『ロスジェネの逆襲』(池井戸潤)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2017/12/07
『ロスジェネの逆襲』(池井戸潤), 作家別(あ行), 書評(ら行), 池井戸潤
『ロスジェネの逆襲』 池井戸 潤 ダイヤモンド社 2012年6月28日第一刷 @1,500
池井戸潤が好きである。
あの、半沢直樹シリーズの第3部作です。
半沢は大方の予想に反して、銀行の系列会社である東京セントラル証券への出向を命じられます。
セントラル証券は社歴が浅く、業績は鳴かず飛ばず、親会社である銀行から割り当てられる仕事に甘んじている状態でした。
そこへ突然、大型の買収案件の依頼が舞い込みます。
IT企業の雄、電脳雑技集団の平山社長直々にライバル企業東京スパイラルを買収するためにアドバイザーになってほしいというものでした。
もし契約が成立すれば、セントラルにも巨額の手数料が転がり込む、願ってもないビジネスチャンスです。
契約成立までの多難を感じつつも、半沢は部下にGOサインを出します。
ところが、仕事の初手の段階でなんと親会社の東京中央銀行から横槍が入ります。
あろうことか、親会社が子会社にきた案件を横取りしてアドバイザー契約をさっさと交わしてしまったのです。
半沢の怒りは沸騰します。
このままでおくものかと、策を練り調査に乗り出します。
すると、この企業買収には裏で絡まるいくつもの複雑な事情が存在していることが徐々に明らかになってくるではありませんか。
電脳の社長が直にセントラルを訪ねた真の狙いは別にあり、最適のパートナーとしてセントラルが選ばれたわけではなかったのです。
・・・・・・・・・・・
相変わらず面白く、一気に読めます。
バブル世代とその後のロスジェネ社員との確執、まさかの粉飾決算など、逆転ゲーム以外にも読ませどころは満載です。
ラストは期待通り、半沢と今回は部下の森山も一緒に、考え抜かれた秘策で見事窮地を脱してみせるのです。
そのクライマックスは、どうぞ小説を読んで堪能してくださいませ。
(参考)半沢直樹シリーズ:「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」
この本を読んでみてください係数 85/100
◆池井戸 潤
1963年岐阜県生まれ。
慶應義塾大学文学部および法学部卒業。1988年三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。
32歳で銀行を退職、コンサルタント業のかたわらビジネス書を執筆、その後小説家。
作品 「果つる底なき」「M1」「銀行狐」「最終退行」「不祥事」「シャイロックの子供たち」「鉄の骨」「民王」「下町ロケット」「七つの会議」ほか多数
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