『検事の本懐』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/09
『検事の本懐』(柚月裕子), 作家別(や行), 書評(か行), 柚月裕子
『検事の本懐』柚月 裕子 角川文庫 2018年9月5日3刷
ガレージや車が燃やされるなど17件続いた放火事件。険悪ムードが漂う捜査本部は、16件目の現場から走り去った人物に似た男を強引に別件逮捕する。取調を担当することになった新人検事の佐方貞人は 「まだ事件は解決していない」 と唯一被害者が出た13件目の放火の手口に不審を抱く (「樹を見る」) 権力と策略が交錯する司法を舞台に、追い込まれた人間たちの本性を描いた慟哭のミステリー、全5話。第15回大藪春彦賞受賞作。(角川文庫)
・第一話 樹を見る
・第二話 罪を押す
・第三話 恩を返す
・第四話 拳を握る
・第五話 本懐を知る
柚月裕子の人気作 「佐方貞人シリーズ」 第2作 『検事の本懐』 を読みました。数あるリーガル・サスペンスの中でも出色の一冊ではないかと思います。
人気の理由は一にも二にも主人公である佐方貞人のキャラクターに負うところが大きいわけですが、彼の真摯で、ときに青臭い正義心に身を灼くまでの一徹さ、その頑なさの背景に何があるのか、何があったのか - 。本作では、それが徐々に明かされていきます。
米崎東警察署署長である南場は、管内で起きている連続放火事件の犯人をいまだ検挙できていないことを警察署長会議の場で責められ、追い詰められていた。ようやく疑わしい新井を別件ながら逮捕できたため、後はガサ入れをして証拠をつかめばよかったのだが、同期で現在は県警本部刑事部長である佐野をはじめとした周りから横槍が入る可能性があった。
そこで、(米崎地方検察庁刑事部副部長の) 筒井に相談したところ、米崎地検に任官して間もない佐方貞人が事件を担当することになる。そして思いのほか新井は17件の放火をあっさり認めたのだが、唯一死者が出た13件目の放火だけは頑なに否認する。そしてそのうち13件目についても認めるだろうという大方の予想に反し、佐方は他に犯人がいると睨む。(wikipedia より)
以上は、第一話 樹を見る の概要です。佐方が検事として任官して3年目の出来事です。
第二話 罪を押す では、筒井の下に配属された日から筒井が佐方の優秀さを目の当たりにするまでの経緯が綴られています。
第三話 恩を返す では、佐方は父・陽世の七回忌以来4年ぶりに呉原市に帰郷します。佐方の高校時代の同級生・天根弥生が登場し、佐方が高校時代に受けた停学2か月の処分の理由が明らかになります。
第四話 拳を握る ※ここが、この本最大の山場です!
東京地検特捜部より応援要請があり、佐方は担当事務官の増田と共に東京地検へ出張することになります。そこで佐方は、財団法人・中小企業経営者福祉事業団、通称 「中経事業団」 を巡る贈収賄容疑に掛かる捜査の一端を担うことになります。
第五話 本懐を知る 佐方の父・陽世が起こした事件の真相が明かされます。それは同時に、息子・貞人が胸に刻んだ覚悟でもありました。
※硬質で歯切れのいい文章。正確かつ論理的な物語の展開。知らずに読むと、おそらく女性作家が書いたものとは思えないでしょう。佐方貞人という人物に魅了され、佐方貞人のことをもっと知りたくなるに違いありません。シリーズ第1作 『最後の証人』、第3作 『検事の死命』 と併せてお楽しみください。
この本を読んでみてください係数 90/100
◆柚月 裕子
1968年岩手県生まれ。
作品 「臨床真理」「最後の証人」「検事の死命」「蝶の菜園 - アントガーデン -」「パレードの誤算」「朽ちないサクラ」「ウツボカズラの甘い息」「孤狼の血」他多数
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