『星に願いを、そして手を。』(青羽悠)_書評という名の読書感想文

『星に願いを、そして手を。』青羽 悠 集英社文庫 2019年2月25日第一刷

星に願いを、そして手を。 (集英社文庫)

大人になった僕たちの、”夢” との向かい合い方。
16歳の現役高校生が描く、ストレートな青春群像劇。

中学三年生の夏休み。宿題が終わっていない祐人は、幼馴染の薫、理奈、春樹とともに、町の科学館のプラネタリウムに併設された図書室で、毎年恒例の勉強会をおこなっていた。そんな彼らを館長はにこやかに迎え入れ、星の話、宇宙の話を楽しそうに語ってくれた。小学校からずっと一緒の彼らを繋いでいたのは、宇宙への強い好奇心だった。宇宙の話をするときはいつでも夢にあふれ、四人でいれば最強だと信じて疑わなかった。時が経ち、大人になるまでは - 。

祐人は昔思い描いていた夢を諦め、東京の大学を卒業後、故郷に戻り、公務員となった。そんな祐人を許せない理奈は、夢にしがみつくように大学院に進み、迷いながらも宇宙の研究を続けている。薫は科学館に勤め、春樹は実家の電気店を継いだ。それぞれ別の道を歩いていた彼らが、館長の死をきっかけに再び集まることになる - 。第29回小説すばる新人賞受賞作。(アマゾン内容紹介より)

館長が死んだ。そのことが今更頭をよぎった。
その死が、「このままのお前で本当にいいのか」 と、自分への信頼を足元から揺るがし続けている。「あの時、諦めたよね」 と理奈が後ろ指を指す。心の中がくすぶり、何かが暴れだすような夜をいくつも越える。浅い眠りで朝を迎える。

「何かを掴み損ねたんだ」
何か言おうとしたわけではないのに、気付けば口を開いていた。そのこぼれ出た言葉に自分でも驚くが、それはとりとめもなく広がっていくような今の感覚にぴったりだった。

「何か、ですか」
「そう。何か」
夢よりは具体的で、現実よりは眩しい何か。

僕は、その何かをずっと待っていたはずだった。
いろんなことを選ぶうちに、気が付けば大切なものを手放していた。
(P149.150 一部略)

これは大学卒業後地元に帰り、町役場の観光課で働く祐人と同じ課の後輩である宮田が、夏の終わりに催される花火大会の本部にいて、日中暇に任せてするやり取りの場面です。

ここでも、未だ祐人は - これまでには多くの分岐点があり、その先にはそれぞれの未来があったはずなのに、何度も選択を積み重ねている間に 「自分が進んでいると思っていた場所と大きくずれた位置に来てしまった」 と思っています。

では進むべき道に答えがあるかといえばそれはなく、然るに間違えようがないとも言え、今が結構満ち足りているという宮田の言葉に頷きはするものの、本心から納得しているわけではありません。選び損ねた未来が確かに自分にはあり、それが今ではすべて存在しない過去に変ってしまったことが、「怖いし、悲しい」 と感じています。

- さて、これはほんの一例ですが、読んでみなさんはどんな感じを受けたでしょう? 

書いてあることは、とてもよくわかります。その年頃にはありがちな迷いが適確に、整然とした文章で綴られています。

批判するのではありません。私が何気に感じたのは - 16歳の少年が、なぜ、(その年齢に) なってもいない人のことを書いたのか? - ということです。

この先の自分を想像し、あるいは友人の誰かの未来を予感して、もしも状況がそうであったらと仮定した上で書いたのでしょうが、それらしくはあるものの、その年頃の若者なら大抵一度や二度は誰もが思う、ごく当たり前のことが書いてあります。

もしもこれが高校一年生の、16歳の少年が書いたものではなく、相応の年齢の人が書いたものだとしたら、おそらく抵抗なく読んだはずです。なぜこんな無茶なことをしたのでしょう。そんな無理をしなくてよかったのに - と思うのですが、どうでしょう?

したこともない話を書くのではなく、できれば デビューの時の綿矢りさのような、16歳にしか書けないものが読みたかったと思うのは、私ばかりのことなのでしょうか。

この本を読んでみてください係数 80/100

星に願いを、そして手を。 (集英社文庫)

◆青羽 悠
2000年愛知県生まれ。
京都大学総合人間学部在学中。

作品 高校2年時の16年 『星に願いを、そして手を。』 で第29回小説すばる新人賞を史上最年少で受賞し、デビュー。

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