『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村 深月 講談社 2009年9月14日第一刷

辻村深月がこの小説で伝えようとしたことは、娘と母親の間に潜在する絆と確執、それともうひとつ女同士の嫉妬や妬みを孕んだ捩れた関係性だと思います。

かつて幼なじみで30歳になる二人の女性が登場します。出目にはじまり性格や学業の出来不出来、容姿に至るまで正反対のような二人です。

都会でフリーライターとして活躍しながら幸せな結婚生活を手に入れた、みずほ。

地元の会社に契約社員として勤め実家で両親と暮らす、未婚のチエミ。

両親とは仲が良すぎるくらい親密だと思われていたチエミが、ある日母親を殺して失踪するという事件が起こります。

その事件が物語の起点で、みずほはチエミを見つけ出して事件の真相を明らかにしようと、かつて一緒に過ごした仲間や恩師を訪ねて回ります。

第一章は、主人公のみずほの視点で語られます。

みずほは関係者をつぶさに訪ね、徐々にチエミの居所や事件の真相に迫る手がかりを得て行きます。
同時に、互いの家を行き来した幼い日のことや一緒に遊んだ若い頃の様子を回想し、自分と母親との確執にも言及しています。

同級生や遊び仲間の他にも訪ねた先があります。

チエミの小学校時代の恩師、添田紀美子。
富山・高岡育愛病院へ「赤ちゃんポスト」の取材に出向いたりもしています。
(やや唐突に「赤ちゃんポスト」の話が登場しますが、後半でその理由が明らかになります。)

第二章では視点が変わり、チエミが自ら事の真相を語ります。殺害の原因が単なる憎悪ではなく、母親が娘を思うが故の偶発的な出来事だったことが明かされます。

小説の構成は、第一章が全体の4/5を占めています。

これは女性にしか書けない小説で、読み手が男性と女性とでは、読後感が全く違ったものになるように感じました。

私は男ですので、男目線での感想を正直に書いてみます。

女性には大変失礼ですが、目につくのは女性の嫌なところばかりです。できれば見たくないし聞きたくない、関わりたくないという心境です。

なかでも、主人公のみずほが私は苦手です。

辻村深月はわざと、みずほをあんなに上から目線で語る女性として書いているのでしょうか。

(もし全て承知の上で書いた作為的な個性だとすれば、みずほの鼻持ちならなさはみごとに成功しており、全面的にお詫びしなければなりません。)

田舎の学校では頭抜けて優秀で、周囲の子供とはどこかしら違い知的で垢抜けた自分を十分自覚しながらも、そういう自分を否定的に語ろうとする回想などはどう読んでも醜悪です。

朴訥で地味なチエミを最後まで友達だと主張するみずほですが、みずほが主張すればするほどに興醒めしてしまうのは私が男だからなのでしょうか。

みずほが剥がそうとしても剥がれない選民意識を棚上げして語る友情は、残念ながら男の私には理解できない感覚です。

チエミの行方を捜すなかに、かつての遊び仲間のまとめ役で飯島政美という女性がいます。彼女の歯に衣を着せぬ物言いだけが、せめてもの救いになりました。

この本を読んでみてください係数 80/100


◆辻村 深月

1980年山梨県笛吹市生まれ。

千葉大学教育学部卒業。千葉大学に進学したのは、ミステリ研究会があったことが理由らしい。

綾辻行人の大ファンで、ペンネームの「辻」は綾辻から取ったもの。

作品 「冷たい校舎の時は止まる」「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」「名前探しの放課後」「ツナグ」「鍵のない夢を見る」他多数

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