『リバース』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/12 『リバース』(湊かなえ), 作家別(ま行), 書評(ら行), 湊かなえ

『リバース』湊 かなえ 講談社文庫 2017年3月15日第一刷

深瀬和久は平凡なサラリーマン。自宅の近所にある〈クローバー・コーヒー〉に通うことが唯一の楽しみだ。そんな穏やかな生活が、越智美穂子との出会いにより華やぎ始める。ある日、彼女のもとへ『深瀬和久は人殺しだ』と書かれた告発文が届く。深瀬は懊悩する。遂にあのことを打ち明ける時がきたのか - と。(講談社文庫)

4月からTBSでドラマになるらしい。作品の出来はともかくも、作る側からすると大層難儀な仕事なんだろうな、とそんな感じがします。

ネットには大々的な番宣があり、(興味のある方なら)凡そはご存じなのではないでしょうか。ですから、(あらすじを追うのではなく)読んだ印象だけを書いておこうと思います。

当たり前のことですが、この手の本は読み切ってこそナンボ、であるわけです。正直に言うと、中盤あたりまでは「ワクワク」も「ドキドキ」もしません。むしろ平坦で、偏がない。(偏がない:起伏がなくてつまらないという意味)

さすがに最後になって - ああ、そうくるか!! - なのですが、断っておきますが、(感心こそすれ)泣いてしまうであるとか、ひどく感動するというわけではありません。

ドラマにおいては、随所に心理的な葛藤や駆け引きのようなものが描かれるのでしょうが、下手をすると、理屈ばかりのまどろっこしい画になってしまうのではないかと。(余計なことですが)そんな心配をしています。

ただこの小説にはちょっと変わった、ある「事情」があります。それが、(やや大袈裟ではありますが)文庫の帯に書いてあります。それを紹介しておきたいと思います。読んで興味が湧けば、試しに、読んでみてください。

かくも本書が「ミステリー」であるのは、その異例な成立事情に因る。というのも、まず版元である講談社の編集部からある〈お題〉が出され、それに応える形で書き出された作品だからだ。

小説本編より先に「解説」に目をとおされている読者もいるだろうから詳しく言えないが、その〈お題〉はこの小説の「最後の一行」をほとんど既定し、極めてアクロバティックな筆さばきが要求されるものである。- 佳多山大地(解説より)

いかがですか? 物語が書かれる以前に、すでに〈リバース〉しているわけです。

この本を読んでみてください係数  80/100

◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。

作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「望郷」「往復書簡」「境遇」「サファイア」「母性」「絶唱」「ユートピア」他多数

関連記事

『六番目の小夜子』(恩田陸)_書評という名の読書感想文

『六番目の小夜子』恩田 陸 新潮文庫 2001年2月1日発行 津村沙世子 - とある地方の高校にや

記事を読む

『自分を好きになる方法』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文

『自分を好きになる方法』本谷 有希子 講談社文庫 2016年6月15日第一刷 16歳のランチ、

記事を読む

『本を読んだら散歩に行こう』(村井理子)_書評という名の読書感想文

『本を読んだら散歩に行こう』村井 理子 集英社 2022年12月11日第3刷発行

記事を読む

『ラブレス』(桜木紫乃)_書評という名の感想文

『ラブレス』 桜木 紫乃  新潮文庫 2013年12月1日発行 桜木紫乃は 『ホテルローヤル』

記事を読む

『劇場』(又吉直樹)_書評という名の読書感想文

『劇場』又吉 直樹 新潮文庫 2019年9月1日発行 高校卒業後、大阪から上京し劇

記事を読む

『地下街の雨』(宮部みゆき)_書評という名の読書感想文

『地下街の雨』宮部 みゆき 集英社文庫 2018年6月6日第55刷 同僚との挙式が直前で破談になり

記事を読む

『15歳のテロリスト』(松村涼哉)_書評という名の読書感想文

『15歳のテロリスト』松村 涼哉 メディアワークス文庫 2021年8月5日24版発行

記事を読む

『すべて忘れてしまうから』(燃え殻)_書評という名の読書感想文

『すべて忘れてしまうから』燃え殻 扶桑社 2020年8月10日第3刷 ベストセラー

記事を読む

『家系図カッター』(増田セバスチャン)_書評という名の読書感想文

『家系図カッター』増田 セバスチャン 角川文庫 2016年4月25日初版 料理もせず子育てに無

記事を読む

『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ)_書評という名の読書感想文

『52ヘルツのクジラたち』町田 そのこ 中央公論新社 2021年4月10日15版発行

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子 新潮社 2024年3月2

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日

『揺籠のアディポクル』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『揺籠のアディポクル』市川 憂人 講談社文庫 2024年3月15日

『海神 (わだつみ)』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『海神 (わだつみ)』染井 為人 光文社文庫 2024年2月20日

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑