『掲載禁止 撮影現場』 (長江俊和)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/05 『掲載禁止 撮影現場』 (長江俊和), 作家別(な行), 書評(か行), 長江利和

『掲載禁止 撮影現場』 長江 俊和 新潮文庫 2023年11月1日 発行

心臓の弱い方はご注意ください 「出版禁止シリーズ 文庫オリジナル

例の支店」 「イップスの殺し屋」 「撮影現場」 「カガヤワタルの恋人など驚愕のどんでん返しミステリー全8編!

不気味な廃墟で言い合いをする二人の男の衝撃的結末 「例の支店」、自分が犯人だと自首してきた男を問い詰めていくなかで進行する奇妙な議論 「哲学的ゾンビの殺人」、カリスマ映画監督の作品に出演した役者が見た、とんでもない光景 「撮影現場」、仕掛けが冴える著者の真骨頂特別書下ろし 「カガヤワタルの恋人」・・・・・・・。怖いのに、読むのが止められない傑作八編。心臓の弱い方は、ご注意ください。解説・真梨幸子 (新潮文庫)

心配しなくて大丈夫。いうほど怖くはありません。というか、怖さの 「質」 が違います。よくよく読めば、あとからゾッとするとかの・・・・・・・ 「クレイジーとかルナティックとか正常ではない状態」 こそが、長江作品を長江作品たらしめている (真梨幸子) - のだと。

- さて、長江さんといえば、「放送禁止」 や 「出版禁止」 などの 「禁止」 ものである。共通するのは、目まぐるしいミスリードとそして大どんでん返し。

私も一応はミステリー作家である。ミスリードにもどんでん返しにもある程度の免疫がある。大抵のものなら、三分の一も読めば、展開と着地を予測することができる。だが、長江さんの小説だけは、ことごとく予想が覆るのだ。

本書でいえば、「例の支店」 「哲学的ゾンビの殺人」 「イップスの殺し屋」 「リヨンとリヲン」 がまさにそれだ。予想した途端に覆る。そんなことがページを捲るごとに続き、へとへとになったところで後頭部を鈍器で殴られたような衝撃のどんでん返し。・・・・・・・うまいなぁ。

伏線の張り方も名人技だ。「ルレの風に吹かれて」 「この閉塞感漂う世界で起きた」 「カガヤワタルの恋人」 は、ラストにたどり着いたあと冒頭を読み返して、「なるほど・・・・・・・」 と唸ってしまう。

そして長江さんといえばモキュメンタリー (フェイクドキュメンタリー)。その色が最も濃いのが 「撮影現場」。実際のリアリティー番組でも似たようなことが行われているんじゃないの?というイヤーなゾワゾワ感にしばらく立ち直れなくなる。(解説より)

さあ、あなたの (知的) 好奇心を満たしてくれる作品は一体どれなんでしょう? 怖さより先に、私はそれが気になります。 

この本を読んでみてください係数 80/100

◆長江 俊和
1966年大阪府吹田市生まれ。映像作家、小説家。深夜番組 「放送禁止」 シリーズは多くの熱狂的なファンを生み出した。

作品 「出版禁止」「ゴーストシステム」「放送禁止」「検索禁止」「東京二十三区女」等

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