『逃亡刑事』(中山七里)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2023/09/11 『逃亡刑事』(中山七里), 中山七里, 作家別(な行), 書評(た行)

『逃亡刑事』中山 七里 PHP文芸文庫 2020年7月2日第1刷

単独で麻薬密売ルートを探っていた刑事が銃殺された。千葉県警刑事部捜査一課の高頭班が捜査にあたるが、事件の真相を知った警部・高頭冴子は真犯人に陥れられ、警官殺しの濡れ衣を着せられる。自分の無実を証明できるのは、事件の目撃者である八歳の少年のみ。少年ともども警察組織に追われることになった冴子が逃げ込んだ場所とは!? そして彼女に反撃の手段はあるのか!? 息をもつかせぬノンストップ・ミステリー。(PHP文芸文庫)

主人公の高頭冴子は、千葉県警刑事部捜査一課所属の警部である。三十二歳独身。身長百八十センチの武闘派。男勝りの体格と豪腕ぶりで、周囲から苦手意識を持たれている。女性らしさのかけらもなく、無駄に美人顔!である。登場するとすぐに、缶コーヒーを手のひらで豪快に潰して、虚勢を張るヤクザを萎えさせ、怒りにまかせて自身の机を蹴り上げ、積み重ねられた未決書類に雪崩を起こさせて部下を怯えさせる。そんな荒っぽい行動をする冴子であるが、正義感が強く有能だ。率いる班は機動力に優れ、高い検挙率を誇っている。

冴子たちは、薬物銃器対策課に所属する生田忠幸巡査部長が、閉店したカーディーラーのショールームで何者かに殺されるという事件を捜査することになる。有能で秘密主義だったという生田が探っていた麻薬供給ルートについて調べようとした矢先に、事件の目撃者が現れる。入院中の母親に会いたくて、暴力的な職員のいる児童養護施設を脱走してきた八歳の少年御堂猛だった。

猛の証言で、冴子は意外な人物が事件に関わっていることを知る。腹心の部下にのみ事情を打ち明け、一人対峙しようとする冴子だが、犯人に陥れられ、生田巡査部長殺しの罪を着せられてしまう。目撃者である猛の命を守り、真犯人を明らかにして汚名を晴らすため、逃亡の旅に出ることになるが・・・・・・・。(解説より)

千葉県警捜査一課の警部・高頭冴子は、警官殺しの犯人として、自らが所属する警察組織に追われることになります。それは明らかに、真犯人を隠匿するがための “冤罪” でした。ところが、それを証明する手立てがありません。

冴子は絶体絶命の窮地に立たされます。しかし、彼女はなぜ、逃亡してまで身の潔白を証明しなければならなかったのでしょう。しかも唯一の目撃者、御堂猛を道連れにして。

生田巡査部長殺しの捜査を命じられたはずの冴子が、逆に犯人にされてしまう状況とは? 事件の裏に、何があったのか。

核心は、敢えて伏せてあります。

【ヒント】
少年は、とんでもないものを目撃しています。下手をすれば千葉県警が根こそぎ吹っ飛ぶような。気付くと冴子は、県警内部のほぼ全員を敵に回しています。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「悪徳の輪舞曲(ロンド)」「連続殺人鬼カエル男」他多数

関連記事

『つみびと』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『つみびと』山田 詠美 中央公論新社 2019年5月25日初版 灼熱の夏、彼女はな

記事を読む

『映画にまつわるXについて』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『映画にまつわるXについて』西川 美和 実業之日本社文庫 2015年8月15日初版 西川美和

記事を読む

『セイレーンの懺悔』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『セイレーンの懺悔』中山 七里 小学館文庫 2020年8月10日初版 不祥事で番組

記事を読む

『護られなかった者たちへ』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『護られなかった者たちへ』中山 七里 宝島社文庫 2021年8月4日第1刷 連続

記事を読む

『問いのない答え』(長嶋有)_書評という名の読書感想文

『問いのない答え』長嶋 有 文春文庫 2016年7月10日第一刷 何をしていましたか? ツイッター

記事を読む

『太陽の塔』(森見登美彦)_書評という名の読書感想文

『太陽の塔』森見 登美彦 新潮文庫 2018年6月5日27刷 私の大学生活には華が

記事を読む

『妻が椎茸だったころ』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『妻が椎茸だったころ』中島 京子 講談社文庫 2016年12月15日第一刷 オレゴンの片田舎で出会

記事を読む

『トリニティ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『トリニティ』窪 美澄 新潮文庫 2021年9月1日発行 織田作之助賞受賞、直木賞

記事を読む

『トリップ』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『トリップ』角田 光代 光文社文庫 2007年2月20日初版 普通の人々が平凡に暮らす東京近郊の街

記事を読む

『父からの手紙』(小杉健治)_書評という名の読書感想文

『父からの手紙』小杉 健治 光文社文庫 2018年12月20日35刷 家族を捨て、

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『海神 (わだつみ)』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『海神 (わだつみ)』染井 為人 光文社文庫 2024年2月20日

『百年と一日』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『百年と一日』柴崎 友香 ちくま文庫 2024年3月10日 第1刷発

『燕は戻ってこない』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『燕は戻ってこない』桐野 夏生 集英社文庫 2024年3月25日 第

『羊は安らかに草を食み』(宇佐美まこと)_書評という名の読書感想文

『羊は安らかに草を食み』宇佐美 まこと 祥伝社文庫 2024年3月2

『逆転美人』(藤崎翔)_書評という名の読書感想文

『逆転美人』藤崎 翔 双葉文庫 2024年2月13日第15刷 発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑