『ビタミンF』(重松清)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/13
『ビタミンF』(重松清), 作家別(さ行), 書評(は行), 重松清
『ビタミンF』重松 清 新潮社 2000年8月20日発行
炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった。Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune・・・〈F〉で始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして埋め込んでいったつもりだ。そのうえで、結局はFiction、乱暴に意訳するなら「お話」の、その力をぼく(著者)は信じていた。(「BOOK」データベースより)
第124回の直木賞受賞作品です。と言いますか、「重松清の鉄板ネタです」と言った方が
通りがいいかも知れません。もう一つ、アマゾンからの解説を紹介しておきます。
38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学1年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた・・・。
一時の輝きを失い、人生の〈中途半端〉な時期にさしかかった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか - 」心の内で、こっそり呟きたくなる短編7編。
思えば、結婚した頃は本当に楽しかった。妻とは同い年で、中学校で知り合った仲です。高校も同じところ。さすがにその後は別々になりましたが、知り合った当初からの付き合いは途切れることなく、24歳で一緒になりました。
結婚した年に長男が生まれ、3年後には次男が生まれました。親バカですが、2人とも可愛かった。特に長男が生まれたときは、妻の実家の両親が大層喜んでくれました。妻は2人姉妹の長女で、義父や義母にとっては初孫だったのです。
私は田舎の長男坊でしたので、親とは同居です。妻が産休明けで仕事に復帰すると、昼間は両親に子どもを預け、夫婦共稼ぎの毎日です。平日は私の母親が夕飯の支度をしてくれるのですが、それでも家に帰れば帰ったで、慌ただしく騒々しい毎日でした。
働き出して2年目の私と4年目の妻 - 2人合わせても決して充分とは言えない給料でしたが、たまの休日にささやかな贅沢をするくらいのことはできます。子どものための諸々を選んでいるときの妻は本当に楽しそうで、遊び疲れた息子があたり前のように私に向かって両手を広げ、抱っこをせがむのが愛おしくてならなかったものです。
・・・・・・・・・・
子どもは、いつかは親から離れていく-これは当たり前のことです。いくつになってもべったりで、誰とも遊ばず、どこにも出かけないような子どもなら、それはそれで心配なのです。素気無くされたら寂しくて、頼られてばかりでも心配なのが親というものです。
あれよあれよという間に大きくなって、あれほどどこかへ連れて行けとせがんだくせに、ある頃を境にして、今度は「親とは一緒に行きたくない」「親と一緒のところを友だちや同級生には見られたくない」なんぞとほざきます。目も合わせずに、ほざくのです。
子どもが中学生になり、高校生になる時期というのは、親にとってもいささかややこしい時期です。中学生になれば、子どもはもはや単なる「子ども」ではなくなり、「独立した生きもの」になるべく、ものすごいスピードで「自己形成」を成し遂げていきます。
この時期になると、子どもが毎日学校でどうしているのか、部屋に閉じこもったまま何を考えているのか、何に感動し、何に対して怒っているのか・・・、親とは言いながら、実は何一つ分からなくなっています。
大抵の親はこの辺りで立往生して、途方に暮れます。子どもにとっては、おそらく一番親が鬱陶しく感じられる時期でもあります。
そんなときです。そんなときに限って、子どもが何やら事件を起こしてしまう。子どもの様子が普段と違うから、さり気に理由を聞き出してくれと妻から言われてしまう。父親なら父親らしい態度で、父親らしいことを言ってくれと迫られるのです。
さて、ちょうど年頃の息子や娘がいるあなた。あなたなら、どうします? 子どもに対してちゃんと親らしい態度で臨むことができますか? 「それはお前の問題だから、お前自身がしっかり考えなさい」などと、分かったような言葉で誤魔化してはいないでしょうか。
大丈夫です。たとえ、残業続きで口をきかない日が長くあったとしても、どこの誰と仲が良くて家では毎日何をしているのか、学校ではクラスメイトからどんな風に見られているのか、食事が済むと避けるように自分の部屋へ行く理由は何なのか。そんなことの、全部が分からなくてもいいのです。
親にしてみれば、如何なる時でも子どもは子どもです。拗ねたように見えても、子どもはあなたの言葉を待っています。借り物ではいけません。あなた自身の言葉を待っているのです。覚悟をしてください。親であるならば、いつになっても「子離れ」などできはしないのです。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆重松 清
1963年岡山県津山市生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。角川書店の編集者として勤務後、執筆活動に入る。
作品「ナイフ」「定年ゴジラ」「カカシの夏休み」「エイジ」「十字架」「流星ワゴン」「疾走」「カシオペアの丘で」「あすなろ三三七拍子」「星のかけら」「ゼツメツ少年」他多数
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