『ボーンヤードは語らない』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『ボーンヤードは語らない』市川 憂人 創元推理文庫 2024年6月21日 初版

人気のない飛行場の墓場 でなぜ兵士は変死したのか? シリーズ累計10万部突破 マリアと漣が挑む四つの不可能犯罪!

マリア&漣シリーズ第4弾

U国A州の空軍基地にある 『飛行機の墓場 (ボーンヤード)』 で、兵士の変死体が発見された。謎めいた死の状況、浮かび上がる軍用機部品の横流し疑惑。空軍少佐のジョンは士官候補生時代のある心残りから、フラッグスタッフ署の刑事、マリアと漣へ非公式に事件解決への協力を請うが・・・・・・・。表題作ほか、雪密室の殺人、雨の夜の墜落事件、緊急通報があった家庭での悲劇の謎に挑む、4編収録の短編集。(創元推理文庫)

多分、読んだ多くの人がこの物語のメインキャスト、マリアと漣に一方ならぬ興味を抱くことでしょう。虜になる、といってもいいかもしれません。なりそうもなかった二人が、なぜ警察官になったのか? 読むと、その経緯の凡そを知ることができます。そして、きっと二人のことをもっと知りたくなるに違いありません。

本書 『ボーンヤードは語らない』 は第26回鮎川哲也賞を受賞した市川憂人 『ジェリーフィッシュは凍らない』 に始まる 〈マリア&漣〉 シリーズの四作目にして初の短篇集に当たる。

といっても、ただマリア&漣の主人公コンビが活躍する話を集めたものではない。本書で初めてこのシリーズに触れる方にいきなりそんなことをいっても何をいっているのかわからないかもしれないので、『ジェリーフィッシュ -』 についてざっとおさらいしておくと -

真空気嚢という特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船ジェリーフィッシュ。1983年2月、その新型機の最終的な長距離航行試験に発明者以下6名の開発スタッフが臨んだが、その最中にメンバーの一人が変死し、さらに試験機が雪山の崖に囲まれた窪地に不時着。脱出不可能という状況下で一人、また一人と死んでいく -

その捜査に当たるのがU国A州フラッグスタッフ署刑事課のマリア・ソールズベリー警部と九条漣刑事という次第。シチュエーションは若干異なるけれど、孤島に集められた人々が次々に殺されていくクローズドサークルものの名作を髣髴させる設定ではないか。刊行時に 「21世紀の 『そして誰もいなくなった』 登場! 」 と謳われたゆえんであるが、この作品、そこんとこがやたらとクローズアップされたせいもあってか、他の特徴が見過ごされがちな感がある。

その一つとは、もちろんマリア&漣という異色の刑事バディものであること。

そしてもう一つは、舞台がアメリカのようでアメリカではないU国という並行世界 (パラレルワールド) であること。時代設定が1980年代となればなおさらだ。(香山二三郎/解説より)

※正直に言うと、私は、たまたま目についた 『揺籠のアディポクル』 を読んだだけで、解説中に出てくる (著者の代表作) 『ジェリーフィッシュは凍らない』 はまだ読んではいません。読もうかどうか迷っていたのですが、これで読む気になりました。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆市川 憂人
1976年神奈川県生まれ。
東京大学卒業。

作品 2016年 「ジェリーフィッシュは凍らない」 で、第26回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。他に、「ブルーローズは眠らない」「グラスバードは還らない」「ヴァンプドッグは叫ばない」「揺籠のアディポクル」など

関連記事

『太陽は気を失う』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『太陽は気を失う』乙川 優三郎 文芸春秋 2015年7月5日第一刷 人は(多かれ少なかれ)こんな

記事を読む

『肝、焼ける』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『肝、焼ける』朝倉 かすみ 講談社文庫 2009年5月15日第1刷 31歳になった

記事を読む

『ホテルローヤル』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文

『ホテルローヤル』桜木 紫乃 集英社 2013年1月10日第一刷 「本日開店」は貧乏寺の住職の妻

記事を読む

『破蕾』(雲居るい)_書評という名の読書感想文

『破蕾』雲居 るい 講談社文庫 2021年11月16日第1刷 あの 冲方 丁が名前

記事を読む

『ツタよ、ツタ』(大島真寿美)_書評という名の読書感想文

『ツタよ、ツタ』大島 真寿美 小学館文庫 2019年12月11日初版 (注) 小説で

記事を読む

『天国までの百マイル 新装版』(浅田次郎)_書評という名の読書感想文

『天国までの百マイル 新装版』浅田 次郎 朝日文庫 2021年4月30日第1刷 不

記事を読む

『間宵の母』(歌野晶午)_書評という名の読書感想文

『間宵の母』歌野 晶午 双葉文庫 2022年9月11日第1刷発行 恐怖のあまり笑い

記事を読む

『楽園の真下』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『楽園の真下』荻原 浩 文春文庫 2022年4月10日第1刷 「日本でいちばん天国

記事を読む

『コロナと潜水服』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『コロナと潜水服』奥田 英朗 光文社文庫 2023年12月20日 初版1刷発行 ちょっぴり切

記事を読む

『本性』(黒木渚)_書評という名の読書感想文

『本性』黒木 渚 講談社文庫 2020年12月15日第1刷 異常度 ★★★★★ 孤

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『妊娠カレンダー』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『妊娠カレンダー』小川 洋子 文春文庫 2020年12月20日 第2

『カフェーの帰り道』(嶋津輝)_書評という名の読書感想文

『カフェーの帰り道』嶋津 輝 東京創元社 2026年1月23日 4版

『きっと君は泣く』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『きっと君は泣く』山本 文緒 角川文庫 2026年1月25日 改版初

『彼女たちが隠したかったこと』(一木けい)_書評という名の読書感想文

『彼女たちが隠したかったこと』一木 けい 角川文庫 2026年1月2

『カンザキさん』(ピンク地底人3号)_書評という名の読書感想文

『カンザキさん』 ピンク地底人3号 集英社 2026年1月10日 第

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑