『検事の死命』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/09 『検事の死命』(柚月裕子), 作家別(や行), 書評(か行), 柚月裕子

『検事の死命』柚月 裕子 角川文庫 2019年6月5日8版

電車内で女子高生に痴漢を働いたとして会社員の武本が現行犯逮捕された。武本は容疑を否認し、金を払えば示談にすると少女から脅されたと主張。さらに武本は県内有数の資産家一族の婿だった。担当を任された検事・佐方貞人に対し、上司や国会議員から不起訴にするよう圧力がかかるが、佐方は覚悟を決めて起訴に踏み切る。権力に挑む佐方に勝算はあるのか (「死命を賭ける」)。正義感あふれる男の執念を描いた、傑作ミステリー。(角川文庫)

[目次]
第一話 心を掬う
第二話 業をおろす
第三話 死命を賭ける 「死命刑事部編
第四話 死命を決する 「死命公判部編

『最後の証人』 『検事の本懐』 と続く佐方貞人シリーズ・第3作 『検事の死命』 を読みました。

これで終わりかと思うと残念でなりません。ずっとずっと読んでいたかった。忘れられないシリーズとなりました。

シリーズ最終となる本作は、前作 『検事の本懐』 と同じく佐方が検事として関わった事件の謂わば “集大成” となる作品です。『検事の本懐』 から1、2年後、30歳の頃の佐方の姿が描かれています。

前作までのおさらいをするように最初二編の短編があり、第三話、第四話と続く中編 「死命」 では、いよいよこの物語の佳境と言える場面を迎えます。

おそらく佐方は、並々ならぬ覚悟の上であったのでしょう。「罪をいかにまっとうに裁かせるか」 それだけを考え、それのみに命を賭しています。時に青臭いと言われ、検事としての身分までをも蔑ろにするような彼の信条とは? 正義とは何なのでょう?

佐方は、第三話から第四話にかけての途中で刑事部から公判部へ異動となり、検事として実際に裁判に臨むことになります。法廷に立つ彼が初めて扱ったのが、ある “痴漢” 事件でした。

電車内における痴漢行為により迷惑防止条例違反の容疑で逮捕された武本弘敏という男が送致されてきた。イベント会場行きのごったがえした電車内で女子高生・仁藤玲奈の臀部を触ったとされていたが、本人は一貫して犯行を否認。しかも玲奈から、「お金を払えば無かったことにしてやる」 とまで言われたと話す。被害者側にも話を聞くが、言い分は真っ向から対立。素行が悪く決して裕福ではない玲奈と、由緒ある家に(婿として)入り、政治家や法曹界の重鎮などの後ろ盾も強い武本。どちらかが嘘をついているのは明白だが、捜査を続けた佐方はついに、武本を起訴することを決める。しかし上からは決して決済印を押さないと言われ起訴は難航。だが米崎東署の南場の応援や筒井の案により、ついに公判に持ち込むことができた佐方は、検事としての死命を賭けて法廷に立つ。(wikipediaより)

※佐方がいるのは米崎地方検察庁。米崎東署署長の南場は、以前仕事で佐方に助けられたことがあります。米崎地検刑事部副部長の筒井は佐方の上司で、誰よりも心強い佐方の味方です。

佐方が優秀な検事なら、武本を弁護する井原もまた百戦錬磨の弁護士で、二人は互いに主張を譲らず、相手の論旨が甘いとなると容赦なくその点を突きます。結審するかと思いきや、井原は新たに証人が出たといい、証人として出廷した半田からは事件当日の詳細な目撃証言がなされるに及んで、もはやここまでかと思わせたその次の場面・・・・・・・

半田に対し、佐方は思いもかけない反撃を仕掛けます。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆柚月 裕子
1968年岩手県生まれ。

作品 「臨床真理」「最後の証人」「検事の本懐」「蝶の菜園 - アントガーデン -」「パレードの誤算」「朽ちないサクラ」「ウツボカズラの甘い息」「孤狼の血」他多数

関連記事

『くもをさがす』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『くもをさがす』西 加奈子 河出書房新社 2023年4月30日初版発行 これはたっ

記事を読む

『ファーストクラッシュ』(山田詠美)_ 私を見て。誰より “私を” 見てほしい。

『ファーストクラッシュ』山田 詠美 文藝春秋 2019年10月30日第1刷 初恋、

記事を読む

『蝶々の纏足・風葬の教室』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『蝶々の纏足・風葬の教室』山田 詠美 新潮社 1997年3月1日発行 「風葬の教室」(平林た

記事を読む

『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)_書評という名の読書感想文

『君たちはどう生きるか』吉野 源三郎 岩波文庫 2023年7月5日 第97刷発行 いじめ、勇

記事を読む

『火口のふたり』(白石一文)_書評という名の読書感想文

『火口のふたり』白石 一文 河出文庫 2015年6月20日初版 『火口のふたり』

記事を読む

『回転木馬のデッド・ヒート』(村上春樹)_書評という名の読書感想文

『回転木馬のデッド・ヒート』村上 春樹 講談社 1985年10月15日第一刷 村上春樹が30

記事を読む

『鯨の岬』(河﨑秋子)_書評という名の読書感想文

『鯨の岬』河﨑 秋子 集英社文庫 2022年6月25日第1刷 札幌の主婦奈津子は、

記事を読む

『ベッドタイムアイズ』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『ベッドタイムアイズ』山田 詠美 河出書房新社 1985年11月25日初版 2 sweet

記事を読む

『工場』(小山田浩子)_書評という名の読書感想文

『工場』小山田 浩子 新潮文庫 2018年9月1日発行 (帯に) 芥川賞作家の謎めくデビュー作、

記事を読む

『帰れない探偵』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『帰れない探偵』柴崎 友香 講談社 2025年8月26日 第4刷発行 『続きと始まり』 『百

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『カフェーの帰り道』(嶋津輝)_書評という名の読書感想文

『カフェーの帰り道』嶋津 輝 東京創元社 2026年1月23日 4版

『きっと君は泣く』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『きっと君は泣く』山本 文緒 角川文庫 2026年1月25日 改版初

『彼女たちが隠したかったこと』(一木けい)_書評という名の読書感想文

『彼女たちが隠したかったこと』一木 けい 角川文庫 2026年1月2

『カンザキさん』(ピンク地底人3号)_書評という名の読書感想文

『カンザキさん』 ピンク地底人3号 集英社 2026年1月10日 第

『真珠とダイヤモンド 上下』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『真珠とダイヤモンド 上下』桐野 夏生 朝日文庫 2026年1月25

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑