『幸福な遊戯』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『幸福な遊戯』角田 光代 角川文庫 2019年6月20日14版

幸福な遊戯 (角川文庫)

ハルオと立人と私。恋人でもなく家族でもない3人が始めた共同生活。この生活の唯一の禁止事項は同居人同士の不純異性行為- 本当の家族が壊れてしまった私にとって、ここでの生活は奇妙に温かくて幸せなものだった。いつまでも、この居心地いい空間に浸っていたかったのに・・・・・・・
表題作幸福な遊戯の他2編を収録。角田光代の原点、記念碑的デビュー作。解説・永江朗 (角川文庫)

※本書は1991年9月、福武書店より刊行された単行本を文庫化したものです。

角田光代の本なら、おそらく40冊は読みました。初めて読んだのは 『紙の月』 でした。数多ある傑作を差し置いて私が好きなのは、「山田うどん」 の宣伝用に書かれた 「おまえじゃなきゃだめなんだ」 という短い作品です。(ぜひ一度読んでみてください)

「デビュー作は何だったのか」 と思う間もなく長い月日が経ちました。”今更ながら感” は否めませんが、そうとわかれば読んでみようと思うではないですか。

「幸福な遊戯」 は男二人女一人の計三人が共同生活をする話です。都会の一人暮らしでいちばん大変なのは家賃です。三人で一軒家を借りれば、一人あたりの家賃の負担は少なく、なおかつ快適な住空間が手に入れられます。(後略)

しかし、赤の他人で、しかも性別も違う三人が一緒に住むのですから、それなりのストレスもあります。だからこの家のルールは 「同居人同士の不純異性行為禁止」。ところが、共同生活三か月目にして、「私」 とハルオはこのルールを破ってしまいます。「幸福な遊戯」 はこんなふうに始まります。(解説より)

ハルオは5年前に高校を出て上京し、高校の同級生である立人のアパートに転がり込みました。進学するためでも就職するためでもなく、なんとなく東京にあこがれてやって来ました。やりたいことがあったわけでなく、というか、行けばやりたいことがあるだろうと漠然とした期待を抱いて東京へやって来たのでした。ところが、やりたいと思うことは見つからず、これといったことがないまま5年が経ってしまったのでした。

最初 「私」 は、明らかにハルオを見下しています。

※この小説が書かれた頃の著者の年齢を思うと、実際はどうであれ、心情的にはほぼ角田光代本人のことではないかしらと。後々の作品を読むにつけ、そう思えてなりません。

彼女がどんな家で育ち、どんなことを考えながら大きくなったのかはわかりませんが、少女の頃の角田光代は、意外にも “厭世的” であったらしい。溢れるほどの才能を持ちながら、それでも右往左往していたようです。

この本を読んでみてください係数  85/100

幸福な遊戯 (角川文庫)

◆角田 光代
1967年神奈川県横浜市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。

作品 「空中庭園」「かなたの子」「対岸の彼女」「紙の月」「八日目の蝉」「笹の舟で海をわたる」「坂の途中の家」「ドラママチ」「愛がなんだ」「それもまたちいさな光」他多数

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