『きみの町で』(重松清)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2021/08/17
『きみの町で』(重松清), 作家別(さ行), 書評(か行), 重松清
『きみの町で』重松 清 新潮文庫 2019年7月1日発行
あの町と、この町、あの時と、いまは、つながっている。
初めての人生の 「なぜ? 」 と出会ったとき - きみなら、どうする?
一緒に立ち止まって考え、並んで歩いてゆく、8つの小さな物語。失ったもの、忘れないこと、生きること。この世界を、ずんずん歩いてゆくために。
累計20万部、生きることをまっすぐに考える絵本 「こども哲学」 から生まれた物語と、新作 「あの町で」 を収録。
*
「小さな小さなお話を、ミロコマチコさんの絵の助けを借りて、一冊の本に編んでもらいました。すごくうれしいです。小さなお話でも、深い問いかけを込めたつもりです。きみの町と、きみに思いを寄せてほしい遠くの町のお話とを組み合わせました。ゆっくり読んでいただければ、と願っています。- 重松清」(アマゾン内容紹介より)
小学校の高学年に向けた読み聞かせには最適の本ではないかと。ネットで見ると、そんなふうに書いてあります。
では、”大のおとな” には不要かというと、そういうことではないような。子どもに対する思いとはまた別に、おとなであるあなたにも読んでもらいたいと。読んでおくべき本だと、そう言われている気がします。
もしも、真っ向からこんなことを問いかけられたとしたら、おとなになった今のあなたは何と答えるのでしょう? 少し真面目になって考えてみてください。
あなたは、”生きる” ということに真剣に向き合えていますか? 何もかもが曖昧になり、惰性で生きてはいませんか? ことの善悪に関し、おとななあなたは、十分な見識があると胸を張って言え、それを態度で示していると言えますか? その場しのぎに、ごまかしてはいないでしょうか。
善いと思ってしたことが、かえって相手には迷惑だった。そんなことがありはしないでしょうか。自分がいくら善いと思ってしたことも、された相手にしてみれば余計なことでしかなかったような、そんな経験がきっとあるはずです。
相手のことを思いやるのはいい。けれど、それをどう態度で示すのかというと、ことさら正解は難しくなります。間違うと相手に不信がられ、重い負担を強いることにもなりかねません。
登場してくる子供らは、自らに問いかけます。
・よいこととわるいことって、なに?
・きもちって、なに?
・知るって、なに?
・いっしょにいきるって、なに?
・自分って、なに?
・自由って、なに?
・人生って、なに?
もしもあなたの子どもがあなたにそう問いかけたとしたら、あなたはどんなふうに説明して聞かせるのでしょう? うまく説明してみせられるでしょうか? というか、あなた自身に向けられた問いだったとしたら、それぞれに、自信をもって答えることができるでしょうか。
大切な友だちや家族を、突然失ってしまったきみ。人を好きになる、という初めての気持ちに、とまどっているきみ。「仲良しグループ」 の陰口におびえてしまうきみ。「面白い奴」 を演じていて、ほんとうの自分がわからなくなったきみ--。正解のない問いや、うまくいかないことにぶつかり、悩むときもある。でも、生きることを好きでいてほしい。作家が少年少女のためにつづった小さな物語集。(新潮社)
この本を読んでみてください係数 80/100
◆重松 清
1963年岡山県津山市生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。
作品「定年ゴジラ」「カカシの夏休み」「ビタミンF」「十字架」「流星ワゴン」「疾走」「カシオペアの丘で」「ナイフ」「星のかけら」「また次の春へ」「ゼツメツ少年」他多数
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