『今だけのあの子』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『今だけのあの子』芦沢 央 創元推理文庫 2018年7月13日6版


今だけのあの子 (創元推理文庫)

結婚おめでとう、メッセージカードを書く手が震える。大学時代、新婦とは一番の親友だった。けれど恵には招待状が届いていない。たった六人しかいない同じグループの女子の中で、どうして私だけ線引きされたのか。呼ばれてもいない結婚式に出席しようとする恵の運命、そして新婦の真意とは (「届かない招待状」)。進学、就職、結婚、出産、女性はライフステージが変わることでつき合う相手も変わる。「あの子は私の友達? 」 心の裡にふと芽生えた嫉妬や違和感が積み重なり友情は不信感へと形を変えた。めんどうで愛すべき女の友情に潜む秘密が明かされたとき、驚くべき真相と人間の素顔が浮かび上がる傑作ミステリ短篇集全五篇。(創元推理文庫)

「届かない招待状」
グループの中で一番仲の良かった彩音から、なぜか、恵にだけ結婚式の招待状が届かない。それでも、敢えて恵は、呼ばれてもいない式に出席しようと決意する。なぜなら、恵には招待してはもらえない、たったひとつの心当たりがあったのだ。

「帰らない理由」
交通事故で亡くなったくるみの部屋を訪れた中学の同級生 - 「恋人」の須山と、「親友」の桐子。母親が見てやってほしいというくるみの日記が気になって仕方ない須山に対し、桐子は、断じて読むべきではないと主張する。互いを牽制し、二人はいつまで経っても帰れない。

「答えない子ども」
娘をきちんと育てている自負を持つ直香は、娘の絵の教室で一緒になる「ソウくんのママ」のズボラさを軽蔑していた。ある日、ソウくん宅に寄り帰宅したあと、娘の絵がなくなっていることに気づく。直香には、(状況的に)ソウくんが盗ったとしか思えない・・・・・・・

「願わない少女」
物語の冒頭は奈央が悠子を部屋に監禁する場面 - 何が起きているのか、さっぱりわからない。そこから時間を遡り、二人の出会いが描かれる。孤独な奈央は、悠子と友達になりたいばかりに、ずっと友達でいようとするあまり、自分本位の嘘を付く。

「正しくない言葉」
老人ホームで暮らす澄江は、隣室の入居者・孝子のもとに家族が頻繁に訪れることを羨ましく思っていた。ところがある日、孝子に対しての不満を、嫁の麻実子が夫にぶつけているところを目撃する。麻実子の話を聞いた澄江は、ふと、あることに気づく・・・・・・・。

(以上は解説にある中から抜き出して「あらすじの最初」の部分だけを紹介しています。尚、これより後はネタバレになりますのであしからず)

この小説は、女性にとっての「その時々に知り合った」、同じ女性との「友情」を描いた物語です。「今だけのあの子」とは、人生における折々の場面での、今でしか知り合えない、かけがえのない「人」のことを指しています。

ミステリーと見せかけて、実は、凶悪な出来事や後味の悪さといったものは一切ありません。この人らしくなく、みごとハッピーエンドで幕を閉じます。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


今だけのあの子 (創元推理文庫)

◆芦沢 央
1984年東京都生まれ。
千葉大学文学部史学科卒業。

作品 「悪いものが、来ませんように」「罪の余白」「いつかの人質」「許されようとは思いません」など

関連記事

『十一月に死んだ悪魔』(愛川晶)_書評という名の読書感想文

『十一月に死んだ悪魔』愛川 晶 文春文庫 2016年11月10日第一刷 十一月に死んだ悪魔 (

記事を読む

『沈黙博物館』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『沈黙博物館』小川 洋子 ちくま文庫 2004年6月9日第一刷 沈黙博物館 (ちくま文庫)

記事を読む

『スペードの3』(朝井リョウ)_書評という名の読書感想文

『スペードの3』朝井 リョウ 講談社文庫 2017年4月14日第一刷 スペードの3 (講談社文

記事を読む

『溺レる』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『溺レる』川上 弘美 文芸春秋 1999年8月10日第一刷 溺レる (文春文庫) &nb

記事を読む

『罪の余白』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『罪の余白』芦沢 央 角川文庫 2015年4月25日初版 罪の余白 (角川文庫) どうしよう

記事を読む

『朝が来る』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『朝が来る』辻村 深月 文春文庫 2018年9月10日第一刷 朝が来る (文春文庫)

記事を読む

『つやのよる』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『つやのよる』井上 荒野 新潮文庫 2012年12月1日発行 つやのよる 男ぐるいの女がひと

記事を読む

『うつくしい人』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『うつくしい人』西 加奈子 幻冬舎文庫 2011年8月5日初版 うつくしい人 (幻冬舎文庫)

記事を読む

『あの女』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『あの女』真梨 幸子 幻冬舎文庫 2015年4月25日初版 あの女 (幻冬舎文庫) &n

記事を読む

『あのこは貴族』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『あのこは貴族』山内 マリコ 集英社文庫 2019年5月25日第1刷 あのこは貴族 (集英社

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『農ガール、農ライフ』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『農ガール、農ライフ』垣谷 美雨 祥伝社文庫 2019年5月20日初

『許されようとは思いません』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『許されようとは思いません』芦沢 央 新潮文庫 2019年6月1日発

『百花』(川村元気)_書評という名の読書感想文

『百花』川村 元気 文藝春秋 2019年5月15日第1刷 百花

『義弟 (おとうと)』(永井するみ)_書評という名の読書感想文

『義弟 (おとうと)』永井 するみ 集英社文庫 2019年5月25日

『夜に啼く鳥は』(千早茜)_書評という名の読書感想文

『夜に啼く鳥は』千早 茜 角川文庫 2019年5月25日初版

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑