『成功者K』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『成功者K』羽田 圭介 河出文庫 2022年4月20日初版

人は誰しも、成功者になれる可能性を秘めている
成功の快楽は恐怖への入口・・・・・・・明日はあなたが主人公

ある朝目覚めるとKは有名人になっていた。世界は夢のように一変したが、めくるめく日々は、不気味な迷宮への入口だった・・・・・・・成功者の恍惚と不安を “ありのまま” 作品化して “とんでもない小説” (行定勲・解説) と評された史上稀に見る怪作。この作家危険! 取扱注意。(河出文庫)

お笑い芸人の又吉直樹が書いた小説 『火花』 と、小説家として既に相応の実績があった羽田圭介が書いた小説 『スクラップ・アンド・ビルド』 の二作品が、第153回芥川賞を同時受賞したのは2015年のことでした。

当時、圧倒的に注目を浴びたのは又吉直樹の方でした。授賞式のときの羽田圭介は大人しく寡黙で、明らかに主役は又吉の方で、羽田はまるで又吉の添え物のような存在でした。同じ受賞者でありながら、二人の間には歴然とした差がありました。

『火花』 は爆発的に売れ、のちに映画にもなります。一方の 『スクラップ・アンド・ビルド』 も売れたには売れたのですが、両者の認知度さながらに 『火花』 のそれには遠く及びませんでした。

羽田圭介が 『スクラップ・アンド・ビルド』 の単行本の表紙をプリントしたTシャツ姿で、連日テレビに出演するようになったのは、思えば何時からだったのでしょう。気づくと、そんなことになっていました。

メディアへの露出が明らかに又吉を凌駕し、素人臭く朴訥ではありますが、おそらくはそれを承知で (むしろそれを “売り” にして) 又吉が稼ぐ何倍も稼いでいるように見えました。

解説 とんでもない小説 -成功者K』 の考察  行定勲

よくもこんな小説を書いたものだ。
私小説のようだが三人称で書かれているのでそれとは違う、自らを模倣するような主人公Kをまるで恥部を晒すように、リアルで生々しくスキャンダラスに描いた稀有な小説だ。誰もがコンプライアンスを意識して消極化する時代に、こんな過激で攻め込んだ作品を書く大胆さ。そこに敢えて切り込むのが羽田圭介という作家の強さと逞しさである。

実際の話、芥川賞受賞以来羽田氏は頻繁にメディアに登場し、そのユニークなキャラクターはお茶の間に受け入れられた。バラエティー番組やクイズ番組、ついには旅番組にまで、八面六臂の活躍である。気鋭の小説家がタレントとして有名になって芸能界を体感し何を得たのか。そもそも、この小説を執筆した原動力はどこにあったのかを想像してみた。

実際に彼が有名になってどんな想いをしたのかは知らぬが、この小説を読んで幾ばくかの有名税は払わされたのではないかと推測する。有名人になっても、とり立てて良い事もないのに、プライベートを侵害されるような行為をされてばかりいるのが癪だ という気分にさせられ、その支払った分を取り返すべく自分の経験した出来事を小説のネタにし、元をとろうと企んだのではないか。(以下略)

※これはあくまで 「小説」 で、羽田圭介が体験した 「実話」 ではありません。但し、どこからどこまでが 「実話」 で、どこからがフィクションか? - その境界線がわかりません。いずれにせよ、読み通すには、清濁併せ呑む “広い心” が必要です。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆羽田 圭介
1985年東京都生まれ。
明治大学商学部卒業。

作品 「黒冷水」「ミート・ザ・ビート」「御不浄バトル」「不思議の国の男子」「スクラップ・アンド・ビルド」「メタモルフォシス」「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」他多数

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