『許されようとは思いません』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/09
『許されようとは思いません』(芦沢央), 作家別(あ行), 書評(や行), 芦沢央
『許されようとは思いません』芦沢 央 新潮文庫 2019年6月1日発行
あなたは絶対にこの 「結末」 を予測できない! 新時代到来を告げる、驚愕の暗黒ミステリ。
かつて祖母が暮らしていた村を訪ねた 「私」。祖母は、同居していた曾祖父を惨殺して村から追放されたのだ。彼女は何故、余命わずかだったはずの曾祖父を、あえて手にかけたのか・・・・・・・日本推理作家協会賞短編部門ノミネートの表題作ほか、悲劇を起こさざるを得なかった女たちを端整な筆致と鮮やかなレトリックで描き出す全五篇。(新潮社)
いずれも甲乙付け難い秀作が5編。これまで読んだ芦沢央の作品の中ではピカ一ではないかと。文句なく面白いと言えるものにやっと出会えた感じがします。
解説の池上冬樹氏曰く、全てが 「密度が濃く、技巧が凝らされていて、驚きの結末へともっていく。読むのが息苦しくなるほど世界が緊張にふるえている」- 正にその通りの読み応えだろうと。
(以下は、ややネタバレ気味の文章になります。読むと、驚きが半減するかもしれません。読むかどうかはお任せします)
五篇の中でいちばんの傑作は、「姉のように」 だろう。事件を起こした姉のようにはならないために、自分の娘への虐待の衝動を抑えようとする話だ。姉は童話作家として活躍した誇るべき存在で、だからこそ事件は衝撃的で、主人公の 「私」 は周囲の目を意識して生きていくのだけれど、三歳の娘はいうことをきかず、また夫も 「私」 を理解してくれず、次第に精神的に追い込まれていく。
ひとつ歯車が狂いだすとどうしようもなく悪い方向へと転がっていく。我慢し、うまくたちまわろうとするものの、情況は容赦なく、幼児虐待に引き込まれていく主婦の心理を徹底的に捉えていて、読むのが辛くなる。
いったい結末はどうなるのかと思っていると、いやはや、最後に足元をすくわれるのだ。どんでん返しがあり、世界が一変する。いままで読んできたものを根底から覆す仕掛けで、あわてて冒頭にもどって確認すると、ちゃんとそこに事実が書いてある。
読者を巧みにリードしつつ、躾と暴力のあわいというテーマを強く訴えながらも、ミステリとしての仕掛けで驚かせる。見事なまでに作り込まれた傑作サスペンスだ。(解説より抜粋)
但し、それでもあなたは気付かないかもしれません。読み損じのないよう、くれぐれも注意してください。
[目次]
・目撃者はいなかった
・ありがとう、ばあば
・絵の中の男
・姉のように
・許されようとは思いません
追伸 五篇とは別に、思わぬ場所に “付録” があります。「特別掌編」 を見逃さないようにしてください。
◆この本を読んでみてください係数 85/100
◆芦沢 央
1984年東京都生まれ。
千葉大学文学部史学科卒業。
作品 「罪の余白」「今だけのあの子」「いつかの人質」「悪いものが、来ませんように」「火のないところに煙は」他
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