『鯖』(赤松利市)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/10 『鯖』(赤松利市), 作家別(あ行), 書評(さ行), 赤松利市

『鯖』赤松 利市 徳間書店 2018年7月31日初刷

読めば、地獄。狂気。そして、破滅。気持ち良い事が一切ありません。

でも、読みます。読まずにはいられなくなります。自分のかいた汗の臭いを嗅ぐように、ひり出した糞の臭いを慈しむように、人の醜さにどっぷりと浸りたいと思うときがあります。

※以下に紹介するほとんどが 〈帯〉 に書いてあります。

第1回大藪春彦新人賞受賞者、捨身の初長編
62歳、住所不定、無職。
平成最後の大型新人。鮮烈なるデビュー!

・圧倒的なリアリティー。新人にしてすでに熟練の味わいだ。たちまち物語にのめり込んだ。(今野敏)
・人の愚かさをじっくりとあぶりだす手腕に脱帽だ。遅咲きの新人、おそるべし! (馳星周)
・五臓六腑を抉る、超弩級のハードノワール誕生! 平成最後に現れた、荒ぶる才能に瞠目せよ。(宣伝担当)
・なんじゃ、こりゃあ! ハードパンチャーや! 超ド級の純文学バイオレンスを喰らえ! (営業担当)
・吐き気を催すほどのリアリティーと人間の業を描いた作品力は、近年読んだ中でピカイチ。この作品を多くの人と語り合いたい。(メディア関係者)
・平成最後の大型新人がたどり着いた境地。最後まで読んだ人に訪れる、黒い快感をお楽しみください。(担当編集)

- さて、内容はといいますと、鯖にあって、鯖に非ず。鯖に魅入られ、鯖をもって生きようとする人間たちに訪れる - それはもう「狂気」としか言いようのない世界の話。そこでの暮らしは色を失い、狂気が、もはや狂気ではないようにして語られてゆきます。

絶海の孤島に棲みついた荒くれ漁師たち。
逃れられない貧困と暴力が、日常を狂気に染める。

紀州雑賀崎を発祥の地とする一本釣り漁師船団。かつては「海の雑賀衆」との勇名を轟かせた彼らも、時代の波に呑まれ、終の棲家と定めたのは日本海に浮かぶ孤島だった。日銭を稼ぎ、場末の居酒屋で管を巻く、そんな彼らの生を照らす一筋の光明。しかしそれは破滅への序曲にすぎなかった - 。(徳間書店)

ネットで見つけてすぐに買いました。人は元来愚かだということ。どうしようもなく愚かだというのが胸に沁みてわかります。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆赤松 利市
1956年香川県生まれ。

作品 第一回大藪春彦新人賞を「藻屑蟹」にて受賞。本作が初長編となる。

関連記事

『三の隣は五号室』(長嶋有)_あるアパートの一室のあるある物語

『三の隣は五号室』長嶋 有 中公文庫 2019年12月25日初版 傷心のOLがいた

記事を読む

『悪い恋人』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『悪い恋人』井上 荒野 朝日文庫 2018年7月30日第一刷 恋人に 「わたしをさがさないで」

記事を読む

『今だけのあの子』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『今だけのあの子』芦沢 央 創元推理文庫 2018年7月13日6版 結婚おめでとう、メッセージカー

記事を読む

『朱色の化身』(塩田武士)_書評という名の読書感想文

『朱色の化身』塩田 武士 講談社文庫 2024年2月15日第1刷発行 事実が、真実でないとし

記事を読む

『センセイの鞄』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『センセイの鞄』川上 弘美 平凡社 2001年6月25日初版第一刷 ひとり通いの居酒屋で37歳

記事を読む

『R.S.ヴィラセリョール』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『R.S.ヴィラセリョール』乙川 優三郎 新潮社 2017年3月30日発行 レイ・市東・ヴィラセリ

記事を読む

『名前も呼べない』(伊藤朱里)_書評という名の読書感想文

『名前も呼べない』伊藤 朱里 ちくま文庫 2022年9月10日第1刷 「アンタ本当

記事を読む

『海馬の尻尾』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『海馬の尻尾』荻原 浩 光文社文庫 2020年8月20日初版 二度目の原発事故でど

記事を読む

『死にゆく者の祈り』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『死にゆく者の祈り』中山 七里 新潮文庫 2022年4月15日2刷 死刑執行直前か

記事を読む

『バック・ステージ』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『バック・ステージ』芦沢 央 角川文庫 2019年9月25日初版 「まさか、こうき

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』(清武英利)_書評という名の読書感想文

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』清武 英利 

『メイド・イン京都』(藤岡陽子)_書評という名の読書感想文

『メイド・イン京都』藤岡 陽子 朝日文庫 2024年4月30日 第1

『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子 新潮社 2024年3月2

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑