『護られなかった者たちへ』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『護られなかった者たちへ』中山 七里 宝島社文庫 2021年8月4日第1刷

護られなかった者たちへ (宝島社文庫)

連続餓死殺人事件の裏に隠された、あまりにも痛切な真実。号泣必至の社会派ミステリー!

仙台市で他殺体が発見された。拘束したまま飢え苦しませ、餓死させるという残酷な殺害方法から、担当刑事の笘篠は怨恨の線で捜査する。しかし被害者は人から恨まれるとは思えない聖人のような人物で、容疑者は一向に浮かばずにいた。捜査が暗礁に乗り上げるなか、二体目の餓死死体が発見される。一方、事件の数日前に出所した模範囚の利根は、過去に起きたある出来事の関係者を探っていた - 。(宝島社文庫)

舞台は仙台。市の福祉保健事務所職員と現役県議が、全身を縛られたまま放置され、餓死させられるという驚愕の連続殺人事件を軸に、中山七里著 『護られなかった者たちへ』 は展開する。

物語は宮城県警捜査一課刑事・笘篠の目線で進み、今一人、話者を務めるのが元模範囚・利根勝久だ。8年前、彼は知人の生活保護申請を巡って塩釜の福祉職員らと口論になり、相手を殴った上に、庁舎に火を放つ。幸いボヤで済んだが、懲役10年の実刑判決を受け、8年で刑期を終えていた。

最初の犠牲者・三雲忠勝が消息を絶ったのは利根の出所後。笘篠は第二の犠牲者・城之内猛留と三雲の接点から利根に辿り着くが、塩釜署では捜査資料が津波で既に散逸、公判でも利根の動機は曖昧にされていた。と、ここまで粗筋を詳しく紹介できるのも、本書が単に犯人探しを目的としたミステリーではないからだ。どんでん返しの名手は言う。

事件の犯人はわかっても、物語の犯人は読み終えた後も誰にもわからない、現時点での最高傑作です! 」 と。(WEBサイト:NEWSポストセブン 【著者に訊け】からの抜粋。但:一部修正有)

大震災後の仙台で起きた連続 “餓死” 殺人事件。三島と城之内は、何故、あれほどまでに非道なやり口で殺害されなければならなかったのでしょう? 犯人にとって、その理由は、動機は、何だったのでしょう?

事件解決の糸口は、中々に見えてきません。そこへ現れたのが、利根勝久でした。状況証拠を鑑みれば、利根以外に犯人は考えられません。しかし、利根がやったという物的証拠がありません。それより何より、何が利根をそこまで非道にさせたのか、その背景が見えてきません。

※繰り返しになりますが、これは単に犯人が捕まって終わりの話ではありません。著者の言う通り、読むうち段々と犯人が誰かがわからなくなっていきます。

というか、それとは別に、もっと罪深く、あまりな理不尽に気付かされることになります。そのやりきれなさに、無力さに、歯噛みするに違いありません。

三島や城之内が、死なねばならなかった本当の理由。事の真実。利根が得たつかの間の幸福と引き換えにした、一世一代の賭けとは? その背景にいる、人、人、人・・・・・・・。

号泣必至の物語。ここから先は、ぜひご自身で!

【追伸:この人にこそ読んでほしいと思う一冊】
今世間では、生活保護受給者に向けてDaiGoがした発言が大きな話題となっています。非難が集中し、慌てて謝罪したその謝罪にまた非難が重なって二進も三進もいかないような。自業自得とはいえ、あまりに傲慢な、かつ不用意な発言だったと思います。

但し、彼の本音をいえば、あれが全き正論だったのでしょう。慌ててした謝罪が謝罪のための謝罪に過ぎず、それを世間が見破ったとしても、おそらく彼の心は変わらないのだろうと。どんなに叩かれようと、世間を見下したまま、彼は死ぬまで生き切るのだろうと。彼は存外、小心であるらしい。

この本を読んでみてください係数 85/100

護られなかった者たちへ (宝島社文庫)

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「連続殺人鬼カエル男」「セイレーンの懺悔」他多数

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