『墓標なき街』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『墓標なき街』逢坂 剛 集英社文庫 2018年2月25日初版


墓標なき街 (集英社文庫)

知る人ぞ知る、あの <百舌シリーズ> 13年ぶりの新作長編。私にとって、高村薫の合田雄一郎シリーズ、大沢在昌の新宿鮫シリーズと並ぶ、大、大、大好きなハードサスペンスの久々の登場です。

順を追って紹介しましょう。シリーズ第一作 『百舌の叫ぶ夜』 が刊行されたのが1986年。実に32年前のことです。これは衝撃でした。何度読み返したことでしょう。何度読んでも面白い。わかっているのに、つい固唾を呑んでしまいます。
・・・・・・・
能登半島の岬で記憶喪失の男が発見されます。一方、東京新宿では爆弾テロ事件が発生。犯人を追う公安警察の倉木と美希は、やがてある人物にたどり着きます。(第一作 『百舌の叫ぶ夜』)

かつて能登の断崖に消えた <百舌> が、北朝鮮の工作員として再び日本に潜入した - 。病院で起きた大量殺人と突然の捜査打ち切りに政治的陰謀を感じた公安の倉木は、独自の捜査を始めます。(第二作 『幻の翼』)

警察官が関与する事件が続発。警察庁特別監察官・倉木は、警察内部で巨大な陰謀が進んでいると踏み、捜査を開始します。その結果 <ペガサス> という謎の人物に行き当たります。(第三作 『砕かれた鍵』)

後頭部を千枚通しで一突き - そして現場には鳥の羽根が一枚。あの暗殺者・百舌が帰還したのか? 甦ったのだろうか・・・・・・・ (第四作 『よみがえる百舌』)

警察内で多くの異性関係を結ぶ女刑事・かりほ。彼女が体を使って実行しようと目論む陰謀を、探偵・大杉と特別監察官・美希が追います。(第五作 『鵟の巣』)

百舌 プロの殺し屋。百舌とは、殺戮に対する本能を持ち、速贄(はやにえ)の儀式に酔う魔性の鳥。頸筋に千枚通しを突き立て、一気に息の根を止める - 串刺しに似たその殺戮方法に、人はその人物を <百舌> と呼びます。

倉木尚武 公安刑事時代(シリーズの初期)に妻が爆死。その後、特別監察官となります。百舌と並び、シリーズ前半の主役。寡黙で一途。孤高の刑事。

明星美希 後に、倉木美希。公安刑事、外事二課を経て、夫・倉木の死後に特別監察官となります。強気で美人。

大杉良太 私立探偵。元警視庁捜査一課刑事。「稜徳会病院事件」(第二作 『幻の翼』)の後に退職。倉木の死以降は、主に大杉と美希が主役を担います。

※参考:テレビドラマ 『MOZU』 では、倉木を西島秀俊、美希を真木よう子、大杉を香川照之が演じています。

そして、本作。

私立探偵・大杉良太は、新聞社で編集委員をしている残間龍之輔から、違法な武器輸出をしている商社について告発してきた男の尾行を依頼され、それを引き受ける。同じ頃、残間はかつての上司で現在はオピニオン誌「ザ・マン」編集長の田丸に呼び出され、百舌と呼ばれた殺し屋に関わる事件を雑誌に書いてほしいと頼まれた。
大杉と残間が両事案の調査を続けていたある日、警察庁特別監察官の倉木美希が自宅に向かう途中に襲われる。すぐさま大杉が駆けつけ軽傷で済んだが、美希のコートから百舌の羽根が出てくる。武器輸出に関わる商社の告発と、トップシークレットである過去の百舌事件。関係ないと思われた二つの事象が交差する時、巨悪の存在が明らかに・・・・・・・。驚愕と興奮のシリーズ第七作! (集英社)

となります。(実質は六作目。「第七作」 とあるのは、シリーズ前の一冊、前日譚としての 『裏切りの日々』 を含んでのことです)

もしも <百舌シリーズ> を読んだことがないという方なら、ぜひにも第一作を読んでみてください。読むと、(この本の) 面白さが何倍にもなります。そしておそらくは、第二作、第三作を読みたくて仕方なくなります。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


墓標なき街 (集英社文庫)

◆逢坂 剛
1943年東京都文京区生まれ。
中央大学法学部法律学科卒業。

作品 「カディスの赤い星」「屠殺者よグラナダに死ね」「百舌シリーズ」「岡坂伸策シリーズ」「御茶ノ水警察署シリーズ」「イベリアシリーズ」「禿鷹シリーズ」他多数

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