『二十歳の原点』(高野悦子)_書評という名の読書感想文

『二十歳の原点』高野 悦子 新潮文庫 1979年5月25日発行


二十歳の原点 (新潮文庫)

独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけていった一女子大生の愛と死のノート。学園紛争の嵐の中で、自己を確立しようと格闘しながらも、理想を砕かれ、愛に破れ、予期せぬうちにキャンパスの孤独者となり、自ら生命を絶っていった痛切な魂の証言。明るさとニヒリズムが交錯した混沌状態の中にあふれる清冽な詩精神が、読む者の胸を打たずにはおかない。(新潮文庫)

当時の私はいかばかりか不純な動機でこの本を読もうとしていました。読むとすぐに自分が大馬鹿者だったと分かり、さもしいばかりの(自分)の心根が心底嫌になったものです。同じ大学の、同じ学生であるにもかかわらず、これほどまで内実は違っているのかと。

高野悦子は、私の8年先輩にあたります。彼女が在籍していたのは文学部。私はといえば、二年続けてその文学部に落ち、仕方なく別の学部に入学していました。本は生協で見つけたのだと思います。表紙の次にある彼女の写真に、思わず見惚れたのをよく覚えています。

日記は、高野が20歳の誕生日を迎えた1969年1月2日から始まっている。学生運動、失恋、人間関係での葛藤や挫折が記され、自殺2日前の6月22日まで続いている。日記の最後に、「旅に出よう」で始まる詩が書かれている。運命を暗示するかのような象徴的な内容、高い完成度などから、作品中でも特に印象に残る静謐な一篇とされている。(Wikipediaより抜粋)

ここでは「旅に出よう」という詩に至る少し前、この本以前の日記『二十歳の原点序章』にある詩を紹介したいと思います。

話の中心でありたい
行動の中心でありたい
みんなよりも優れた存在でありたい
みんなからほめそやされたい
私は十九歳!

気が小さくて臆病ものの私は
ジンセイケイケンが
タリナカッタのかしら
卑屈になって優越感を感じ
皮肉でもって相手を見下し
にせのほほえみをなげかけ
〈偽善者め! 〉
世界の中心にいるんだという
十九歳のムジャキサをもち・・・・

自信があり、プライドが高く、しかしそれらの根差す確かなものの存在にはまだ行き着かないような、十九歳なら一度は思うありふれた詩ではありますが、当の本人からすれば、抜き差しならない、これ以上ない心の叫びなのだと思います。

気持ちだけが先走りして気負ってばかりいたあの頃が、きっとあなたにもあったはずです。私にだってありました。今の高校生や大学生諸君も、同じ思いでキリキリ舞いしているのだと思います。

3年生になった1969年6月24日未明、彼女は京都・二条駅-花園駅間の山陰本線で上り貨物列車に飛び込み亡くなります。

学園紛争で授業もままならない中、それでも彼女は「今一番すべきことは何かについてを常に考える」「考えるべきことは沢山ある」と記します。クラブのことについて。大学生活の設計について。将来の職業について。そして、読書! 読書! ・・・・

美貌の自分にあっては、「顔」のつくりは「私」にあっているだろうが、あまりに整いすぎていて「完全そうにみえる」といい、メガネをかけようと決心します。

次の日の日記には一転、小田実の言うこんな言葉が綴られます。-「矛盾に対さない限り、結局のところ矛盾はなくなることはないし、未熟のままで終わるしかない」

独りであること。未熟であること。その上生来の愛くるしい容姿さえ呪い、彼女は、彼女が思う彼女にしかない場所へ行こうと躍起になり、息さえ出来ずにいたのだと思います。

学園紛争について彼女は何も知らないし、知らされてもいません。教えてくれる友人さえいないのですが、彼女は確かに歴史の一時点にいると認識し、だからこそ自己をみつめることが絶対に必要だと考えます。様々な問題に対し、きっと自分はほんろうされるだろうと思うのですが、しかし、ただほんろうされてばかりではいけないとも思います。

それから先、彼女に何があり、なぜ死にたいと思うようになったのか。事に及ぶに至る彼女の胸中を、葛藤をこそ知ってほしいと思います。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


二十歳の原点 (新潮文庫)

 

◆高野 悦子
1949年栃木県那須郡西那須野町生まれ。
立命館大学文学部史学科に入学する。1969年、20歳6ヶ月で鉄道自殺を遂げる。

作品 中学時代から書き続けていた日記が、死後に「二十歳の原点」「二十歳の原点序章」「二十歳の原点ノート」として出版され、いずれもベストセラーになった。

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Comment

  1. かしこ より:

    shingo様
    はじめまして。読書好きの20半ばの男です。
    この記事を読んで、高野悦子さんが残された3冊を僕も読みました。彼女が書き残した胸のうちは僕の心に強く響き、今後も忘れられない読書体験になると思います。素晴らしい本を知るきっかけを与えてくださり、ありがとうございます。

    このブログは少し前から拝見していて、「枯れ蔵」「蹴りたい背中」「私が殺した少女」などもここの記事がきっかけで読みました。いずれも面白い作品でした。
    以前からお礼を言わねばと思いながも先延ばしにしてしまい、失礼ではありますが、ここで重ねてお礼を申し上げます。

    • shingo より:

      コメントありがとうございます。若い方に読んでいただき、あのようなメッセージがいただけたこと、大変うれしく思います。拙い感想文ばかりですが、また覗いてやってください。まずは、お礼まで。

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