『にらみ』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『にらみ』長岡 弘樹 光文社文庫 2021年1月20日初版

にらみ (光文社文庫 な 51-1)

窃盗の常習犯・保原尚道が仮釈放中に保護司を殺害しようとして逮捕された。取り調べる片平成之は、以前、裁判で保原が供述を翻したりしないよう圧力をかけるべく “にらみ” をしていた。保原は自首しているのだが、片平は納得していない。保原は人を殺めようとするほどの悪人なのか - 。(表題作) 緻密な伏線、まさかのサプライズ、意外なツイスト、余韻のある結末 - 名手・長岡弘樹によるミステリー傑作集! (光文社文庫)

目次
餞別
遺品の迷い
実況中継
白秋の道標
雑草
にらみ
百万に一つの崖

以上七編、ひとつとして似通った題材、シチュエーション、あるいはミステリーとしてのトリックのない、多彩という一言に尽きる短編が並んでいる。シリーズキャラクターや共通するテーマも設けず、それぞれの一編に集中し、一期一会の驚きを読み手に届けようという書き手の強い意欲が感じ取れる作品ばかりだ。

先にその時点で意図が判然としない人間の行動や、ことさらに意味を感じないながらも記憶に残る光景の意外な “含み” が明らかになる、長岡ミステリーの定番ともいえる特徴と書いた。

長岡ミステリーの根底にある特徴、あるいは長岡らしさは確かにある。けれども、それが似通ったパターンの乱造に陥らないのは、自らのブランドを守りながら、絶えず - テーマ、手法あらゆる点で - 新たな領域を開拓しているからにほかならない。(解説より)

(幾分無理に思えるところがあるにはありますが) 基本すべての伏線がきっちり回収されているのが小気味いい。読むと、どれもに破綻がないのがわかります。なので、余分なことは気にせず、集中できていい。これは (ミステリーにとって) とても大事なことだと思います。

「教場」 ばかりが人気のようですが、私はそれより前の 『傍聞き』 が今でも一番気に入っています。『傍聞き』 を凌ぐ作品を読んでみたいと願っています。

この本を読んでみてください係数 80/100

にらみ (光文社文庫 な 51-1)

◆長岡 弘樹
1969年山形県山形市生まれ。
筑波大学第一学群社会学類卒業。

作品 「陽だまりの偽り」「傍聞き」「教場」「教場2 」「線の波紋」「波形の声」「群青のタンデム」「白衣の嘘」「血縁」他

関連記事

『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)_書評という名の読書感想文

『西の魔女が死んだ』梨木 香歩 新潮文庫 2001年8月1日初版 西の魔女が死んだ (新潮文庫

記事を読む

『血縁』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『血縁』長岡 弘樹 集英社文庫 2019年9月25日第1刷 血縁 (集英社文庫) コン

記事を読む

『二度のお別れ』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『二度のお別れ』黒川 博行 創元推理文庫 2003年9月26日初版 二度のお別れ (創元推理文

記事を読む

『くちびるに歌を』(中田永一)_書評という名の読書感想文

『くちびるに歌を』中田 永一 小学館文庫 2013年12月11日初版 くちびるに歌を (小学館

記事を読む

『阿弥陀堂だより』(南木佳士)_書評という名の読書感想文

『阿弥陀堂だより』南木 佳士 文春文庫 2002年8月10日第一刷 阿弥陀堂だより (文春文庫

記事を読む

『妻が椎茸だったころ』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『妻が椎茸だったころ』中島 京子 講談社文庫 2016年12月15日第一刷 妻が椎茸だったころ

記事を読む

『岬』(中上健次)_書評という名の読書感想文

『岬』中上 健次 文春文庫 1978年12月25日第一刷 岬 (文春文庫 な 4-1)

記事を読む

『残された者たち』(小野正嗣)_書評という名の読書感想文

『残された者たち』小野 正嗣 集英社文庫 2015年5月25日第一刷 残された者たち (集英社

記事を読む

『熱源』(川越宗一)_書評という名の読書感想文

『熱源』川越 宗一 文藝春秋 2020年1月25日第5刷 【第162回 直木賞受賞作】熱源

記事を読む

『夏をなくした少年たち』(生馬直樹)_書評という名の読書感想文

『夏をなくした少年たち』生馬 直樹 新潮文庫 2019年8月1日発行 夏をなくした少年たち

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里)_書評という名の読書感想文

『きみはだれかのどうでもいい人』伊藤 朱里 小学館文庫 2021年9

『はるか/HAL – CA』(宿野かほる)_書評という名の読書感想文

『はるか/HAL - CA』宿野 かほる 新潮文庫 2021年10月

『変な家』(雨穴)_書評という名の読書感想文

『変な家』雨穴 飛鳥新社 2021年9月10日第8刷発行 変な

『でえれえ、やっちもねえ』(岩井志麻子)_書評という名の読書感想文

『でえれえ、やっちもねえ』岩井 志麻子 角川ホラー文庫 2021年6

『推し、燃ゆ』(宇佐見りん)_書評という名の読書感想文

『推し、燃ゆ』宇佐見 りん 河出書房新社 2021年3月15日40刷

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑