『きのうの影踏み』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『きのうの影踏み』辻村 深月 角川文庫 2018年8月25日初版


きのうの影踏み (角川文庫)

雨が降る帰り道、後輩の女の子と歩いていて、傘を差した女性とすれ違う。もう遅い時間で、駅まで急いでいたから、普段だったらまず気に留めなかった。

ビニール傘を差した女性の顔を覗きこむ。
透明なビニール傘越しに見る彼女の顔の - 下半分が、なかった。

いつか、真っ黒い、焼け爛れた車を見た時のことを思い出す。下半分がむき出しになって、暗い腐臭のようなものを感じたあの車。あれと、似ていると思った。顎がない状態、と言えばいいのだろうか。鼻の下から先が誰かにむしりとられたように真っ赤な穴になっている。その下から、ほっそりとした首が何ということもなく続いていた。ともかくそれは 「ない」 としか言いようのない状態だった。(後略)

横を歩く後輩の女の子から、「どうしたんですか」 と聞かれ、オレは咄嗟に 「今の見た? 」 と聞いた。彼女は怪訝そうな顔をする。その表情で、彼女は何も気づかなかったのだと悟った。彼女もまた、後ろを振り返る。女性の姿はもう見えなくなっていた。

確かに、こんな時間にどうしたんだろうって気にはなりましたけど
いや、今の女の人、顔が・・・・・・・
え?

おかしなヤツと思われるかもしれない。一瞬言葉を出すのを怯んだ隙をつくように、彼女が

いや、子どもですよね」    と言う。

※13あるうちの5つ目の話 「スィッチ」からの一場面。こんな話(ばかり)が書いてあります。

小学生のころにはやった嫌いな人を消せるおまじない、電車の中であの女の子に出会ってから次々と奇妙な現象が始まり・・・・・・・。虫だと思って殺したら虫ではなかった!? 幼い息子が繰り返し口にする謎のことば「だまだまマーク」って? 横断歩道で事故が続くのはそこにいる女の子の霊が原因? 日常に忍び寄る少しの違和感や背筋の凍る恐怖譚から、温かさが残る救済の物語まで、著者の “怖くて好きなもの” を詰め込んだ多彩な魂の怪異集。(角川文庫)

怖いですよぉ~、一人きりでは決して読まないでください。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


きのうの影踏み (角川文庫)

◆辻村 深月
1980年山梨県笛吹市生まれ。
千葉大学教育学部卒業。

作品 「冷たい校舎の時は止まる」「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」「太陽の坐る場所」「鍵のない夢を見る」「ツナグ」「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」「かがみの孤城」他多数

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