『夏の陰』(岩井圭也)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/06
『夏の陰』(岩井圭也), 作家別(あ行), 岩井圭也, 書評(な行)
『夏の陰』岩井 圭也 角川文庫 2022年4月25日初版

出会ってはならなかった二人の対決の行方は - 。「罪」 と 「赦し」 の物語。
運送会社のドライバーとして働く倉内岳は、卓越した剣道の実力を持ちながら、公式戦にはほとんど出場したことがなかった。岳の父である浅寄准吾は、15年前、別居中だった岳と母の住むアパートに立てこもり、実の息子である岳を人質にとった。警察との膠着状態が続いた末、浅寄は機動隊のひとりを拳銃で射殺し、その後自殺する。世間から隠れるように生きる岳だったが、自分を剣道の道に引き入れてくれた恩人の柴田の願いを聞き入れ、一度だけ全日本剣道選手権の京都予選に出場することを決意する。予選会の日、いかんなく実力を発揮し決勝に進出した岳の前に、一人の男が立ちはだかる。辰野和馬、彼こそが岳の父親が撃ち殺した機動隊員の一人息子だった。「死」 を抱えて生きてきた者同士、宿命の戦いが始まる - 。(株式会社KADOKAWA)
岳の父・准吾は博打好きの酒飲みで、母子に対し、日常的に暴力をふるう人物でした。母はなすすべもなく無抵抗で、岳に向けた准吾の暴力も見て見ぬふりを通します。事件があったのは、そんな父から逃れ、母と二人で暮らし始めた京都・丹前でのことでした。
父・准吾は、自業自得の末に実の息子である岳を人質に、母子が暮らすアパートに立てこもり、挙句、機動隊の一人を (不法に手に入れた) 拳銃で射殺したのでした。
岳と同じに、もしもあなたが犯罪者の息子だったとしたらどうでしょう。ある日、思わぬうちにそんなことになったとしたら。あなたのその後の人生は、一体どうなってしまうのでしょう。
*
隙を見て脱出した岳を救出しようとして射殺されたのは、辰野泰文というベテランの機動隊員でした。妻と息子がおり、剣道は五段の腕前でした。彼だけが防弾ベストを着用していなかったのは、本来辰野は前線ではなく、後方に控える役目だったからです。
辰野の息子・和馬は、後年、京都府警に採用になり、在りし日の父と同様、日々剣道の鍛錬に励んでいます。抜擢されて特練生となり、やがて和馬は府警で一二を争うぐらいの実力の持ち主になります。
その剣道で、和馬にはどうしても勝ちたいと、念ずるように思う人物がいます。それが父・泰文を殺した准吾の息子、岳でした。
父を殺した男の息子が、今ものうのうと生きている。その事実が、和馬にはどうしても許すことができません。- 代わりに、お前が死ねばよかった、と。
和馬とはまるで動機が違うのですが、岳もまた剣道を生きる糧にしています。いずれ二人が出会うのは、避けられない運命でした。長い時を経て、和馬と岳は、遂にその日を迎えることになります。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆岩井 圭也
1987年大阪府生まれ。
北海道大学大学院農学院修了。
作品 「永遠についての証明」「プリズン・ドクター」「文身」「水よ踊れ」「この夜が明ければ」「竜血の山」「生者のポエトリー」他
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