『天使のにもつ』(いとうみく)_書評という名の読書感想文
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『天使のにもつ』(いとうみく), いとうみく, 作家別(あ行), 書評(た行)
『天使のにもつ』いとう みく 双葉文庫 2025年3月15日 第1刷発行
20年野間児童文芸賞 22年河合隼雄物語賞 23年坪田譲治文学賞 近年、続々受賞の児童文学作家が贈る、大人と子どもで共有したい物語

中二のオレ。職場体験で選んだのは、保育園。「子どもとあそんでいればいい」 はずだったのに!?
中学二年生の風汰が、授業の一環である職場体験として選んだ先は保育園。「子どもとあそんでいればいいってこと? 」 と安易な気持ちで選んだ体験先だったけれど、いざ始まってみればもちろん楽な仕事のはずはなく、なかには親との関係が気がかりな園児もいて・・・・・・・。保育士や園児たちと過ごした5日間、風汰の目や心がとらえたこととは? 青少年読書感想文全国コンクール課題図書 (2020年中学校の部) 選出作。等身大の十代読者をはじめ、大人にも読んでほしい物語。解説・椰月美智子 (双葉文庫)
時々こんなのを読みたいと思うことがあります。六十歳を過ぎた今でもです。今だから、かもしれません。はるか昔のあの日を思い、ひとり赤面したりして。
本書は、中学二年生の風汰が、授業の一環で五日間の職場体験場所を決めるところからはじまる。風汰が選んだのは、エンジェル保育園。その小ささにびっくりし、用務員だと思っていたおばちゃんは園長先生だった。
その日、風汰は段ボール箱のなかに捨てられていた子犬を見つける。そのままにしておけず、団地の駐輪場の小屋で、同じ団地のまーくんセンパイの協力のもと、子犬をかくまうことにする。
エンジェル保育園で、風汰は四歳児クラス、きりん組の担当となり、園児や担任の先生たちと一緒に五日間を過ごす。
風汰は、きりん組にしおんというちょっと気になる男の子を見つける。しおんは他の子たちと違って、叩いてきたり、いきなり飛び乗ってきたり、カンチョーなんてこともしないで、目が合うと恥ずかしそうにそっと手を握ってきたりする。
物語は、風汰の保育園での職場体験と、小屋での子犬とのふれあい、しおんとの関わりの三筋で進んでいく。
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五日間の職場体験での風汰の成長が小説のテーマのように思えるが、特筆すべき著しい成長があったとは思わない。もちろん、中学生が新しい場所に出向き、これまでしたことのない体験をするわけだから成長はあるだろう。
けれどその成長は、あくまでも中学生が日々を過ごすなかでの、年齢相応の成長に過ぎない。
あるのは、たくさんの 「気付き」 だ。風汰は五日間、小さなたくさんの 「気付き」 のなかで生きていく。しかし風汰は、その 「気付き」 に気付かない。当たり前だ。いちいち 「気付き」 に思いを寄せる中学生はそうそういないだろう。(中略)
それは中学生男子の特徴かもしれない。口数が少なく、なかなか言葉にしないくせに、心のなかでは、豊富な思いや気持ちが、あふれんばかりにぱんぱんに詰まっているのだ。(解説より)
※三冊あった課題図書の中からこの本を選んだ中学生は、はたしてどんな読書感想文を書いたのでしょう。
あのことか? いやいや、(それとは別の) きっとあのことにちがいない! それくらいはわかるのですが、では 「どんなふうに書いたのか」 と考えるとまるで見当がつきません。その年ごろの (特に) 男子は、滅多なことでは本音を吐きません。吐くどころか、ためこんでばかりいます。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆いとう みく
1970年神奈川県川崎市生まれ。
武蔵野短期大学卒業。
2013年 『糸子の体重計』 で第46回日本児童文学者協会新人賞、15年 『空へ』 で第39回日本児童文芸家協会賞、20年 『朔と新』 で第58回野間児童文芸賞、21年 『きみひろくん』 で第31回ひろすけ童話賞、22年 『つくしちゃんとおねえちゃん』 で第69回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、『あしたの幸福』 で第10回河合隼雄物語賞、23年 『ぼくんちのねこのはなし』 で第38回坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に、『かあちゃん取扱説明書』 『夜空にひらく』 『真実の口』 など多数。
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