『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/05 『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎), 伊坂幸太郎, 作家別(あ行), 書評(か行)

『逆ソクラテス』伊坂 幸太郎 集英社文庫 2023年6月25日第1刷

僕たちは、逆転する。伊坂幸太郎史上、最高の読後感!

僕はそうは思わない - 逆ソクラテス
いじめられっ子だったとしたら、何か変わるか? スロウではない
親だって人間だ - 非オプティマス
それはギャンブルじゃなくて、チャレンジだ - アンスポーツマンライク
最終的には真面目で約束を守る人間が勝つんだよ - 逆ワシントン

「敵は、先入観だよ」 学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担任の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか!? 表題作ほか、「スロウではない」 「非オプティマス」 など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。(集英社文庫)

驚きました。まさかこんな - 極めて真っ当で、かつ感動的な - 内容の本だとは思いもしませんでした。特に私は 「スロウではない」 が強く印象に残りました。この先きっと忘れないと思います。

※『逆ソクラテス』 文庫化記念インタビューより

- (「逆ソクラテス」 の) 次に書かれたのは、「スロウではない」 ですか。
伊坂 (割愛)

- 「スロウではない」 はどこから作ったんですか。
伊坂 担当編集者と二人で、自分たちの子供の話や、それに関係する学校での話をしている中で、運動会の話になったんですよね。子供のころって、足の速さで一目置かれたりしますし、遅いとつらかったりするじゃないですか。大人になったらあんまり、足の速さは関係ないのにな、といろいろ思っている中で、お話しができあがったような。

- 「ゴッドファーザー」 ごっこをする二人が印象的ですね (笑)。
伊坂 あんな感じで、いろんなことが解決するんだったら世話ないな、と思いますし、笑えるじゃないですか。「ゴッドファーザーごっこをする子供」 の場面は昔から、アイディアとして持っていて、たとえば、『ガソリン生活』 の時にも、その場面を書いてみたんですよね。ただ、うまくいかなくて削除して。その後も、別の短編とかに入れ込もうとしては断念したんです。なので、やっと入れられた! という感じで。

- 磯憲と呼ばれる先生が出てきますよね。あとがきによると、小学校の担任の先生がモデルなんですか?
伊坂 (割愛)

「僕はそうは思わない」、「ゴッドファーザー」 ごっこをする二人、そして磯憲先生。この三つは覚えておいてください。必ずや、あなたの記憶に留まり続けることでしょう。中でも私が一番好きなのは、「ゴッドファーザー」 ごっこをする二人の少年。その間合いのよさといったらありません。本人たちは案外真面目で、真面目だからこそ笑えてきます。そして、そんな会話を、あの頃きっと私もしていたんだろうと。

[参考]
第33回柴田錬三郎賞受賞作
本書は、2020年4月、集英社より刊行されました。

初出
逆ソクラテス 『あの日、君と Boys 』 収録 2012年、集英社文庫
スロウではない 「オール讀物」 2015年8月号
非オプティマス  単行本書き下ろし
アンスポーツマンライク  単行本書き下ろし
逆ワシントン 単行本書き下ろし

この本を読んでみてください係数 85/100

◆伊坂 幸太郎
1971年千葉県生まれ。
東北大学法学部卒業。

作品 「オーデュポンの祈り」「アヒルと鴨のコインロッカー」「死神の精度」「ゴールデンスランバー」「グラスホッパー」「重力ピエロ」「AX」他多数

関連記事

『空海』(高村薫)_書評という名の読書感想文

『空海』高村 薫 新潮社 2015年9月30日発行 空海は二人いた - そうとでも考えなければ

記事を読む

『花や咲く咲く』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

『花や咲く咲く』あさの あつこ 実業之日本社文庫 2016年10月15日初版 昭和18年、初夏。小

記事を読む

『末裔』(絲山秋子)_書評という名の読書感想文

『末裔』絲山 秋子 河出文庫 2023年9月20日 初版発行 家を閉め出された孤独な中年男の

記事を読む

『監殺』(古野まほろ)_書評という名の読書感想文

『監殺』古野 まほろ 角川文庫 2021年2月25日第1刷 唯一無二 異色の警察ド

記事を読む

『しゃもぬまの島』(上畠菜緒)_書評という名の読書感想文

『しゃもぬまの島』上畠 菜緒 集英社文庫 2022年2月25日第1刷 それは突然や

記事を読む

『向田理髪店』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『向田理髪店』奥田 英朗 光文社 2016年4月20日初版 帯に[過疎の町のから騒ぎ]とあり

記事を読む

『骨を彩る』(彩瀬まる)_書評という名の読書感想文

『骨を彩る』彩瀬 まる 幻冬舎文庫 2017年2月10日初版 十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性

記事を読む

『ロゴスの市』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『ロゴスの市』乙川 優三郎 徳間書店 2015年11月30日初版 至福の読書時間を約束します。乙川

記事を読む

『生きる』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『生きる』乙川 優三郎 文春文庫 2005年1月10日第一刷 亡き藩主への忠誠を示す「追腹」を禁じ

記事を読む

『少女奇譚/あたしたちは無敵』(朝倉かすみ)_朝倉かすみが描く少女の “リアル”

『少女奇譚/あたしたちは無敵』朝倉 かすみ 角川文庫 2019年10月25日初版

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『つまらない住宅地のすべての家』(津村記久子)_書評という名の読書感想文

『つまらない住宅地のすべての家』津村 記久子 双葉文庫 2024年4

『悪逆』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『悪逆』黒川 博行 朝日新聞出版 2023年10月30日 第1刷発行

『エンド・オブ・ライフ』(佐々涼子)_書評という名の読書感想文

『エンド・オブ・ライフ』佐々 涼子 集英社文庫 2024年4月25日

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』(清武英利)_書評という名の読書感想文

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』清武 英利 

『メイド・イン京都』(藤岡陽子)_書評という名の読書感想文

『メイド・イン京都』藤岡 陽子 朝日文庫 2024年4月30日 第1

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑