『ナイルパーチの女子会』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『ナイルパーチの女子会』柚木 麻子 文春文庫 2018年2月10日第一刷


ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

彼女の友情が私を食べ尽くす - 女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。第28回山本周五郎賞&第3回高校生直木賞受賞作。

丸の内の大手商社に勤めるやり手のキャリアウーマン・志村栄利子(30歳)。実家から早朝出勤をし、日々ハードな仕事に勤しむ彼女の密やかな楽しみは、同い年の人気主婦ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』を読むこと。決して焦らない「おひょう」独持の価値観と切り口で記される文章に、栄利子は癒されるのだ。その「おひょう」こと丸尾翔子は、スーパーの店長の夫と二人で気ままに暮らしているが、実は実家を捨て出て行った母親と、実家で傲慢なほど「自分からは何もしない」でいる父親について深い屈託を抱えていた。
偶然にも近所に住んでいた栄利子と翔子はある日カフェで出会う。同性の友達がいないという共通のコンプレックスもあって、二人は急速に親しくなってゆく。ブロガーと愛読者・・・・・・・そこから理想の友人関係が始まるように互いに思えたが、翔子が数日間ブログの更新をしなかったことが原因で、二人の関係は思わぬ方向へ進んでゆく・・・・・・・。(文藝春秋BOOKS/作品紹介)

※あとに、「担当編集者より」として以下のコメントがあります。

淡泊な味でさまざまな料理に使われる食用魚「ナイルパーチ」は、実は他の種を食べ尽くし、生態系を破壊するほどの凶暴性を持つ。偶然出会った二人の女性のどちらかが、もしナイルパーチのような凶暴な友情を持っていたとしたら・・・・・・・。その凶暴性を自分で抑えることができないとしたら・・・・・・・。友達がいることのありがたさと恐怖、そのことを徹底的に描きます。

随分と評判を取った作品。3年遅れでやっと読みました。

深い。

思う以上に深い内容に、なるほどこれが「高校生が選ぶ」直木賞だというのがわかります。大の大人の、30歳の女性の話ばかりが書いてあるわけではありません。人なら誰もが求め、もがき苦しむことが書いてあります。

(誰かに)構ってもらいたい。共感してほしい。この気持ちを分かち合いたい。できれば他の誰よりも親友に。そう呼べる相手に。それさえ叶えば全てが報われる。生きているという、意味になる - 。

昔々。あなたは「そのこと」でひどく悩みはしなかったでしょうか? 悩んだ末に相手に対し何かを過剰に求めたり、求め過ぎて相手が負担に感じ、逆に関係が悪化したりはしなかったでしょうか?

友情とは何なのでしょう。どんな関係を言うのでしょう。

何の打算も無しに全てを受け入れ、文句なく赦し合うこと。たとえ生きる方便は違えども、互いを認め敬い合うこと。言うべきことは言い、無闇に立ち入らない。適度に距離を置き、無理が無い。空気のように、しかし確かにいることに何より安心し、等々・・・・・・・

あなたには、そんな「友」がいますか? いないままの人生を、送ってはいないでしょうか。この小説にはそんなことが書いてあります。

もう一度言います。家族でも、恋人同士でも、職場の仲間でもない、「親友」と呼んで憚らない、そんな人物があなたの傍にはいるのでしょうか。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

◆柚木 麻子
1981年東京都世田谷区生まれ。
立教大学文学部フランス文学科卒業。

作品 「終点のあの子」「本屋さんのダイアナ」「ランチのアッコちゃん」「伊藤くんA to E」「その手をにぎりたい」他多数

関連記事

『逢魔』(唯川恵)_書評という名の読書感想文

『逢魔』唯川 恵 新潮文庫 2017年6月1日発行 逢魔 (新潮文庫) 抱かれたい。触られた

記事を読む

『ルビンの壺が割れた』(宿野かほる)_書評という名の読書感想文

『ルビンの壺が割れた』宿野 かほる 新潮社 2017年8月20日発行 ルビンの壺が割れた こ

記事を読む

『選んだ孤独はよい孤独』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『選んだ孤独はよい孤独』山内 マリコ 河出書房新社 2018年5月30日初版 選んだ孤独はよい

記事を読む

『ノボさん/小説 正岡子規と夏目漱石』(伊集院静)_書評という名の読書感想文

『ノボさん/小説 正岡子規と夏目漱石』(上巻)伊集院 静 講談社文庫 2016年1月15日第一刷

記事を読む

『天使が怪獣になる前に』(山田悠介)_書評という名の読書感想文

『天使が怪獣になる前に』山田 悠介 文芸社文庫 2015年2月15日初版 【文庫】 天使が怪獣

記事を読む

『夜の木の下で』(湯本香樹実)_書評という名の読書感想文

『夜の木の下で』湯本 香樹実 新潮文庫 2017年11月1日発行 夜の木の下で (新潮文庫)

記事を読む

『ルパンの消息』(横山秀夫)_書評という名の読書感想文

『ルパンの消息』横山 秀夫 光文社文庫 2009年4月20日初版 ルパンの消息 (光文社文庫)

記事を読む

『にぎやかな湾に背負われた船』(小野正嗣)_書評という名の読書感想文

『にぎやかな湾に背負われた船』小野 正嗣 朝日新聞社 2002年7月1日第一刷 にぎやかな湾に

記事を読む

『二度のお別れ』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『二度のお別れ』黒川 博行 創元推理文庫 2003年9月26日初版 二度のお別れ (創元推理文

記事を読む

『ギッちょん』(山下澄人)_書評という名の読書感想文

『ギッちょん』山下 澄人 文春文庫 2017年4月10日第一刷 ギッちょん (文春文庫) 四

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『選んだ孤独はよい孤独』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『選んだ孤独はよい孤独』山内 マリコ 河出書房新社 2018年5月30

『きみのためのバラ』(池澤夏樹)_書評という名の読書感想文

『きみのためのバラ』池澤 夏樹 新潮文庫 2010年9月1日発行

『その話は今日はやめておきましょう』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『その話は今日はやめておきましょう』井上 荒野 毎日新聞出版 2018

『感染領域』(くろきすがや)_書評という名の読書感想文

『感染領域』くろき すがや 宝島社文庫 2018年2月20日第一刷

『連続殺人鬼カエル男』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『連続殺人鬼カエル男』中山 七里 宝島社 2011年2月18日第一刷

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑