『GO』(金城一紀)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2017/12/07
『GO』(金城一紀), 作家別(か行), 書評(か行), 金城一紀
『GO』 金城 一紀 講談社 2000年3月31日第一刷 @1,400
GO
金城一紀が好きである。
金城一紀といえば、小栗旬主演のTVドラマ「BORDER」の脚本家としての知名度の方が高いのかしら。
それとも、岡田准一演じる「SP警視庁警備部警護課第四係」シリーズ?
脚本家としてもよく知られる金城一紀ですが、この人の小説は漫画になったり映画になったりで忙しい。
そして漫画も映画も面白いし、TVドラマでは高い視聴率をたたき出す。
小説を読んでいるけれど、映画を観ているように場景が浮かぶし、漫画の一場面のように度を越して暴れまくる。
声を出して笑えるし、泣けてくる。
金城一紀は、中学校まで民族学校(朝鮮学校)に通い、国籍を朝鮮籍から韓国籍に変えると同時に日本の高校へ通うことを決意します。
彼は、日本生まれの在日コリアンです。
彼の原点は言うまでもなく彼自身の出自ですが、彼はそのことを隠さずむしろ陽のエネルギーヘ変換して、小説は厭味なく文章は明快で軽妙です。
軽妙ですが決して軽薄ではなく、「日本の内なる他者」としての自分がいまある状況を過不足なく分析する冷静さと明晰な頭脳を持っています。
『GO』は、自分の生い立ちを綴る自伝的作品なのですが、胸がすく思いで一気に読みました。
都内の私立高校に入って知り合った、広域暴力団幹部を父親にもつ加藤、互いに惹かれあう謎めいた有名女子高生の桜井。
民族学校時代の友達で秀才の正一(ジョンイル)や元秀(ウオンス)、そして主人公「僕」のオヤジとオフクロ。
登場人物のすべてが印象深く、魅力的です。
なかでも、オヤジ、桜井、そして正一。
個性が際立って鮮やかです。
こんな人物たちと巡り合っただけで人生勝ち越しだと感じ入ってしまうのです。
この本を読んでみてください係数 95/100
◆金城 一紀
1968年埼玉県川口市生まれ。
慶應義塾大学法学部卒業。
作品 「GO」(2000年直木賞)「対話編」「映画編」「レヴォリューションNO.3」「フライ・ダディ・フライ」「SPEED」「レヴォリューションNO.0」など
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