『懲役病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/05 『懲役病棟』(垣谷美雨), 作家別(か行), 垣谷美雨, 書評(た行)

『懲役病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2023年6月11日初版第1刷発行

累計23万部病棟シリーズ第3弾 女子受刑者の罪と罰

神田川病院の “金髪女医” 太田香織と看護師・松坂マリ江は、ひょんなことから女子刑務所に派遣される。当初は、受刑者との距離を感じていたが、後輩から授かった不思議な聴診器を胸に当てると - 惣菜430円の万引きで懲役2年を科せられていたり、夫の執拗なDVに耐えきれず殺害に及んでいたり、はたまた悪い男にそそのかされ、クスリに手を出していたり、と切実な事情が見えてきた。二人は受刑者とは個人的に接してはならないという禁を破り、あっと驚く方法で解決に乗り出してゆくが・・・・・・・。「病棟」 シリーズ第3弾。解説は元厚生労働事務次官の村木厚子氏。(小学館文庫)

[目次]
第一章 万引き犯 
第二章 殺人犯
第三章 覚醒剤事犯
第四章 放火犯
第五章 受刑者からの手紙

今回、(神田川病院から) 選ばれて女子刑務所へ派遣されたのは、医師の太田香織と看護師の松坂マリ江の二人でした。両名共に、望んだことではありません。むしろ不安で、怖くもあったのですが、部長からの依頼故、軽々に断るわけにもいきません。

診察する中で、二人が気になったのは以下の四名でした。最初はたんなる風邪だと思われたのですが、それとは別に、彼女たちは、胸の中に大きな傷を抱えています。ある受刑者などは、いっそ死にたいとまで思い詰めています。

受刑者呼称番号 825番 谷山清子 (たにやま・きよこ) 62歳
受刑者呼称番号 907番 児玉美帆 (こだま・みほ) 40歳
受刑者呼称番号 579番 山田ルル (やまだ・るる) 26歳
受刑者呼称番号 926番 秋月梢 (あきづき・こずえ) 80歳

香織とマリ江は、受刑者たちは何が原因で罪を犯したのか、彼女たちが何を守ろうとしてムショ送りになったのか - その真を知るところとなります。全ては、後輩から餞別として貰い受けた、古びた聴診器のおかげでした。

※「常勤として半年間、青葉市にある女子刑務所に行ってくれないか」 と言ったのは、笹田部長でした。他に適任者がいないと言い、行かせたくても行かせられない者の例として香織の後輩の、早坂ルミ子や黒田摩周湖の名前が挙がります。

早坂ルミ子は三十三歳。コチコチの真面目人間ゆえ、融通が利かず、空気が読めません。もう一人の黒田摩周湖は二十九歳。名前が表す通り変人で、死後の世界を信じています。共に世間知らずということで、笹田部長にとって二人は端から論外でしたが、途中、香織からの半ば強制的な依頼で、二人は案外 “良い仕事” をします。

この本を読んでみてください係数  80/100

◆垣谷 美雨
1959年兵庫県豊岡市生まれ。
明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒業。

作品 「竜巻ガール」「ニュータウンは黄昏れて」「後悔病棟」「老後の資金がありません」「夫の墓には入りません」「姑の遺品整理は、迷惑です」「うちの父が運転をやめません」他多数

関連記事

『さよなら、ニルヴァーナ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『さよなら、ニルヴァーナ』窪 美澄 文春文庫 2018年5月10日第一刷 14歳の時に女児を殺害し

記事を読む

『負け逃げ』(こざわたまこ)_書評という名の読書感想文

『負け逃げ』こざわ たまこ 新潮文庫 2018年4月1日発行 第11回 『女による女のためのR-

記事を読む

『図書準備室』(田中慎弥)_書評という名の読書感想文

『図書準備室』 田中 慎弥 新潮社 2007年1月30日発行 田中慎弥は変な人ではありません。芥

記事を読む

『電球交換士の憂鬱』(吉田篤弘)_書評という名の読書感想文

『電球交換士の憂鬱』吉田 篤弘 徳間文庫 2018年8月15日初刷 十文字扉、職業 「電球交換士」

記事を読む

『あこがれ』(川上未映子)_書評という名の読書感想文

『あこがれ』川上 未映子 新潮文庫 2018年7月1日発行 第1回 渡辺淳一文学賞受賞作品 ま

記事を読む

『伝説のエンドーくん』(まはら三桃)_書評という名の読書感想文

『伝説のエンドーくん』まはら 三桃 小学館文庫 2018年6月11日初版 中学校の職員室を舞台に、

記事を読む

『神様』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『神様』川上 弘美 中公文庫 2001年10月25日初版 なぜなんだろうと。なぜ私はこの人の小説

記事を読む

『逃亡作法 TURD ON THE RUN(上・下)』(東山彰良)_書評という名の読書感想文

『逃亡作法 TURD ON THE RUN』(上・下)東山 彰良 宝島社文庫 2009年9月19日第

記事を読む

『つやのよる』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『つやのよる』井上 荒野 新潮文庫 2012年12月1日発行 男ぐるいの女がひとり、死の床について

記事を読む

『妻は忘れない』(矢樹純)_書評という名の読書感想文

『妻は忘れない』矢樹 純 新潮文庫 2020年11月1日発行 葬儀の晩に訪れた、前

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『メイド・イン京都』(藤岡陽子)_書評という名の読書感想文

『メイド・イン京都』藤岡 陽子 朝日文庫 2024年4月30日 第1

『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子 新潮社 2024年3月2

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日

『揺籠のアディポクル』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『揺籠のアディポクル』市川 憂人 講談社文庫 2024年3月15日

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑