『終点のあの子』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『終点のあの子』柚木 麻子 文春文庫 2025年6月30日 第9刷

世界的大ヒット!BUTTERで話題の著者 衝撃のデビュー作 映画化決定! 2026年公開予定 

プロテスタント系女子高の入学式。内部進学の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名カメラマン。風変わりな彼女が気になって仕方ないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、希代子にある変化が。繊細な描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作含む四篇。解説・瀧井朝世 (文春文庫)

(目次)
1 フォーゲットミー、ノットブルー ※オール讀物新人賞受賞作
2 甘夏
3 ふたりでいるのに無言で読書
4 オイスターベイビー

いかにも謎めいたタイトルに、単行本刊行時の写真を見ると、帯に 「女子高生の友情は、すぐに敵意にかわる」 などと書いてあります。なるほど、よくあるその手の話かと。というか、それなら何も女子高生に限ったことではありません。男子も然り、もちろん小学生や中学生にも無関係ではありません。

ひとつの集団 (クラス) の中にいくつかグループができると、同じグループに所属する者同士は自然と互いを “監視“ するようになります。リーダーの指揮のもと、同じ行動をしている間はいいのですが、何かの事情があってちょっとでも “違う“ 態度を見せると、たちまち、今までいたグループから排除される確率が非常に高くなります。一番の仲良しだったはずのふたりが、ある日突然反目し合う者同士に変わってしまう - 特に女子高生は (などと書いていいのでしょうか!? ) その傾向が強いようです。彼女らは、そんな状況に日々怯えながらも健気に生きています。

著者、柚木麻子さんは二〇〇八年、短編 「フォーゲットミー、ノットブルー」 で第八十八回オール讀物新人賞を受賞。それを第一話においた四編から成る連作集がこの 『終点のあの子』 である。世田谷区、小田急線沿いにあるプロテスタント系の私立女子校の、高校に進学したばかりの少女たちが登場する。

インタビューで聞いたところによると 「フォーゲットミー、ノットブルー」 を書く際にすでにクラスの子全員のキャラクターを設定していたそうで、受賞後、編集者から数編を足して単行本にしようと言われた時、「ならばその中から何人かを選んで書こうと思ったんです」 という。脇役に至るまでしっかりキャラが立っているのはそのためなのだ。短編一本書くのにもそこまで作りこんだとは恐れ入るが、ご本人は嬉々としてやっている様子。とにかく創作することが楽しくて仕方ないという印象を受けた。

第一話は、中学校から上がってきた内部生の希代子が主人公だ。高校から入学してきた外部生の朱里と出会い、有名写真家が父である自由奔放な彼女に惹かれるものの、やがてはその勝手さに戸惑い、さらには怒りに駆られて取り返しのつかない行動を取ってしまう。

第二話 「甘夏」 は朱里に親友の希代子をとられた奈津子が 「夏の間に、変身しよう」 と決意してアルバイトを始めたその顛末。第三話 「ふたりでいるのに無言で読書」 は彼女たちのクラスメイトでありリーダー格の華やかな美人、恭子さんと、地味グループの冴えない外見の女子、保田さんのひと夏の交流が描かれる。第四編 「オイスターベイビー」 は七年後の話だ。本書のタイトルの意味はこの最終話で分かる。(以下略/解説より)

※どうか最後まで読んでください。そして、謎めいたタイトルの意味を、あなたなりに考えてみてください。もしもあなたが悩み多き現役の女子高生ならなおさら、この本は、もしかするとあなたの (これからの長い人生の) バイブルになるかもしれません。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆柚木 麻子 1981年東京都世田谷区生まれ。立教大学文学部フランス文学科卒業。

作品 「本屋さんのダイアナ」「ランチのアッコちゃん」「伊藤くんA to E」「ナイルパーチの女子会」「その手をにぎりたい」「BUTTER」「あいにくあんたのためじゃない」他多数

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