『七色の毒』(中山七里)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/14 『七色の毒』(中山七里), 中山七里, 作家別(な行), 書評(な行)

『七色の毒』中山 七里 角川文庫 2015年1月25日初版

岐阜県出身の作家で、ペンネームが「中山七里」とは中々にふざけた名前で面白い。知らなかったのは私だけのようで、世間ではえらく人気があるらしい。特に『切り裂きジャックの告白』という小説が評判で、テレビのドラマ化が決定したと書いてあります。

『七色の毒』は、『切り裂きジャックの告白』に続くシリーズの第2弾。警察の採用試験を受ける寸前まで俳優養成所に通っていたという珍しい経歴の持ち主で、嫌味のない男ぶりの良さで名をはせる〈犬養隼人〉という刑事が活躍する警察小説です。

但し、『切り裂きジャックの告白』が本格的な社会派ミステリーの長編であるのに対して、『七色の毒』は色にまつわる7つの事件に犬養刑事が挑む短編集で、最初の「赤い水」とこの本のために書き下ろされた最後の「紫の献花」だけは話が繋がっています。

中山七里をして「どんでん返しの帝王」と呼ぶらしく、『七色の毒』でも様々に趣向を凝らしたトリックが準備されています。あらかじめ予期せぬ結末ですよと教えてくれているにもかかわらず、読んでみると、確かに一々の意外性に驚かされることになります。

聞くところによると、著者はこの「原稿用紙50枚くらいの短編でどれくらいのどんでん返しができるか」挑戦しているらしい。そしてその結果、自ら「間違いなく、私の最高傑作です」と自負する作品に仕上がったと言っているようなのですが、では読んだ感想はと言うと、

さっくり読めて、切れ味が良いので読後感も良好。敢えて誤解を生むような言い方をしますが、〈暇つぶし〉には最適の読み物です。軽からず、重からず。きっちり時事問題が絡んで、勉強にもなります。

読んだことがないのに言うのも何ですが、『切り裂きジャックの告白』がドラマになるのが分かります。『七色の毒』に収められた短編にしても、それぞれがテレビの90分ドラマの原作になるような出来栄えです。もしかすると、もうなってるかも知れません。

この手の本は内容を書き過ぎると台無しになりますので敢えて触れませんが、私が気に入ったのは第二話の「黒いハト」という話。それと、第一話の事件の元凶であり、タイトルにもなっている〈赤い水〉。赤い色を強く印象付けるフレーズが記憶に残って消えません。

この本を読んでみてください係数 80/100


◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「さよならドビュッシー」「贖罪の奏鳴曲」「切り裂きジャックの告白」他

◇ブログランキング

いつも応援クリックありがとうございます。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

関連記事

『プリズム』(貫井徳郎)_書評という名の読書感想文

『プリズム』貫井 徳郎 創元社推理文庫 2003年1月24日 初版 女性教師はなぜ

記事を読む

『泣いたらアカンで通天閣』(坂井希久子)_書評という名の読書感想文

『泣いたらアカンで通天閣』坂井 希久子 祥伝社文庫 2015年7月30日初版 大阪

記事を読む

『農ガール、農ライフ』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『農ガール、農ライフ』垣谷 美雨 祥伝社文庫 2019年5月20日初版 大丈夫、ま

記事を読む

『炎上する君』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『炎上する君』西 加奈子 角川文庫 2012年11月25日初版 「君は戦闘にいる。恋という戦闘のさ

記事を読む

『にぎやかな落日』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『にぎやかな落日』朝倉 かすみ 光文社文庫 2023年11月20日 初版1刷発行 「今まで自

記事を読む

『橘の家』(中西智佐乃)_書評という名の読書感想文

『橘の家』中西 智佐乃 新潮社 2025年6月25日 発行 人類の業をえぐる三島賞受賞作

記事を読む

『境界線』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『境界線』中山 七里 宝島社文庫 2024年8月19日 第1刷発行 『護られなかった者たちへ

記事を読む

『偽医者がいる村』(藤ノ木優)_書評という名の読書感想文  

『偽医者がいる村』藤ノ木 優 角川文庫 2025年7月20日 8版発行 医療事故に苦しむ産科

記事を読む

『毒島刑事最後の事件』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『毒島刑事最後の事件』中山 七里 幻冬舎文庫 2022年10月10日初版発行 大人

記事を読む

『猫鳴り』沼田まほかる_書評という名の読書感想文

『猫鳴り』 沼田 まほかる 双葉文庫 2010年9月19日第一刷 「沼田まほかる」 という人をご

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『百年の時効』 (伏尾美紀)_書評という名の読書感想文

『百年の時効』 伏尾 美紀 幻冬舎 2026年1月20日 第8刷発行

『十字架屋の日常』 (井上荒野)_書評という名の読書感想文

『十字架屋の日常』 井上 荒野 中公文庫 2026年2月25日 初版

『有罪、とAIは告げた』 (中山七里)_書評という名の読書感想文

『有罪、とAIは告げた』 中山 七里 小学館文庫 2026年5月20

『けんぐゎい』 (朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『けんぐゎい』 朝倉 かすみ 光文社 2026年4月30日 初版第1

『食べると死ぬ花』 (芦花公園)_書評という名の読書感想文

『食べると死ぬ花』 芦花 公園 新潮文庫 2026年6月1日 発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑