『死刑にいたる病』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『死刑にいたる病』櫛木 理宇 早川書房 2017年10月25日発行


死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

主人公の筧井雅也は、元優等生ながら、今は偏差値の低い大学の学生として鬱屈と孤独に苦しむ青年だ。そんな彼のもとに一通の手紙が届く。差出人は、なんと世間を騒がせた殺人鬼・榛村大和。人当たりのいいベーカリーの店主として地元の人々から愛されていた彼は、十代の少年少女を中心に多くの男女を拷問・殺害した罪で五年前に逮捕されていた。

容疑は二十四件に及ぶ大量殺人だが、警察が立件できたのは九件のみ。彼は取り調べの場で「逮捕されたのは、ぼくの思いあがりのせいです」「もう一度やりなおせるなら、今度こそ慢心しないでしょう」などと淡々と供述したという。

遠い昔、小学生だった雅也は大和が経営するベーカリーの常連客だったことがあり、大和はそれを覚えていたらしい。とはいえ、何故今になって雅也に手紙を送ってきたのか。興味を刺激されて拘置所を訪れた雅也に、大和は意外な打ち明け話をする。

立件された九件の殺人のうち、二十三歳の女性が絞殺された最後の一件だけは冤罪だというのだ。大和が雅也を呼んだのは、事件を再調査して無実を証明してほしいからだという。迷いつつも結局その依頼を引き受けた雅也は大和の過去を知る人々を訪ね、彼がどのような人間だったかを調べはじめる・・・・・・・。(解説より抜粋)

なぜ人はこんな話を読みたいと思うのだろう。猟奇殺人犯。連続殺人鬼。秩序型殺人犯。演技性人格障害者。鬼畜。シリアルキラー。異常者。怪物。等々 - 。

思いのほか人というのは薄情なのかもしれない。それとも単に怖いもの見たさによるものか、(理由は何にせよ)殺される人間の数が多ければ多いほど、そのやり口が痛ましければ痛ましいほど惹きつけられてしまうのはなぜだろうか。

(言葉は悪いが)読者の多くは、シリアルキラー(この小説では「榛村(はいむら)大和」という男)に魅了されてしまうのかもしれない。魅了され、榛村の知られざる性格や殺害に至るそもそものきっかけやその後の推移についてを、より詳細に知りたいと思うのだ。

普段の生活では起こり得ない酷く特異な犯罪に、(小説という作り話とはいえ)少なからず興奮している。周辺ではあり得ない出来事だと思うからこそ「安心して」享受していられる、そんなことでもあるのだろうと。

但し、怖気づくような感じかというとそこまでではない。

解説に、本書は『世界が赫に染まる日』や『FEED』などよりはソフトな印象の作品だが、それでもかなり陰惨な要素はある。単に、残虐なシリアルキラーが作中に登場することを指すのではない。雅也は調査の過程で大和の生い立ちを知ることになるが、そこから浮かび上がってくる事実は暗鬱そのものだ。- とある。

とまれこれ一冊ではどうしようもない。この際続けて、この小説を凌駕して陰惨だという『寄居虫女(ヤドカリオンナ)』(文庫化の際に『侵蝕 壊される家族の記録』と改題)と初期の作品『赤と白』(第25回小説すばる新人賞)を読んでみようと思う。

鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか? 」 パン屋の元店主にして自分のよき理解者だった大和に頼まれ、事件を再調査する雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていく。一つ一つの選択が明らかにする残酷な真実とは。『チェインドッグ』改題・文庫化(早川書房)

 

この本を読んでみてください係数 80/100


死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

◆櫛木 理宇
1972年新潟県生まれ。
大学卒業後、アパレルメーカー、建設会社などの勤務を経て、執筆活動を開始する。

作品 「ホーンテッド・キャンパス」「赤と白」「侵蝕 壊される家族の記録」「僕とモナミと、春に会う」「209号室には知らない子供がいる」他多数

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