『私の息子はサルだった』(佐野洋子)_書評という名の読書感想文

『私の息子はサルだった』佐野 洋子 新潮文庫 2018年5月1日発行


私の息子はサルだった (新潮文庫)

何でもやってくれ。子供時代を充分子供として過ごしてくれたらそれでいい - 本を読んで、お話をして、とせがんだ幼い息子。好きな女の子が「何考えていたのかなあ」と想像する小学生の息子。中学生になり、父親を亡くした親友に接する息子・・・・・・・。著者は自らの子を不思議な生き物のように驚きつつ慈しむ。没後発見された原稿を集めた、心あたたまる物語エッセイ。(新潮文庫)

小学1年生の時、ケンは彼女に恋をします。

タニバタさんは入学式の時、新入生代表でりんりんとよく通るはっきりした声で、新入生のあいさつをした。たいしたもんだなぁ、ケンの母親は感心した。授業参観に行くと、一人だけずば抜けてしっかりした字を書いた絵日記があった。日記は最後の行までびっしり書いてある。絵もていねいに隅から隅まで手抜きなく描いてある。名前を見る。たにばたみな子と書いてある。ふーん。大したもんだ。(P43.44)

母親はいたく感心します。次いで息子のケンの絵日記を見ると、そこにははみ出さんばかりの、大きな赤いカニが描いてあります。大きく不ぞろいな字がたったの四行。ケンの母親は、とにかく元気がいいのに「まあいいか」と思い、タニバタさんの絵日記をもう一度見て、もう一度感心するのでした。

そのタニバタさんをして、ケンは学校帰りに門で待ち伏せて、一緒に帰り、夏休みに遊ぶ約束をしようとします。母親にそれをそのまま伝え、応援のために迎えに来てと頼むと、母親は「わかった」と言います。

ところが思わぬ成り行きに、ケンと母親は驚いて、

「あっ」
二人とも声にならない声を同時に出したことがわかる。タニバタさんが出て来た。飛びはねながら。タニバタさんは男の子としっかり手をつないで、二人で飛びはねながら笑っている。校門をわき見もせずに飛びはねながら通り過ぎて行った。

ケンと母親は手をだらんと下ろして、ぼうっと突っ立っている。そして力が抜けた顔を見合わせた。
「モグラのキンタマだ」
ケンは小さい声でつぶやく。二人は手をつないだまま、のろのろと道を歩いて行く。(P45)

また別の日の話。

- 理科の授業だった。先生はプラスチックのはかりを机の上に置いた。 「この前の続きをやるよ。ここにはかりがあるね。今ここの上に赤い箱が置いてある。こっちが下になっているね、先生はこの棒をまっすぐにしたい。さあどんな時、この棒はまっすぐになるんだったかな」

ハイハイハイと沢山手があがった。 「じゃあ、ケン君」
ケンは、はりきって立ち上がった。

「運のいいとき」
母親はボウ然とした。 そうして一年生は終わった。(P53.54)

※この二つを紹介したのは -「モグラのキンタマ」と「運のいいとき」というのに - どこより爆笑したからに他なりません。

やがてケンは、タニバタさんを間に挟み、モグラのキンタマことウワヤくんと、他にもう一人、よっちゃんという同級生と友達になります。友達どころか、ケンとウワヤくんとよっちゃんの三人は “同盟” を結ぶほどの親友となり、それは大人になるまで続きます。

 

この本を読んでみてください係数  85/100


私の息子はサルだった (新潮文庫)

◆佐野 洋子
1938年北京生まれ。2010年、没。享年、72歳。
武蔵野美術大学デザイン科卒業。ベルリン造形大学でリトグラフを学ぶ。

作品 絵本「100万回生きたねこ」「わたしのぼうし」ねえ とうさん」 エッセイ集「ふつうがえらい」「神も仏もありませぬ」「覚えていない」他、小説など多数

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