『6月31日の同窓会』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/09 『6月31日の同窓会』(真梨幸子), 作家別(ま行), 書評(ら行), 真梨幸子

『6月31日の同窓会』真梨 幸子 実業之日本社文庫 2019年2月15日初版

案内状が届くと死ぬその伝説が現実に - !? 伝統ある女子校・蘭聖学園の卒業生が連続死する。OGの弁護士・松川凛子は、死亡した女たちが、存在しないはずの 「6月31日」 に開催される同窓会の案内状を受け取っていたことを突き止める。やがて凛子にも案内状が届き - 。悪意が渦巻く女の友情と学園の “闇” が深まる中たどりついた真相とは。先読み不能、一気読み必至の長編ミステリー! (実業之日本社文庫)

相変わらずの後味の悪さ。隙間なく埋め尽くされた強い悪意。物語は終始前後を繰り返し、攪乱されるがままに結末を迎えます。生半可なことでは、到底ことの真相には辿り着けません。

蘭聖学園
蘭聖学園は、神奈川県瑠璃市夢見が崎一丁目(旧相模郡瑠璃町)に所在し、小中高短大一貫教育を提供する私立女子学校。原則、初等部と短大のみ入学者を募集し、初等部からはエスカレーター式で進級させる完全一貫システムだが、中等部、高等部、それぞれ、数名から数十名の入学者を募集することもある。

沿革 1914年(大正3年) 3月、ドイツ人の修道女マリア・ジハルトが、女子を対象にした行儀見習い施設及び修練所マイグレックヒェン(鈴蘭)会 を瑠璃町に設立。(以下略)

校訓 平等であれ、 純潔であれ、 正しくあれ。

※上記の文章には嘘偽りは一切ありません。但し、(この学園が他の学校と比べ、著しく異なる点についての) 説明が十分に尽くされているかというと、そうは言えません。この物語のそもそもは、そこにこそあります。

登場する人物らは、おしなべてその “秘密” に関与しています。彼女らは、必ずしもこの学園に望んで入ったわけではありません。入学後、思いもしなかった “序列” があるのに気付きます。

[目次]
第一話  柏木陽奈子の記憶
第二話  松川凛子の選択
第三話  鈴木咲穂の綽名
第四話  福井結衣子の疑惑
第五話  矢板雪乃の初恋
第六話  小出志津子の証言
第七話  海藤恵麻の行方
第八話  土門公美子の推理
第九話  合田満の告白
(結末) 再び、柏木陽奈子の記憶

ある時期、高等部で共に学んだ彼女らは、大人になったある日、ありもしない 「6月31日」 に開催するという同窓会の案内状を受け取ります。

その案内状は今や 「伝説」 となり、何らかの “お仕置き” をされる覚えのある者に向けてのみ送られてくるというものでした。

ふざけた冗談としか思えなかったものが、ある日突然に自分にも届きます。その時、彼女は何を思うのでしょう? 現に何人かの同級生が同じ案内状を受け取り、その直後に不審な死を遂げていたとしたら。疑心暗鬼は連鎖し、悪いことしか考えられなくなります。

◆この本を読んでみてください係数 80/100

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。

作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「人生相談」「お引っ越し」他多数

関連記事

『首の鎖』(宮西真冬)_書評という名の読書感想文

『首の鎖』宮西 真冬 講談社文庫 2021年6月15日第1刷 さよなら、家族

記事を読む

『誰かが足りない』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『誰かが足りない』宮下 奈都 双葉文庫 2014年10月19日第一刷 優しい - 「優しくて、し

記事を読む

『リアル鬼ごっこ』(山田悠介)_書評という名の読書感想文

『リアル鬼ごっこ』山田 悠介 幻冬舎文庫 2015年4月1日75版 全国500万の 〈佐藤〉 姓を

記事を読む

『エレジーは流れない』(三浦しをん)_書評という名の読書感想文

『エレジーは流れない』三浦 しをん 双葉社 2021年4月25日第1刷 海と山に囲

記事を読む

『ロック母』:「ゆうべの神様」と「ロック母」(角田光代)_書評という名の読書感想文

『ロック母』:「ゆうべの神様」と「ロック母」角田 光代 講談社文庫 2010年6月15日第一刷

記事を読む

『いちばん悲しい』(まさきとしか)_書評という名の読書感想文

『いちばん悲しい』まさき としか 光文社文庫 2019年10月20日初版 ある大雨

記事を読む

『老後の資金がありません』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『老後の資金がありません』垣谷 美雨 中公文庫 2018年3月25日初版 「老後は安泰」のはずだっ

記事を読む

『彼女が最後に見たものは』(まさきとしか)_書評という名の読書感想文

『彼女が最後に見たものは』まさき としか 小学館文庫 2021年12月12日初版第1刷

記事を読む

『花の鎖』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『花の鎖』湊 かなえ 文春文庫 2018年8月1日19刷 両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガン

記事を読む

『ルビンの壺が割れた』(宿野かほる)_書評という名の読書感想文

『ルビンの壺が割れた』宿野 かほる 新潮社 2017年8月20日発行 この小説は、あなたの想像を超

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『黒猫亭事件』(横溝正史)_書評という名の読書感想文

『黒猫亭事件』横溝 正史 角川文庫 2024年11月15日 3版発行

『一心同体だった』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『一心同体だった』山内 マリコ 集英社文庫 2025年4月25日 第

『夜の道標』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『夜の道標』芦沢 央 中公文庫 2025年4月25日 初版発行

『フクロウ准教授の午睡 (シエスタ)』(伊与原新)_書評という名の読書感想文

『フクロウ准教授の午睡 (シエスタ)』伊与原 新 文春文庫 2025

『長くなった夜を、』(中西智佐乃)_書評という名の読書感想文

『長くなった夜を、』中西 智佐乃 集英社 2025年4月10日 第1

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑