『そこにいるのに/13の恐怖の物語』(似鳥鶏)_書評という名の読書感想文

『そこにいるのに/13の恐怖の物語』似鳥 鶏 河出文庫 2021年6月20日初版

怖い、でも止められない。

撮ってはいけない写真、曲がってはいけないY字路、帰ってはいけない部屋、見てはいけないURL、剥がしてはいけないシール、探してはいけない場所、思い出してはいけないモノ・・・・・・・。本格ミステリの旗手が挑む初のホラー短編集。読み進めるほど後悔する13の恐怖と怪異の物語。(河出文庫)

(第12話) インターネット・プロトコル

Google ストリートビューでね。
なんとなく、適当な道を見て回ったことはない?
それ、やめた方がいいよ。
時々、見えちゃいけないものが映ってるところがあるから。

たとえばね。
N 37.59.41 E 140.08.38 は、見ない方がいいよ。
空き地に停めてある、黒い車の中に、顔の上半分がない女が映ってるから。

それからね。
N 35.31.23 E 133.12.29 は、見ない方がいいよ。
側溝の中に、ばらばらにされた男の首と右脚が映ってるから。

それからね。
N 34.36.41 E 135.32.06 は、見ない方がいいよ。
ゴミ捨て場に積まれたクママリのぬいぐるみの横に、女の首が捨てられてるから。

それからね。
N 43.33.54 E 144.52.52 は、見ない方がいいよ。
森の中に、逆さまにぶら下がっている死体が映ってるから。

それからね。
N 35.06.17 E 136.54.37 は、見ない方がいいよ。
デニーズの看板のうしろに、頭が潰れた男が映ってるから。

言ったよね。見ない方がいいよって。
どうして見たの? すべて見たら、もうだめだよ。だから見ない方がいいよって言ったのに。
ほら、外に何かいるでしょ?
裁ちばさみを持ってる? ふうん。 じゃあ、殺されるね。
全部見ちゃ、いけないんだよ。なのに、見ちゃったんだよね。じゃあ、仕方ないよ。

N 35.36.19 E 139.40.07 は、見ない方がいいよ。
家のベランダに、裁ちばさみで刺し殺された人が映ってるから。

※13ある話の中で一番短い話が、これ。長い話で約30ページ。何気に読んだ、後でくる。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆似鳥 鶏
1981年千葉県生まれ。
千葉大学教育学部卒業。北海道大学法科大学院在学中に小説家デビュー。

作品 「理由あって冬に出る」「戦力外捜査官 姫デカ・海月千波」「神様の値段」「昨日までの不思議の校舎」「目を見て話せない」他多数

関連記事

『想像ラジオ』(いとうせいこう)_書評という名の読書感想文

『想像ラジオ』いとう せいこう 河出文庫 2015年3月11日初版 この物語は、2011年3

記事を読む

『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(滝口悠生)_書評という名の読書感想文

『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』滝口 悠生 新潮文庫 2018年4月1日発行 東北へのバ

記事を読む

『夢魔去りぬ』(西村賢太)_書評という名の読書感想文

『夢魔去りぬ』西村 賢太 講談社文庫 2018年1月16日第一刷 三十余年ぶりに生育の町を訪れた

記事を読む

『シュガータイム』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『シュガータイム』小川 洋子 中公文庫 2022年7月30日21刷発行 三週間ほど

記事を読む

『彼女がその名を知らない鳥たち』(沼田まほかる)_書評という名の読書感想文

『彼女がその名を知らない鳥たち』沼田 まほかる 幻冬舎文庫 2009年10月10日初版 8年前

記事を読む

『白い夏の墓標』(帚木蓬生)_書評という名の読書感想文

『白い夏の墓標』帚木 蓬生 新潮文庫 2023年7月10日25刷 (昭和58年1月25日発行)

記事を読む

『ユリゴコロ』(沼田まほかる)_書評という名の読書感想文

『ユリゴコロ』沼田 まほかる 双葉文庫 2014年1月12日第一刷 ある一家で見つかった「ユリゴコ

記事を読む

『ヒポクラテスの憂鬱』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『ヒポクラテスの憂鬱』中山 七里 祥伝社文庫 2019年6月20日初版第1刷 全て

記事を読む

『続・ヒーローズ(株)!!! 』(北川恵海)_書評という名の読書感想文

『続・ヒーローズ(株)!!! 』北川 恵海 メディアワークス文庫 2017年4月25日初版 『 ヒ

記事を読む

『さよなら、田中さん』(鈴木るりか)_書評という名の読書感想文

『さよなら、田中さん』鈴木 るりか 小学館 2017年10月17日初版 花実はじつにあっけらかん

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『百年と一日』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『百年と一日』柴崎 友香 ちくま文庫 2024年3月10日 第1刷発

『燕は戻ってこない』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『燕は戻ってこない』桐野 夏生 集英社文庫 2024年3月25日 第

『羊は安らかに草を食み』(宇佐美まこと)_書評という名の読書感想文

『羊は安らかに草を食み』宇佐美 まこと 祥伝社文庫 2024年3月2

『逆転美人』(藤崎翔)_書評という名の読書感想文

『逆転美人』藤崎 翔 双葉文庫 2024年2月13日第15刷 発行

『氷の致死量』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『氷の致死量』櫛木 理宇 ハヤカワ文庫 2024年2月25日 発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑