『僕はロボットごしの君に恋をする』(山田悠介)_幾つであろうと仕方ない。切ないものは切ない。
公開日:
:
最終更新日:2020/05/14
『僕はロボットごしの君に恋をする』(山田悠介), 作家別(や行), 山田悠介, 書評(は行)
『僕はロボットごしの君に恋をする』山田 悠介 河出文庫 2020年4月30日初版
あまりに切ない2人の恋の行方は?
ラストに驚愕必至の著者最高傑作、待望の文庫化! 文庫限定 「3年後の物語」 追加スピンオフでついに感動の完結! (帯文より)
2060年、東京は3度目のオリンピックを控えており治安維持のために遠隔操作ロボットを使おうという政策がたてられた。この計画はAIロボットの研究所と警察庁が共同して行われるものであった。
主人公の 「大沢健」 はプロジェクトチームの一員である。オリンピック開催においてテロ予告を受けた会社の警護にあたる。その会社は健の初恋の人である 「天野咲」 が勤めており、今回の任務をきっかけに健は自分専用の遠隔操作ロボット 「翼」 を通して少しずつ咲との距離を縮めていく。そんな日々がしばらく続くが、オリンピック当日、事件は起きる。その後、予想外の事実が次々と明かされていく。
大沢健 (おおさわたける)
主人公。28歳。AIロボット研究所のプロジェクトメンバーの1人で咲の勤める会社の警護にあたる。小学生の頃、いじめられていたときに咲が兄の陽一郎とともに助けてくれたことをきっかけに彼女のことを好きになる。健が高校三年生のとき、事故に遭い若くして亡くなった陽一郎の両親の葬儀に出席する。その時健の前で泣き出した咲を見て 「彼女を一生守ろう」 と決意する。ネガティブな性格で仕事でミスをしてしまうことが多いが、感情が豊かな優しい青年。何をやっても完璧な陽一郎に劣等感を抱いている。
天野咲 (あまのさき)
23歳。オリンピックのテロを予告されているアテナ社に勤めている。陽一郎の妹。スポーツの実績が高い大学を卒業しており、大学では陸上部に所属していた。幼い頃に両親を亡くしており、陽一郎に育てられてきたため2人はカップルのように仲が良い。(wikipedia参照)
途中まではそれなりに順調だったのですが、何だかだあり、挙句こんなことになります。
『容疑者は大沢健二十八歳。AIロボット技術研究所の職員で人質を一名取って逃亡中。指名手配され各幹線道路での検問がはじまっている模様です』
健は運転席に座りながら状況が呑みこめず呆然としていた。
僕はAIロボット技術研究所の職員でロボットを使って東京の治安維持に当たる極秘プロジェクトメンバーだ。東京オリンピックを狙ったテロを防ぐために特殊任務を与えられて活動してきた。
しかしついさっきテロが起きてしまった。しかも高価なロボットをまた破損させてしまった。
もちろんそれだけでも重大な過失だ。さらに職務規定を破り四号が警備する現場にやってきてしまった。それなりの重い罰は覚悟していたつもりだ。※四号:健専用ロボット 「翼」 のこと
それでも・・・・・・・ちょっと待て。僕がテロの犯人? 咲ちゃんを人質にして逃亡中!?
どうしてそうなるんだ。しかも全国に指名手配されたという。運転席のモニターに映し出されたニュースでは健の顔写真までもがはっきりと放送されていた。(本文より)
健には、何のことだかさっぱりわかりません。わかるのは、自分はいま確かに追われている、ということ。しかも、あろうことか愛する咲を人質にして。
物語はどこへ向かっていくのでしょう? そしてこの先、健の咲に対する想いは成就するのでしょうか。
前半、思いもかけず健の邪魔をするのは、相棒のロボット 「翼」 の存在です。後半では、思いもしない人物が、健の前に大きく立ちはだかることになります。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆山田 悠介
1981年東京都生まれ。
神奈川県の大和市立南林間中学校と平塚学園高等学校卒業。
作品 「リアル鬼ごっこ」「親指さがし」「ブレーキ」「名のないシシャ」「奥の奥の森の奥に、いる。」「貴族と奴隷」「天使が怪獣になる前に」他多数
関連記事
-
-
『ぼっけえ、きょうてえ』(岩井志麻子)_書評という名の読書感想文
『ぼっけえ、きょうてえ』岩井 志麻子 角川書店 1999年10月30日初版 ぼっけえ、きょうて
-
-
『本屋さんのダイアナ』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文
『本屋さんのダイアナ』柚木 麻子 新潮文庫 2016年7月1日発行 本屋さんのダイアナ (新潮
-
-
『ふじこさん』(大島真寿美)_書評という名の読書感想文
『ふじこさん』大島 真寿美 講談社文庫 2019年2月15日第1刷 ふじこさん (講談社文庫
-
-
『ブエノスアイレス午前零時』(藤沢周)_書評という名の読書感想文
『ブエノスアイレス午前零時』藤沢 周 河出書房新社 1998年8月1日初版 ブエノスアイレス午
-
-
『僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ』(辻内智貴)_書評という名の読書感想文
『僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ』 辻内智貴 祥伝社 2012年10月20日初版 僕は
-
-
『バック・ステージ』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
『バック・ステージ』芦沢 央 角川文庫 2019年9月25日初版 バック・ステージ (角川文
-
-
『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信)_名手が放つ邪悪な五つの物語
『儚い羊たちの祝宴』米澤 穂信 新潮文庫 2019年6月5日12刷 儚い羊たちの祝宴 (新潮
-
-
『春の庭』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文
『春の庭』柴崎 友香 文春文庫 2017年4月10日第一刷 春の庭 (文春文庫) 東京・世田
-
-
『ぼくがきみを殺すまで』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文
『ぼくがきみを殺すまで』あさの あつこ 朝日文庫 2021年3月30日第1刷 ぼくがきみを殺
-
-
『火のないところに煙は』(芦沢央)_絶対に疑ってはいけない。
『火のないところに煙は』芦沢 央 新潮社 2019年1月25日8刷 火のないところに煙は