『三千円の使いかた』(原田ひ香)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/06 『三千円の使いかた』(原田ひ香), 作家別(は行), 原田ひ香, 書評(さ行)

『三千円の使いかた』原田 ひ香 中公文庫 2021年8月25日初版

知識が深まり、絶対 もとれちゃう節約家族小説!
垣谷美雨絶賛! - この本は死ぬまで本棚の片隅に置いておき、自分を見失うたびに再び手に取る。そういった価値のある本です。

就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆 (貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆 (貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子 (貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか? 〈解説〉 垣谷美雨 (中公文庫)

他人は他人、自分は自分と、あなたは心の底から割り切れていますか?

この物語を読み終えたとき、そう問い質されている気がしました。
格差が広がりつつある今の日本社会で、自分らしく生きるとはどういうことなのか。ともすれば私たちは、他人と自分の暮らしを比べ、劣等感や優越感を抱きがちです。そんな私たちに、この本は様々なことを教えてくれます。

読み終えたあと、私はしみじみと自分の来し方を振り返りました。そして、前々からこういった本が読みたかったのだと気づきました。
というのも、私自身ずっとお金のことを考えて生きてきたからです。頭から消えた瞬間などないといってもいいほどです。

この物語は、全ての世代の人の心に響く構成になっています。会社員の美帆 (二十四歳) には、恋人が抱える多額の奨学金と、金銭感覚がズレている彼の両親の問題が浮上します。

美帆の姉である真帆 (二十九歳) は、子育て中の専業主婦で自分の生活に満足して楽しく日々を送っていました。ですが、友人との再会で 「私ももっとお金持ちの男性と結婚した方がよかったのではないか」 という考えが突如として湧いてきて、その心のざわめきに戸惑います。

そして彼女らの母親である智子 (五十五歳) に起こる熟年離婚の問題。そのうえ祖母の琴子 (七十三歳) は老後の金銭的不安に立ち向かいます。このように、四人の女性それぞれの現実的な金銭感覚をもとに物語が展開していくのです。(途中一部略 by垣谷美雨)

ある日あるとき、人は三千円の使い方で人生が決まる - と言われたとしたら。

え? 三千円? 何言ってるの? - 中学生だった御厨美帆はわけがわかりません。

人生が決まるってどういう意味よ? 
言葉どおりの意味だよ。三千円くらいの少額のお金で買うもの、選ぶもの、三千円ですることが結局、人生を形作っていく、ということ - そう祖母は言ったのでした。

たかが三千円。されど、三千円。

三千円あれば・・・・・・・、
文庫本なら余裕で三冊は買える。
コンビニで昼食の弁当を買い、ペットボトルのお茶を買い、ついでに煙草も買えて半分残る。
明日行く歯医者の支払いに取っておく。僅かばかりの投資にまわす・・・・・・・

さて、一体どんな使いかたが 「正解」 なんでしょう。 

この本を読んでみてください係数 85/100

◆原田 ひ香
1970年神奈川県生まれ。東京都杉並区在住。
大妻女子大学文学部日本文学科卒業。

作品 「はじまらないティータイム」「三人屋」シリーズ 「ランチ酒」シリーズ等多数

関連記事

『流』(東山彰良)_書評という名の読書感想文

『流』東山 彰良 講談社 2015年5月12日第一刷 第153回直木賞受賞作品です。小説は、

記事を読む

『御不浄バトル』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『御不浄バトル』羽田 圭介 集英社文庫 2015年10月25日第一刷 僕が入社したのは、悪徳ブ

記事を読む

『死にたくなったら電話して』(李龍徳/イ・ヨンドク)_書評という名の読書感想文

『死にたくなったら電話して』李龍徳(イ・ヨンドク) 河出書房新社 2014年11月30日初版

記事を読む

『獅子渡り鼻』(小野正嗣)_書評という名の読書感想文

『獅子渡り鼻』小野 正嗣 講談社文庫 2015年7月15日第一刷 小さな入り江と低い山並みに挟

記事を読む

『妖の掟』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『妖の掟』誉田 哲也 文春文庫 2022年12月10日第1刷 ヤクザ×警察×吸血鬼

記事を読む

『死刑について』(平野啓一郎)_書評という名の読書感想文

『死刑について』平野 啓一郎 岩波書店 2022年6月16日第1刷発行 死刑を存置

記事を読む

『背中の蜘蛛』(誉田哲也)_第162回 直木賞候補作

『背中の蜘蛛』誉田 哲也 双葉社 2019年10月20日第1刷 池袋署刑事課の課長

記事を読む

『悪口と幸せ』(姫野カオルコ)_書評という名の読書感想文

『悪口と幸せ』姫野 カオルコ 光文社 2023年3月30日第1刷発行 美貌も 知名

記事を読む

『十六夜荘ノート』(古内一絵)_書評という名の読書感想文

『十六夜荘ノート』古内 一絵 中公文庫 2017年9月25日初版 英国でこの世を去った大伯母・玉青

記事を読む

『花びらめくり』(花房観音)_書評という名の読書感想文

『花びらめくり』花房 観音 新潮文庫 2021年12月25日4刷 「誘ってきたのは

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『悪逆』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『悪逆』黒川 博行 朝日新聞出版 2023年10月30日 第1刷発行

『エンド・オブ・ライフ』(佐々涼子)_書評という名の読書感想文

『エンド・オブ・ライフ』佐々 涼子 集英社文庫 2024年4月25日

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』(清武英利)_書評という名の読書感想文

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』清武 英利 

『メイド・イン京都』(藤岡陽子)_書評という名の読書感想文

『メイド・イン京都』藤岡 陽子 朝日文庫 2024年4月30日 第1

『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子 新潮社 2024年3月2

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑