『もっと超越した所へ。』(根本宗子)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
『もっと超越した所へ。』(根本宗子), 作家別(な行), 書評(ま行), 根本宗子
『もっと超越した所へ。』根本 宗子 徳間文庫 2022年9月15日初刷
肯定する力で、
全力で愛せ。稀代の劇作家、初の原作・脚本映画を小説化! 映画版 10.14 Fri 全国公開
好きになった相手はそれぞれクズ。
「泣いてないで早く出てってよ!! 」
と叫んだ4人の女子たちの気持ちが重なり、
超越した恋愛小説が生まれる! (徳間文庫)
好きになった男を前に、女は 「泣いてないで早く出てってよ!! 」 と言ったのでした。
一方、言われた男はおしなべてクズでした。クズな男が好きになり、それでも男を愛さずにはいられなかった女たちの物語 - 4組、8人の男女が織りなす平場の恋の迷走は、若いあなたの、必ずや共感を得ることでしょう。そう願わずにはいられません。
登場するのは・・・・・・・
〇櫻井 鈴:旬が過ぎた元女優の鈴は、今はタレントとして働いています。彼女が現在同居しているのは星川富 (ほしかわとむ) こと、とみー。とみーは気の優しい “オカマ” です。
〇岡崎 真知子:特技は裁縫。性欲がやや強く、それに関して彼女には二大トラウマがあります。現在の彼・怜人は高校の同級生。偶然の再会の後、不本意ながら同棲することに。
〇安西 美和:たいちゃんとは美和が働くガールズバーで知り合いました。LINEを交換し、連日美和が送り続けることで、やがて二人は付き合うようになります。
〇北川 七瀬:働かない父親と、元AV女優の母の間に生まれた七瀬は、物心つく前からジュニアグラビアをやらされていました。それが自分の性に合っていたのか、彼女は成人して風俗嬢になります。七瀬が働く店の常連客、それが現在の彼・慎太郎でした。
以上がざくっとした現況で、目次でいうと、
・それぞれの序章 から始まり、
・2020年1月のわたしたち
・2020年3月14日のわたしたち あたりまでは似たような状況が続き、ここで話は一旦、
・2018年8月31日の僕たち と、ここで初めて男たちが語ります。
そして、再び
・2020年4月1日 へと時間は戻るのですが、ここで話は終わりかと思いきや、そういうわけではありません。黒いだけのページを間にはさみ、話は今しばらく続きます。
※実は、登場人物たちの過去にはこんなことがありました。
〇鈴はとみーと出会う前、実は、慎太郎と付き合っていました。
〇真知子は、怜人と再会する前、実は、とみーと付き合っていました。
〇美和はたいちゃんと出会う前、実は、怜人と付き合っていました。。
〇七瀬は慎太郎をただの客だと思えなくなる前、実は、たいちゃんと付き合っていました。
狭い世間ではままあることですが、念のため知らせておこうと思います。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆根本 宗子
1989年東京都生まれ。
作品 19歳で劇団・月刊 「根本宗子」 を旗揚げ。以降、劇団公演ではすべての作品の作、演出を手掛ける。2022年には、初の小説となる 「今、出来る、精一杯。」 (小学館) を上梓。舞台 「もっと超越した所へ。」 (2015年上演) を原作とした同名映画の脚本を担当した。本作は、自身による書下ろし小説版となる。
関連記事
-
-
『眺望絶佳』(中島京子)_書評という名の読書感想文
『眺望絶佳』中島 京子 角川文庫 2015年1月25日初版 眺望絶佳 (角川文庫) &n
-
-
『その日東京駅五時二十五分発』(西川美和)_書評という名の読書感想文
『その日東京駅五時二十五分発』西川 美和 新潮文庫 2015年1月1日発行 その日東京駅五時二
-
-
『魔女は甦る』(中山七里)_そして、誰も救われない。
『魔女は甦る』中山 七里 幻冬舎文庫 2018年7月25日5版 魔女は甦る (幻冬舎文庫)
-
-
『流浪の月』(凪良ゆう)_デジタルタトゥーという消えない烙印
『流浪の月』凪良 ゆう 東京創元社 2020年4月3日6版 【2020年本屋大賞 大賞受賞作
-
-
『真夜中のマーチ』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文
『真夜中のマーチ』奥田 英朗 集英社文庫 2019年6月8日第12刷 真夜中のマーチ (集英
-
-
『ミーナの行進』(小川洋子)_書評という名の読書感想文
『ミーナの行進』小川 洋子 中公文庫 2018年11月30日6刷発行 ミーナの行進 (中公文
-
-
『うつくしい人』(西加奈子)_書評という名の読書感想文
『うつくしい人』西 加奈子 幻冬舎文庫 2011年8月5日初版 うつくしい人 (幻冬舎文庫)
-
-
『緑の我が家』(小野不由美)_書評という名の読書感想文
『緑の我が家』小野 不由美 角川文庫 2022年10月25日初版発行 物語の冒頭はこ
-
-
『プリズム』(貫井徳郎)_書評という名の読書感想文
『プリズム』貫井 徳郎 実業之日本社文庫 2022年8月9日初版第2刷発行 [作家
-
-
『また、同じ夢を見ていた』(住野よる)_書評という名の読書感想文
『また、同じ夢を見ていた』住野 よる 双葉文庫 2018年7月15日第一刷 また、同じ夢を見て