『終わりなき夜に生れつく』(恩田陸)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/08 『終わりなき夜に生れつく』(恩田陸), 作家別(あ行), 恩田陸, 書評(あ行)

『終わりなき夜に生れつく』恩田 陸 文春文庫 2020年1月10日第1刷

はじめに、あなたは恩田陸の傑作 - 架空の高知 「途鎖国」 を舞台にしたダーク・ファンタジー 『夜の底は柔らかな幻』(文春文庫・上下巻) をご存じだろうか? 日本版・地獄の黙示録と称される、あの壮大な物語のことである。

本作は、そのスピンオフ作品にあたる。山また山の地にあって、「山には何があるのか? なぜ途鎖国にはイロを持つものが多いのか? 闇月に集まる個性的な在色者たちが駆け引きと激しい戦いを繰り広げ、その謎の真相に迫る」 のが、長編 『夜の底は柔らかな幻』 で、

本作では、強力な特殊能力 イロを持って生まれてきた在色者 の男たちは、いかにして残虐な殺人者となったのか? - その真実が明かされる。

「在色者」 とは何者か? 読んで字のごとく 「色の在る者」。そう、この作品世界には 「イロ」 を持って 「生れつく」 ものがいる。手を触れずに物を動かすことができる、心を読むことができる、頭に直接情報を焼き付け送り込むことができる・・・・・・・いわゆる超能力、といったものだ。それを総称して 「イロ」 と呼んでいる。

ただし野放図にその 「イロ」 の力を使えるわけではない。力を使うことで心身につらい反動があり、強い力を使えば強い反動に悩まされるからだ。それが 「イロ」 をもって生まれたものに大きな負担になるため、通常は薬物投与や脳の手術によって 「均質化」 され、ほとんど力を使うことはない。そう、ほとんどは。

また、「途鎖国」 にはなぜか 「イロ」 を持つ者・・・・・・ 「在色者」 が多く存在する。そのため 「途鎖国」 は 「在色者」 の出入国を厳しく制限し管理している。そしてなぜか、山に入ることを禁じている。死者とまみえることができるという 「闇月」 の時期を除いて・・・・・・・。(解説より/一部略)

第一章 「砂の夜」 アフリカの村で、毎晩一人ずつ男が殺されていく
第二章 「夜のふたつの貌」 医学部に蔓延するクスリの出所は?
第三章 「夜間飛行」 闇からこちらを監視する目の主は?
第四章 「終わりなき夜に生れつく」 雑誌記者が追う男の、恐るべき正体

- 残酷。なのに柔らかで、美しい。恩田陸の描く、至高のアクションホラー

索条痕のない窒息死体が連続で見つかった。この殺人事件に、あの男は関与しているのか。雑誌記者が、あとを追う。特殊能力を持つ者たちが覇権を争う 「途鎖国」 でやがて犯罪者の王として君臨する神山が、闇に目覚める瞬間を描く (表題作)。傑作ダーク・ファンタジー 『夜の底は柔らかな幻』 へと続く鮮烈な作品集。 解説・白井弓子 (文春文庫)

※本編(『夜の底は柔らかな幻』)を先に読むか後で読むかは、たいした問題ではありません。言えるのは、本作だけでもえらくおもしろい、ということです。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆恩田 陸
1964年青森県青森市生まれ。宮城県仙台市出身。
早稲田大学教育学部卒業。

作品 「夜のピクニック」「ユージニア」「六番目の小夜子」「中庭の出来事」「木洩れ日に泳ぐ魚」「蜜蜂と遠雷」「私の家では何も起こらない」「EPITAPH東京」他多数

関連記事

『ホテル・アイリス』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『ホテル・アイリス』小川 洋子 幻冬舎文庫 1998年8月25日初版 これは小川洋子が書いた、ま

記事を読む

『夜明けの縁をさ迷う人々』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『夜明けの縁をさ迷う人々』小川 洋子 角川文庫 2010年6月25日初版 私にとっては、ちょっと

記事を読む

『肝、焼ける』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『肝、焼ける』朝倉 かすみ 講談社文庫 2009年5月15日第1刷 31歳になった

記事を読む

『ボダ子』(赤松利市)_書評という名の読書感想文

『ボダ子』赤松 利市 新潮社 2019年4月20日発行 あらゆる共感を拒絶する、極

記事を読む

『死体でも愛してる』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『死体でも愛してる』大石 圭 角川ホラー文庫 2020年8月25日初版 台所に立っ

記事を読む

『アンチェルの蝶』(遠田潤子)_書評という名の読書感想文

『アンチェルの蝶』遠田 潤子 光文社文庫 2014年1月20日初版 大阪の港町で居酒屋を経営する藤

記事を読む

『ウエストウイング』(津村記久子)_書評という名の読書感想文

『ウエストウイング』津村 記久子 朝日文庫 2017年8月30日第一刷 女性事務員ネゴロ、塾通いの

記事を読む

『うつくしい人』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『うつくしい人』西 加奈子 幻冬舎文庫 2011年8月5日初版 他人の目を気にして、びくびくと

記事を読む

『R.S.ヴィラセリョール』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『R.S.ヴィラセリョール』乙川 優三郎 新潮社 2017年3月30日発行 レイ・市東・ヴィラセリ

記事を読む

『地獄への近道』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『地獄への近道』逢坂 剛 集英社文庫 2021年5月25日第1刷 お馴染み御茶ノ水

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』(清武英利)_書評という名の読書感想文

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」 23年間の記録』清武 英利 

『メイド・イン京都』(藤岡陽子)_書評という名の読書感想文

『メイド・イン京都』藤岡 陽子 朝日文庫 2024年4月30日 第1

『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子 新潮社 2024年3月2

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑