『かわいい結婚』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『かわいい結婚』山内 マリコ 講談社文庫 2017年6月15日第一刷


かわいい結婚 (講談社文庫)

結婚して専業主婦となった29歳のひかりだが、家事能力はゼロ。こんなに嫌いな家事が一生続くなんて・・・・ これがゴールなら、わたしは誰とも恋なんかしない! (「かわいい結婚」)。いまどき女子の本音をおしゃれに鋭く描いて大人気の著者が、結婚生活の夢とリアルをコミカル&ブラックに描く、3つの短編集。(講談社文庫)

表題作「かわいい結婚」の他に「悪夢じゃなかった? 」「お嬢さんたち気をつけて」の2編を収録。いずれの作品もこの人の小説らしく軽い感じでノリがいい。ややこしいことが書いてあるわけではないので、あっという間に読めてしまいます。然るに、ハハハと笑ってオシマイなら、それはあまりに勿体ない。

結婚するかどうかの決断を今まさに迫られているような、あなた。

いつか誰かと結婚し、それは必ずしもベストとは言えない選択かも知れないけれど、それでも相応に満足し、過不足なく暮らしてゆくのだろうと考えている、あなた。あなたにこそ読んでほしいと思う一冊です。

よくよく考えてみてください。結婚とは何ぞやと。あなたにとってそれは、その後に続く長い長い人生の、真に新たな門出となるのだろうかということについて。打算と妥協の結果導き出した、体のいい〈諦め〉ではないかという疑念について。

ちょっと真面目な話をしましょう。これは解説にある湯山玲子氏の文章です。

「地方在住で所得も社会的な地位も低い人たち」が一様に幸福度が高いというのは、いわゆるマイルドヤンキーという言葉で知られているが、本作はそのことを小説化した試みかもしれない。

マイルドヤンキー?  みなさんはこんな言葉を聞いたことがあるでしょうか。優しげな不良? ・・・・ いやいや、そんな意味ではありません。今を生きる(地方の)若者らが行き着いた、ある「処世術」のことをいいます。

マイルドヤンキーなる若者は、地元に根ざし、同年代の友人や家族との関係を基盤にした生活を送っています。一般的な若者の志向である、都市への流出、車離れ、晩婚化、少子化などと異なり、彼ら彼女らは、別の経済観念や行動様式を持つと定義されています。

仲間と同乗して車を使い、地元企業に勤め、週末は幼なじみとショッピングモールに出かける。行動エリアは半径5キロメートル以内で完結。郊外や地方都市に住み、彼らの収入は決して多いとは言えません。

ITへの関心やスキルが低く、小・中学校時代からの友人関係を続け、「できちゃった結婚」の割合が高く、子どもにキラキラネームをつける。喫煙率や飲酒率が高い - などの特徴があるといいます。(コトバンクより引用)

どうです? (正真正銘の地方人間である)私は、思い当たることが8割。いいや、そんなことはないと思う気持ちが2割。といったところでしょうか。何だか莫迦にされているようで気分はよくないものの、言われると、まさに実態はそういうことなんだと。

※「マイルドヤンキー」という概念の提唱者は博報堂の原田曜平という人物。彼は決して地方在住の若者を見下しているわけではありません。彼の思いは、まるで別のところにあります。

いずれにせよ、ここで重要なのは、地方で暮らすということは - それはとりもなおさず今を生きる多くの若者にとっては、ということですが - 何か憧れた大きなもの、なりたいと願う自分の未来にどうにか見切りをつけて行き着いた「なりゆき」なのだと思います。

時代が突きつける絶望や無力感を前に、強く反発できるだけの能力や気力を持ち合わせている人間ならそうはならないかもしれません。

そういう人はどんどん(都会へでも)どこへでも行けばいい。行って、やりたいことをやりたいようにやればいい。但し、その挙句仕事に追われ、精神を病み、おまけに思ったほどの稼ぎもないとなれば、何をか言わんや、ということにもなりかねないわけで・・・・・

この本はそんな世相を背景に書かれています。そこのところを十分に理解して読んでみてください。

 

この本を読んでみてください係数  85/100


かわいい結婚 (講談社文庫)

◆山内 マリコ
1980年富山県富山市生まれ。
大阪芸術大学映像学科卒業。

作品 「アズミ・ハルコは行方不明」「ここは退屈迎えに来て」「さみしくなったら名前を呼んで」「パリ行ったことないの」など

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