『路上のX』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『路上のX』桐野 夏生 朝日新聞出版 2018年2月28日第一刷


路上のX

こんなに叫んでも、私たちの声は届かないの?

幸せな日常を断ち切られた女子高生たち。ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネス。かけがえのない魂を傷めながらも、三人の少女はしなやかに酷薄な大人たちの世界を踏み越えていく。最悪な現実と格闘する女子高生たちの肉声を物語に結実させた著者の新たな代表作。朝日新聞出版10周年記念作品。(帯文より)

桐野夏生の新刊。

ネグレクトにより路上生活を余儀なくされた三人の女子高生たち。(パッと見)如何にもそれらしくあるものの、親を捨て家を出て、行くあてはなく、寝る場所もない。制服姿ではあるものの、もはやそれは(欺くための)見せかけにしか過ぎません。

真由とリオナ - リオナの本名は、涙華。その如何にもな名前が厭で涙華は「リオナ」と名乗っています。もう一人が、ミト。ミトはリオナの友達で、本名は聡美。二文字をとり、自分のことを「ミト」と呼んでいます。

思いもしない妊娠。そして流産。義父から受けた辱しめ。揚げ句の果てのJKビジネス。容赦ない暴力。大人の男の見え透いた下心。仕組まれた凌辱と両親の裏切り。帰る家はなく、居る場所もない。仕方なく彼女らは夜の渋谷へ行き、いっとき生きる方便を探ります。

女子高生に声をかけてくるのは、高校生が御しやすく、安い相手だと見くびっている男がほとんどだ。彼らは、女子高生が小遣い欲しさに、男から声をかけられるのを待っている存在だと低く見ているのだ。(「第一章 真由」より)

この物語で最も切ないのは、reincarnaition - リインカネーション、ということ。転生、再生、生まれ変わり、再来、を意味します。つまり、

親が親なら、子も子 - 子どもは親を選べない。もしも生まれてきた家が違ったら、育てられた両親が別の人であったなら、こうはならなかったのにと - そんな思いを捨てられず、孤独に喘ぐ彼女らは更に絆を強くします。顧みようとはせず、より遠くへ行こうとします。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


路上のX

◆桐野 夏生
1951年石川県金沢市生まれ。
成蹊大学法学部卒業。

作品 「OUT」「グロテスク」「錆びる心」「東京島」「IN」「夜また夜の深い夜」「奴隷小説」「バラカ」「猿の見る夢」「夜の谷を行く」「デンジャラス」他多数

関連記事

『リバース&リバース』(奥田亜希子)_書評という名の読書感想文

『リバース&リバース』奥田 亜希子 新潮文庫 2021年4月1日発行 リバース&リバース(新

記事を読む

『奴隷小説』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『奴隷小説』桐野 夏生 文芸春秋 2015年1月30日第一刷 奴隷小説  

記事を読む

『すみなれたからだで』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『すみなれたからだで』窪 美澄 河出文庫 2020年7月20日初版 すみなれたからだで (河

記事を読む

『物語が、始まる』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『物語が、始まる』川上 弘美 中公文庫 2012年4月20日9刷 物語が、始まる (中公文庫

記事を読む

『やめるときも、すこやかなるときも』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『やめるときも、すこやかなるときも』窪 美澄 集英社文庫 2019年11月25日第1刷 やめ

記事を読む

『連続殺人鬼カエル男』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『連続殺人鬼カエル男』中山 七里 宝島社 2011年2月18日第一刷 連続殺人鬼 カエル男 (

記事を読む

『知らない女が僕の部屋で死んでいた』(草凪優)_書評という名の読書感想文

『知らない女が僕の部屋で死んでいた』草凪 優 実業之日本社文庫 2020年6月15日初版 知

記事を読む

『ねこまたのおばばと物の怪たち』(香月日輪)_書評という名の読書感想文

『ねこまたのおばばと物の怪たち』香月 日輪 角川文庫 2014年12月25日初版 ねこまたのお

記事を読む

『学校の青空』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『学校の青空』角田 光代 河出文庫 2018年2月20日新装新版初版 学校の青空 (河出文庫)

記事を読む

『ラメルノエリキサ』(渡辺優)_書評という名の読書感想文

『ラメルノエリキサ』渡辺 優 集英社文庫 2018年2月25日第一刷 ラメルノエリキサ (集英

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『連鎖』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『連鎖』黒川 博行 中央公論新社 2022年11月25日初版発行

『夜に星を放つ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『夜に星を放つ』窪 美澄 文藝春秋 2022年7月30日第2刷発行

『生命式』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『生命式』村田 沙耶香 河出文庫 2022年5月20日初版発行

『中尉』(古処誠二)_書評という名の読書感想文

『中尉』古処 誠二 角川文庫 2017年7月25日初版発行

『犬のかたちをしているもの』(高瀬隼子)_書評という名の読書感想文

『犬のかたちをしているもの』高瀬 隼子 集英社文庫 2022年9月1

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑