『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/07
『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』(櫛木理宇), 作家別(か行), 書評(な行), 櫛木理宇
『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』櫛木 理宇 双葉文庫 2021年9月12日第1刷

「殺すのは、女なら誰でもよかった」 女性憎悪の闇を追う長篇サスペンス
六年前、武内譲は二つの家族を惨殺し動機を明らかにしないまま拘置所で自殺した。遺族の栗山香那と進藤小雪は事件当時の武内と同じ二十歳になったときに再会する。「事件を改めて調べよう」 と小雪は香那を誘う。なぜ私たちの家族が殺されなければならなかったのか。真相の周縁にあったのは、世代を超えて女性憎悪の感情で繋がる男の存在だった。注目の作家がおくる長篇サスペンス。(双葉文庫)
清治郎 松治 ミチ トミ 元治郎
兄 (アボ) サンカラ 聞キヨツタラウガ
姉ジョハ 外国サン行クゴツ 決モウタバツテ
ヤウカササ会ヱマセン
外国サンノオショウバイバ ガンバツテ ソウ金スルケンデ
オマエラハ 兄サンノ云フコツバ ヤウ聞ヰテ
イイ子デ タッシャデ ヲルヤウニ
ハナサンヨリ 兼サンヨリ
一番ハヤウニ帰リマス
明治四拾四年 伍月拾伍日
武内チヤ
「たまたま玄関のドアが開いていたんです。だから殺しました - 」
栗山香那の母と弟を殺した犯人は、取調室でそう淡々と供述したという。
わずか一時間のうちに計六人を殺傷した男の名は、武内譲といった。
【鑓戸二家族殺人事件・精神鑑定へ】- 日政新聞
千葉県鑓戸市で20××年7月に6人が殺傷された事件で、殺人罪などで起訴された武内譲 (20) について、弁護側が公判でも精神鑑定をおこなうよう請求したことが関係者の取材で分かった。
起訴状などによると、武内被告は××年7月19日、鑓戸市若葉区の栗山隆司さん方に侵入、在宅だった妻の香子さん (39) と息子の峻くん (3) を包丁で殺害して逃走。路上を通行中の男性 (76) に切りつけたのち、同日に約90メートル離れた同区の進藤ハツエさん (82) 方で、同進藤さんと、同居長男の妻・佳織さん (41)、孫娘の未咲さん (9) を包丁で殺害した。
武内被告は逮捕後の取り調べで、「誰でもいいから殺したかった」、「被害者たちと面識はない。玄関が施錠されていなかったので侵入した」 などと供述した。(本文より抜粋)
武内譲の初公判は、(動機不明のまま) 翌年春に開始されます。ところが、初公判からたった二日後、彼は拘置所内で自ら命を絶ったのでした。後に残った者たちは、なすすべがありません。
それから約6年後、中学校のクラスメイトだった栗山香那と進藤小雪は、事件当時の武内譲と同じ二十歳になっています。なぜ、わたしたちの家庭だったのか、武内譲はなぜ凶行に及んだのか・・・・・・・知りたいと言い出したのは小雪の方でした。
一つの謎は新たな謎を生み出して、行き着くところが見えません。事は譲の家系の何代も前にまで遡り、遠い昔の、その土地ならではの生業にも及びます。
はじめに紹介した時代がかった “手紙” と続く文章を参考に、「その時代」 を想像してみてください。生きるが為の、女の悲愴なまでの覚悟を。男の、あまりな卑劣さを。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆櫛木 理宇
1972年新潟県生まれ。
大学卒業後、アパレルメーカー、建設会社などの勤務を経て、執筆活動を開始する。
作品 「ホーンテッド・キャンパス」「赤と白」「侵蝕 壊される家族の記録」「209号室には知らない子供がいる」「死刑にいたる病」「死んでもいい」他多数
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