『百舌の叫ぶ夜』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2015/09/24 『百舌の叫ぶ夜』(逢坂剛), 作家別(あ行), 書評(ま行), 逢坂剛

『百舌の叫ぶ夜』 逢坂 剛 集英社 1986年2月25日第一刷


百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

 

逢坂剛が好きである。

 

「百舌シリーズ」を発見したときは衝撃でした。テレビの「MOZU」ではありませんよ。

TBSの木曜ドラマ劇場を観て原作を読んだ人、きっと多いのでしょうね。Season2もまた始まりますしね。


MOZU Season1 ~百舌の叫ぶ夜~ DVD-BOX

原作は実に今から28年も前のものです。私の手元にある本は初版の翌年2月に発行された第八刷のものです。歳が判ろうかというものです。

本の装丁、タイトル、書き出しの数行を読んですぐにレジに並んだことを昨日のことのように憶えています。

緻密な構成で、厚みのある逢坂剛のサスペンスは大好物です。

当然ですが、物語には必ず読み手を魅了するヒーローが登場します。ここでは、プロの殺し屋「百舌」..そしてもう一人、ハードな公安刑事倉木尚武です。

「百舌」..とは、殺戮の本能を持ち速贄(はやにえ)の儀式に酔う魔性の鳥、忌まわしい暗示を予感させるみごとなネーミングではないですか。

「倉木尚武」..は、高村薫の「合田雄一郎」、大沢在昌の「鮫島」と並ぶ私の警察小説ヒーローベスト3です。知性、冷徹、悲運、全て満たして余りあります。

 

物語は重層して進行するので後を追うのが少ししんどいかも知れません。時系列をしっかり頭に入れて読む必要があります。

明星美希、新谷和彦、倉木尚武、そしてもう一人捜査一課警部補として事件に絡む大杉良太がこの物語の主要な人物です。

警視庁公安部公安第3課巡査部長・明星美希が密かに暴力団系豊明興業の殺人請負人新谷和彦を尾行している目の前で爆発は起きました。

フリーライターの筧俊三が持っていたボストンバッグの中で小型爆弾が暴発したものでした。

この時、明星はそうとは知らず新谷を尾行していたのですが、実は新谷は豊明興業から筧を殺す仕事を請け負っており機会を窺っていたのでした。

爆発による死者は2名。一人は筧、あとの一人は近くにいた主婦でしたが、それが公安特務第一課倉木尚武の妻珠枝であることが判明します。

・・・・・・・・・・・

東京新宿で発生した爆発事件は、近々来日する南米のある国の大統領暗殺を暗示するものでした。

新谷和彦は標的の爆死で仕事を果たすのですが、その後豊明興業の手によって能登半島で崖から突き落とされ殺されそうになります。

倉木は珠枝の死が腑に落ちず、上層部の制止を無視して独自に調査を開始します。

捜査一課の大杉良太は、爆発事件の捜査をするなかで警察内部に陰謀の匂いを嗅ぎつけます。

明星美希は、直属の課長を飛び越えて警視正の津城からの特命である捜査を続けています。倉木や大杉は、明星が表に出ない何かを隠していることに気付いて問い詰めていきます。

大統領訪日用に作成された警備計画書とある写真の争奪戦の果てに、百舌は倉木の前に姿を現します。

公安警察の大いなる野望とは、百舌の正体とその屈折した過去とは、、、

・・・・・・・・・・・

爆発事件が物語の契機に違いないのですが、ストレートに話は進みません。行きつ戻りつを繰り返します。

語る視点や人物が次々と変化するので戸惑わないようにしてください。分かりにくいという批判もありますが、それだけ内容が濃く真相に辿り着くための手順が必要なのです。

シリーズの最初の作品です。ここで諦めたらほんとにもったいない。ぜひ、読了してください。

 

この本を読んでみてください係数 95/100

 


百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

◆逢坂 剛

1943年東京都文京区生まれ。

中央大学法学部法律学科卒業。卒業後は、博報堂に勤務しながら執筆活動。約17年後に退職、専業作家となる。

サビーカスのフラメンコギターのレコードを聴いて衝撃を受け、後にスペインに興味を持つようになる。スペインを題材にした小説も数多い。

作品 「カディスの赤い星」「屠殺者よグラナダに死ね」「百舌シリーズ」「岡坂伸策シリーズ」「御茶ノ水警察署シリーズ」「イベリアシリーズ」「禿鷹シリーズ」他多数

関連記事

『ロスジェネの逆襲』(池井戸潤)_書評という名の読書感想文

『ロスジェネの逆襲』 池井戸 潤  ダイヤモンド社 2012年6月28日第一刷 @1,500

記事を読む

『悪いものが、来ませんように』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『悪いものが、来ませんように』芦沢 央 角川文庫 2016年8月25日発行 悪いものが、来ませ

記事を読む

『ifの悲劇』(浦賀和宏)_書評という名の読書感想文

『ifの悲劇』浦賀 和宏 角川文庫 2017年4月25日初版 ifの悲劇 (角川文庫) 小説

記事を読む

『森に眠る魚』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『森に眠る魚』角田 光代 双葉文庫 2011年11月13日第一刷 森に眠る魚 (双葉文庫)

記事を読む

『元職員』(吉田修一)_書評という名の読書感想文

『元職員』吉田 修一 講談社 2008年11月1日初版 元職員 (100周年書き下ろし)

記事を読む

『マザコン』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『マザコン』角田 光代 集英社文庫 2010年11月25日第一刷 マザコン (集英社文庫)

記事を読む

『森の家』(千早茜)_書評という名の読書感想文

『森の家』千早 茜 講談社文庫 2015年12月15日第一刷 森の家 (講談社文庫) 自由の

記事を読む

『赤へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『赤へ』井上 荒野 祥伝社 2016年6月20日初版 赤へ ふいに思い知る。すぐそこにあるこ

記事を読む

『ある一日』(いしいしんじ)_書評という名の読書感想文

『ある一日』いしい しんじ 新潮文庫 2014年8月1日発行 ある一日  

記事を読む

『不愉快な本の続編』(絲山秋子)_書評という名の読書感想文

『不愉快な本の続編』絲山 秋子 新潮文庫 2015年6月1日発行 不愉快な本の続編 &n

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『オールド・テロリスト』(村上龍)_書評という名の読書感想文

『オールド・テロリスト』村上 龍 文春文庫 2018年1月10日第一刷

『月の満ち欠け』(佐藤正午)_書評という名の読書感想文

『月の満ち欠け』佐藤 正午 岩波書店 2017年4月5日第一刷

『赤と白』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『赤と白』櫛木 理宇 集英社文庫 2015年12月25日第一刷

『侵蝕 壊される家族の記録』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『侵蝕 壊される家族の記録』櫛木 理宇 角川ホラー文庫 2016年6月

『ニシノユキヒコの恋と冒険』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上 弘美 新潮文庫 2006年8月1日発

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑