『銀の夜』(角田光代)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/05 『銀の夜』(角田光代), 作家別(か行), 書評(か行), 角田光代

『銀の夜』角田 光代 光文社文庫 2023年11月20日 初版1刷発行

これは、私たちにとってやり遂げなくてはならない何かなのだ」 人生と本当に向き合い始めた大人女性の 生きる手応えとは?を描いた話題作。

大人になっても、わからない。15歳の少女たちは35歳となった。欲しいのは、生きる手応え。これは、すべての女性の物語。

イラストレーター井出ちづる。夫は若い女と浮気をしている。嫉妬はまるで感じないがそんな自分に戸惑っている。早くに結婚して母となった岡野麻友美。自分ができなかったことを幼い娘に託し、人生を生き直そうとする。帰国子女で独身の草部伊都子。著名翻訳家の母のように非凡に生きたいと必死になるが、何ひとつうまくいかない。三人は女子高時代に少女バンドを組んでメジャーデビューをした。人生のピークは十代だったと懐かしむ。三十代となったこれからの人生に、あれ以上興奮することはあるのだろうか・・・・・・・。『対岸の彼女』 直木賞受賞時に書かれた、女たちの物語。14年間埋もれていた傑作が、今、私たちの魂を揺さぶる。(光文社)

本作は、元々は雑誌 「VERY」 に掲載 (2005年7月号~2007年6月号) されたもので、当時のタイトルは 「銀の夜の船」。その後忘れ去られ、2017年暮れに校正刷りが偶然発見され、2020年11月、「銀の夜」 と改題され光文社より刊行されたものの文庫版、ということ。

14年の時を経て、あらためて出版の打診を受け、読み返し、そして著者はこう思います。なおせない。なおすところがない - ではありません。ここに、私はもう入れない、というのが感覚としては一番近いものだったと。(詳しい説明は 「あとがき」 にあります )

つまりは、(角田ファンの多くの方が同じ思いでしょうが) 三十代の女性を描かせたらピカ一で、読むうち 「これはわたしだ。わたしのことが書いてある」 と思わずにはいられない、そんな話が書いてあります。

※彼女たちの現在状況は、三十歳半ばにしてすでに “人生に詰んだ“ 感に強く囚われています。そしてその原因の大元が、ほかでもない自分自身にあるということも十分に承知しています。三人は三様に、あれこれ試すのですが、十代の頃のようにはいきません。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆角田 光代
1967年神奈川県横浜市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。

作品 「空中庭園」「かなたの子」「対岸の彼女」「紙の月」「八日目の蝉」「笹の舟で海をわたる」「坂の途中の家」「ドラママチ」「愛がなんだ」「それもまたちいさな光」「源氏物語」他多数

関連記事

『よるのふくらみ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『よるのふくらみ』窪 美澄 新潮文庫 2016年10月1日発行 以下はすべてが解説からの抜粋です

記事を読む

『琥珀のまたたき』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『琥珀のまたたき』小川 洋子 講談社文庫 2018年12月14日第一刷 もう二度と

記事を読む

『白砂』(鏑木蓮)_書評という名の読書感想文

『白砂』鏑木 蓮 双葉文庫 2013年6月16日第一刷 苦労して働きながら予備校に通う、二十歳の高

記事を読む

『蜃気楼の犬』(呉勝浩)_書評という名の読書感想文

『蜃気楼の犬』呉 勝浩 講談社文庫 2018年5月15日第一刷 県警本部捜査一課の番場は、二回りも

記事を読む

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』(清武英利)_書評という名の読書感想文

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』清武 英利 文春文庫 2024年4月10日

記事を読む

『合理的にあり得ない』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文

『合理的にあり得ない』柚月 裕子 講談社文庫 2020年5月15日第1刷 上水流涼

記事を読む

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版  すべての油断が地獄の始まり

記事を読む

『銀河鉄道の父』(門井慶喜)_書評という名の読書感想文

『銀河鉄道の父』門井 慶喜 講談社 2017年9月12日第一刷 第158回直木賞受賞作。 明治2

記事を読む

『うちの父が運転をやめません』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『うちの父が運転をやめません』垣谷 美雨 角川文庫 2023年2月25日初版発行

記事を読む

『猿の見る夢』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『猿の見る夢』桐野 夏生 講談社 2016年8月8日第一刷 薄井正明、59歳。元大手銀行勤務で、出

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『エンド・オブ・ライフ』(佐々涼子)_書評という名の読書感想文

『エンド・オブ・ライフ』佐々 涼子 集英社文庫 2024年4月25日

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』(清武英利)_書評という名の読書感想文

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』清武 英利 

『メイド・イン京都』(藤岡陽子)_書評という名の読書感想文

『メイド・イン京都』藤岡 陽子 朝日文庫 2024年4月30日 第1

『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子 新潮社 2024年3月2

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑