルース」「ぢん・ぢん・ぢん」「二進法の犬」「王国記」「百万遍 青の時代」「沖縄を撃つ!」「武蔵」他多数

関連記事

『月の砂漠をさばさばと』(北村薫)_書評という名の読書感想文

『月の砂漠をさばさばと』北村 薫 新潮文庫 2002年7月1日発行 月の砂漠をさばさばと (新潮文

記事を読む

『太陽の坐る場所』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『太陽の坐る場所』辻村 深月 文春文庫 2011年6月10日第一刷 太陽の坐る場所 (文春文庫

記事を読む

『まぐだら屋のマリア』(原田マハ)_書評という名の読書感想文

『まぐだら屋のマリア』原田 マハ 幻冬舎文庫 2014年2月10日初版 まぐだら屋のマリア (

記事を読む

『流』(東山彰良)_書評という名の読書感想文

『流』東山 彰良 講談社 2015年5月12日第一刷 流   第153回

記事を読む

『哀原』(古井由吉)_書評という名の読書感想文

『哀原』古井 由吉 文芸春秋 1977年11月25日第一刷 哀原 (1977年) 原っぱ

記事を読む

『雪が降る』(藤原伊織)_書評という名の読書感想文

『雪が降る』藤原 伊織 角川文庫 2021年12月25日初版 雪が降る (角川文庫)

記事を読む

『夏の騎士』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文

『夏の騎士』百田 尚樹 新潮社 2019年7月20日発行 夏の騎士 勇気 - それは人

記事を読む

『誰もボクを見ていない/なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』(山寺香)_書評という名の読書感想文

『誰もボクを見ていない/なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』山寺 香 ポプラ文庫 2020年

記事を読む

『ミート・ザ・ビート』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『ミート・ザ・ビート』羽田 圭介 文春文庫 2015年9月10日第一刷 ミート・ザ・ビート (

記事を読む

『太陽は気を失う』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『太陽は気を失う』乙川 優三郎 文芸春秋 2015年7月5日第一刷 太陽は気を失う &n

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『中尉』(古処誠二)_書評という名の読書感想文

『中尉』古処 誠二 角川文庫 2017年7月25日初版発行

『犬のかたちをしているもの』(高瀬隼子)_書評という名の読書感想文

『犬のかたちをしているもの』高瀬 隼子 集英社文庫 2022年9月1

『殺人者』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『殺人者』望月 諒子 新潮文庫 2022年11月1日発行

『緑の我が家』(小野不由美)_書評という名の読書感想文

『緑の我が家』小野 不由美 角川文庫 2022年10月25日初版発行

『あなたの涙は蜜の味|イヤミス傑作選』(宮部みゆき 辻村深月他)_書評という名の読書感想文

『あなたの涙は蜜の味|イヤミス傑作選』宮部みゆき 辻村深月他 PHP

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑