『やさしい猫』(中島京子)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/05 『やさしい猫』(中島京子), 中島京子, 作家別(な行), 書評(や行)

『やさしい猫』中島 京子 中央公論新社 2023年5月30日8版発行

吉川英治文学賞 貧困ジャーナリズム特別賞 受賞作品

当たり前の幸せが突然奪われたのは、彼がスリランカ出身の外国人だったから。日本のを描く家族小説

シングルマザーの保育士ミユキさんが心ひかれたのは、八歳年下の自動車整備士クマさん。出会って、好きになって、この人とずっと一緒にいたいと願う。当たり前の幸せが奪われたのは、彼がスリランカ出身の外国人だったから。大きな事件に見舞われた小さな家族を暖かく見守るように描く長編小説。(中央公論新社)

強く、優しい物語。普通に暮らす多くの日本人には縁遠く、生涯関わりがないであろうことが綴られています。それは保育士として働くシングルマザーのミユキさんからしても同様で、出会った当初、まさかスリランカからやってきた男性を、これほどまでに好きになるとは思いもしないことでした。

出会ったのは、ミユキさんが震災ボランティアで東北を訪れたときでした。そこで彼女はスリランカ人のクマさんと出会い、何事もなく終わるのですが、その一年後、二人は東京で運命的な再会を果たします。その再会が、二人のその後の人生を決定づけることになります。

互いに心惹かれた二人は次第に次第に距離を縮め、クマさんはミユキさんの小学生の娘・マヤちゃんとも打ち解け、やがて三人は一緒に暮らすようになります。そしてマヤちゃんが中学生になり、ようやくクマさんはミユキさんに対し、正式なプロポーズをしたのでした。

問題は (=物語の核心は)、ここからです。日本で暮らす日本人のミユキさんと、志しあってはるか遠くの国からやって来て、好きな人と巡り合い、家族としてこの先ずっと日本で暮らしたいと願うスリランカ出身のクマさんの結婚は、二人が思ったほどには簡単ではありません。というか、予想もしない障害の連続で、著しく困難を極めます。

ミユキさんと入籍し、「永住審査」 を受ければそれですべてが解決すると考えたクマさん。ところが、その時点ですでにクマさんは 「オーバーステイ」 しており、永住どころか 「入管に収容され」、すぐにも 「母国へ帰れ」 と命じられてしまいます。偽造結婚を疑われ、収容は思いのほか長期にわたります。

【こちらもどうぞ】 NHK土曜ドラマやさしい猫全五話 2023年6月24日(土) スタート 現在放送中 毎週土曜よる10時~10時49分 出演 優香 伊藤蒼 オミラ・ジャクティ 滝藤賢一 吉岡秀隆

この本を読んでみてください係数 85/100

◆中島 京子
1964年東京都生まれ。
東京女子大学文理学部史学科卒業。

作品 「FUTON」「イトウの恋」「均ちゃんの失踪」「冠・婚・葬・祭」「小さいおうち」「眺望絶佳」「樽とタタン」「妻が椎茸だったころ」「長いお別れ」「夢見る帝国図書館」他多数

関連記事

『さよならドビュッシー』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『さよならドビュッシー』中山 七里 宝島社 2011年1月26日第一刷 ピアニストからも絶賛!

記事を読む

『夢に抱かれて見る闇は』(岡部えつ)_書評という名の読書感想文

『夢に抱かれて見る闇は』岡部 えつ 角川ホラー文庫 2018年5月25日初版 男を初めて部屋に上げ

記事を読む

『眺望絶佳』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『眺望絶佳』中島 京子 角川文庫 2015年1月25日初版 藤野可織が書いている解説に、とて

記事を読む

『坊さんのくるぶし/鎌倉三光寺の諸行無常な日常』(成田名璃子)_書評という名の読書感想文

『坊さんのくるぶし/鎌倉三光寺の諸行無常な日常』成田 名璃子 幻冬舎文庫 2019年2月10日初版

記事を読む

『秋山善吉工務店』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『秋山善吉工務店』中山 七里 光文社文庫 2019年8月20日初版 父・秋山史親を

記事を読む

『揺籠のアディポクル』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『揺籠のアディポクル』市川 憂人 講談社文庫 2024年3月15日 第1刷発行 孤立した無菌

記事を読む

『夜のピクニック』(恩田陸)_書評という名の読書感想文

『夜のピクニック』恩田 陸 新潮文庫 2006年9月5日発行 高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」

記事を読む

『八月六日上々天氣』(長野まゆみ)_書評という名の読書感想文

『八月六日上々天氣』長野 まゆみ 河出文庫 2011年7月10日初版 昭和20年8月6日、広島は雲

記事を読む

『去年の冬、きみと別れ』(中村文則)_書評という名の読書感想文

『去年の冬、きみと別れ』中村 文則 幻冬舎文庫 2016年4月25日初版 ライターの「僕」は、ある

記事を読む

『119 (イチイチキュウ)』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『119 (イチイチキュウ)』長岡 弘樹 文春文庫 2022年3月10日第1刷 ベ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『絞め殺しの樹』(河﨑秋子)_書評という名の読書感想文

『絞め殺しの樹』 河﨑 秋子 小学館文庫 2024年4月10日 初版

『つまらない住宅地のすべての家』(津村記久子)_書評という名の読書感想文

『つまらない住宅地のすべての家』津村 記久子 双葉文庫 2024年4

『悪逆』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『悪逆』黒川 博行 朝日新聞出版 2023年10月30日 第1刷発行

『エンド・オブ・ライフ』(佐々涼子)_書評という名の読書感想文

『エンド・オブ・ライフ』佐々 涼子 集英社文庫 2024年4月25日

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』(清武英利)_書評という名の読書感想文

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』清武 英利 

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑