『八月は冷たい城』(恩田陸)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2018/12/11 『八月は冷たい城』(恩田陸), 作家別(あ行), 恩田陸, 書評(は行)

『八月は冷たい城』恩田 陸 講談社タイガ 2018年10月22日第一刷

八月は冷たい城 (講談社タイガ)

夏流城(かなしろ) での林間学校に初めて参加する光彦(てるひこ)。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」 という疑惑を拭えずにいた。ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也、大柄でおっとり話す耕介、唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正だ。

到着した彼らを迎えたのは、首から折られた四つのひまわりの花だった。少年たちの人数と同じ数 - 不穏な空気が漂うなか、三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼を募らせる卑劣な事件が続き・・・・・・・? 彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短く切ない 「夏」 が終わる。(アマゾン内容紹介より)

実は、(私は知らずに読んだのですが) これは先に出版された(2018/9/20) 『七月に流れる花』 の続編であるらしい。

慌てて 『七月に ~ 』 の解説を読んでみると、これら二作が、「ある宿命を背負った少年少女たち」 がする 「林間学校」 の名を借りた 「つらく切ない」「ひと夏の冒険譚」 であるのがわかります。

六月という半端な時期に夏流(かなし) に転校してきたミチル。終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、全身緑色をした不気味な 「みどりおとこ」 の影を見つける。逃げ出したミチルの手元には、呼ばれた子どもは必ず行かなければならない、夏の城 - 夏流城(かなしろ) での林間学校への招待状が残されていた。五人の少女との古城での共同生活。少女たちはなぜ城に招かれたのか? 長く奇妙な夏が始まった。(七月に流れる花/講談社タイガ)

舞台は、夏流(かなし) という辺鄙な田舎の、さらに人里離れた場所にある夏流城(かなしろ) というお城 - 四人の少年たちは、そこである奇妙な、そしてそれより辛いある出来事に立ち会うことになります。

彼らは、彼らだけが指名され、一方的に招待され、”林間学校” に仕方なく参加しています。実は彼らは、四人が四人ともに、大きなショックを受けています。

思えば、この夏は始まりからどことなく変だった。
あいつが光彦の前に現れた時から、既に、何かがおかしかった。
光彦は小さい頃からずっとあいつが苦手だった。みんなが知っているあいつ。みんなが讃えるあいつ。あいつはいったい何者なんだ?

むろん、あいつが下校時に現れた時、ショックを受けなかったかと言えば嘘になる。あいつが夏の城への招待状を渡すのは、必ず相手が一人になった時だというのは知っていた。身内に緑色感冒の患者がいると、そういうことには敏感になるし、どこかで覚悟はできている。

だから、ぴょんぴょん飛び跳ねる独自の動きであいつが前方に現れた時、光彦は、「ああ、やっぱりお母さんはもう助からないんだな」 と真っ先に思ったし、その考えを比較的冷静に受け止めてもいた。(P27.28)  ※「あいつ」 は、作中 「みどりおとこ」 または 「夏の人」 として登場します。

少年たちが行く夏流城には、死ぬ間際の、緑色感冒に侵された多くの患者が隔離されています。その中に四人の少年たちの親がおり、光彦の母がいるのでした。

彼らは、親と会うことができません。意識が途切れる直前、(隠し鏡を通して) 親だけが子どもの姿を見ることができます。鏡越しに感じる気配だけを残し、やがて患者は逝き、人知れず処分されます。

※前作の 『七月に ~ 』 が “少女バージョン” なのに対し、本作の 『八月は ~ 』 は “少年バージョン” で、二つで対の物語であるらしい。できればみなさんは 『七月に流れる花』 から読んでください。

この本を読んでみてください係数 80/100 

七月に流れる花 (講談社タイガ)

◆恩田 陸
1964年青森県青森市生まれ。宮城県仙台市出身。
早稲田大学教育学部卒業。

作品 「夜のピクニック」「ユージニア」「六番目の小夜子」「中庭の出来事」「木洩れ日に泳ぐ魚」「蜜蜂と遠雷」「私の家では何も起こらない」「EPITAPH東京」他多数

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